鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

89 古式の紅茶

2019-05-16 15:42:20 | 日記
私はどちらかと言えば珈琲派だが、紅茶も日に一度は喫するのでそちらの様式化も少し考えようと思う。
17〜18世紀の英国では紅茶より珈琲の方が先に飲まれていて、何故か当時のコーヒーハウスは男性専用だったようだ。
一方紅茶は女性にも人気となったがまだ取っ手の付いたティーカップが無く、中国や日本の取っ手の無い碗と皿でお茶を飲んでいた。
当時の資料を色々見るとブルー&ホワイトの、日本では古染付と呼ぶ中国清朝初期の碗皿が結構多い。
古染付なら私も沢山持っているから、17世紀英国の古式茶会が当時の本物の器を使って我家で出来ると思う。


まずはビクトリア朝の英国貴族達が輸入していた物とほぼ同じ日本製19世紀物で、ブルー&ホワイトのセットを組んでみた。(後ろの屏風だけは18世紀狩野派の賢人図)
今ではイギリスのビクトリア朝アンティークはかなり高価だが、同じ場で使われていた日本の19世紀の陶磁器は情けないほど安価だ。
現代日本人は明治大正期の物は軽んじがちだが実は我が国の職人技が史上最高に到達した時代で、アメリカでは日本の5〜10倍の値が付くと聞いている。
特に輸出の花形だった美術工芸品は欧米の人々を喜ばせ、いわゆるジャポニズムの流行を生んだ。
また彼等職人達がコスト無視で寝食を忘れて仕事に打ち込んだため、現代ではとても不可能な低価格で生産できたようだ。


こちらは正に英国最古の様式通り、17世紀中国製のブルー&ホワイト(古染付)の取っ手の無い皿碗。
都会で最新流行の緑茶ミルクティー(向かって左)や抹茶ラテも、偏見無しに飲めればなかなか良いものだ。
私も最近ではマグカップを使い出したが、昔から完円の碗に取っ手が付くとバランスが崩れて見えて、カフェオレボウルのように珈琲も抹茶碗で飲む方だったので丁度良い。
こちらの三百年以上経った器は申し訳ないが酒乱粗忽者には出せない。
古器の美と歴史的価値をわかってくれる人なら大歓迎なのだが、その代わり普通のお客にも19世紀物でも縁起の良い絵柄の器を選んで出している。

私の呪われた血糖値ではもう酒豪達の深夜に及ぶ宴にも付き合えなくなって来たので、健康の為にも文芸の集いは昼間のお茶会で品良く済ませたいのだ。
上の写真のような席なら、雰囲気だけは大正時代の鎌倉公爵家の芸術サロンにも対抗出来る荘重さがあると思う。
皆もサロンに集った当時の錚々たる芸術家の面々を思い起こして、そこに自分を重ねて見ると良い。
後進の若者達に「私もあんな晩生を送りたい」と思われるように、我々も呑んだくれの生活を正して品位と重厚さを身に付けたいものだ。

©︎甲士三郎