鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

93 雨情の独吟

2019-06-13 15:21:11 | 日記


春に防塵防滴のカメラで雨中の景を狙う話をしたが、句歌ならそのカメラさえ要らずに雨の日を楽しめる。(ブログの為にカメラは常に持って出るが)
今の鎌倉は紫陽花が見頃だが有名な寺以外でも随所に良い花があるので、混雑は避けて隠者向きの散歩道を辿るのだ。
紫陽花を見に行くなら快晴の日より敢えて雨模様の日を選ぶべきだろう。

まずは家を出てすぐの永福寺跡の路傍にて。
---根幹に闇を纏ひて蹲る 額紫陽花に集ふ叢雲---
紫陽花なら玉紫陽花より断然品の良い額紫陽花をおすすめする。
殊に我が庭に咲く物が近所では一番の色合いと自負しているものの、写真にはまだ少し早かった。
古壺に飾ると良く馴染むのだが、切り花にするとすぐに萎れてしまうので撮影はスピード勝負になる。
そのひ弱ささえも返って貴種の雰囲気を感じさせて良い。


---鎌倉の古色の土に濃紫陽花---

頼朝の供養塔前の大倉幕府跡の小道にも、清泉小の脇道も紫陽花が植わっていて丁度見頃だった。
人力車の車夫は季節毎の隠れた見所を良く知っていて、和服のご婦人方を乗せて良くここを通る。

---ぶかぶかの長靴の子が次々と 跳び越す水の虹色オイル---
ついでによくある子等の下校風景で一首。
月並だが作者が楽しい時を味わっている事はわかってもらえるだろう。

---薔薇真紅雨が世界を閉ざす中---


遅咲きの薔薇が一株、雨中に咲き残っていた。
雨がだいぶ強くなって来たのでそろそろ一休みしたい。
ここから八幡宮の横の道を旧大仏次郎邸の路地に抜けて、駅前のカフェまでが今日の吟行だ。
一つでも良い作品やイメージを掴めるなら、雨だろうが嵐だろうがこんな楽しい事は無い。
例え良作が出来なくとも健康の為の運動にはなるので、皆も雨の日にも歩いてみよう。

©️甲士三郎