グルカ兵のドイツ最後の仕事は総統官邸防衛であった。
「私が自害すれば官邸にガソリンが撒かれ、火が点けられる。
それを合図に君達は契約解除だ。
あとは投降するもよし、闇夜に紛れて大陸を走って故郷に戻るもよし。
・・・。
これまで長いようで短い付合いだった。
ご苦労さん」と総統、アドルフ・ヒトラー。
総統官邸に迫ったのはソ連軍。
野戦砲の掩護下、戦車隊と共に歩兵隊が進撃して来た。
これを阻止すべく戦ったのは親衛隊とグルカ兵であった。
彼等は貧弱な火器ながらも臆する事なく戦った。
要所に狙撃兵を配備し、塹壕の前に土囊を積み上げ、執拗に抵抗を続けた。
功を焦って前進するソ連兵。
阻止せんとする親衛隊とグルカ兵。
大勢が傷付き倒れた。
そしてついに守備陣の一角が崩された。
どっと侵入するソ連兵。
それが合図だったかのように総統官邸から黒い煙が立ち上った。
ガソリンが撒かれたようで、火の回りが早い。
それは総統夫妻の自害の報せでもあった。
クララの祖父はヒトラーの言に従い、故郷に戻る事を選んだ。
近くにいた仲間達と、遮蔽物から遮蔽物へと移動しながら戦場から離脱した。
敵の目を欺くなどグルカ兵には容易い事だった。
ところが。
ソ連軍から逃れて気が緩んでいたらしい。
田舎の麦畑を移動していたところ、巡回中の米軍の発見され、
待ち伏せ攻撃を受けてしまった。
仲間達が為す術もなく次々と銃撃に倒れた。
辛うじて生き残ったのは数人。
彼等は散開して応戦した。
阿吽の呼吸で交代しながら殿を努め、後退に次ぐ後退を重ねた。
無理して一箇所に踏み留まれば敵の増援が来た場合、退路を失うからだ。
銃撃を受けて倒れた一人にクララの祖父がいた。
銃創は肩口。幸いにも一発だけだった。
彼は負傷しながらも草陰に身を隠した。
幸いだったのは生き残った味方が応戦しながら後退するので、
米軍もその追撃に血の道を上げざるを得なかったこと。
倒れた祖父達を検めに来る米兵は一人もいなかった。
祖父は米軍が遠ざかるのを見計らって草陰から身を起こした。
近くの小銃を掴む。
が、左肩を撃たれていたので自由に扱えない。
となると、頼りは腰の後ろのククリナイフだけ。
小銃を手放し、周りの仲間達はと見ると、全員が既に息絶えていた。
この場で生き残ったのは彼一人。
祖父は手早く止血して、銃声とは反対方向に駆けた。
仲間達の負担になりたくないから一人で行動することを選んだ。
止血したとはいえ簡易な手当て。
駆けるにしたがい血が噴き出してきた。
敗残兵である上、田舎の田園地帯。
医者の看板どころか、人家すらも疎ら。
医療は欠片も望めない。
ついに祖父は駆けながら前のめりに倒れた。
大量出血と、今日までの溜まりに溜まった疲れが原因だった。
そのまま気を失った。
行き合わせたのがクララの祖母。
農地からの帰り、道の脇に血塗れで倒れている親衛隊の兵士を見つけた。
祖母にとっては見慣れた制服であった。
戦死した兄が親衛隊に所属していたからだ。
クララの話が終わるより先に森から出た。
人家はなく、田舎道が走っているだけ。
先の方の空き地に古い車が停まっていた。
その車をクララが指し示した。
「あれがそうよ」
「埃を被ってるみたいだが、手入れはしてるのか」
「見た目、目立たぬようにしてるのよ。
エンジンをかければ、手入れしてあるのが分かるわ」
ルドルフは足を止めた。
「あれで俺を東京に運ぶ気か」
アンネの口から出た、「東京」という地名が気にかかっていた。
クララは太々しく笑う。
「東京というのはね、この国の首都で、世界でも一、二の町よ。
ドイツ人も多いの。
貴方がアンネ様の話を受ける受けないは別にして、
東京という大都会は貴方が身を隠すには丁度いい場所だと思うわ」
★
雨が、雷が、・・・。
嫌な円高です。
欧米の財政赤字のお蔭で日本の円が高止まりしています。
我が国の財界首脳とやらが、いつもの得意の台詞を吐きます。
「円高では国内で製造が出来ない、海外に工場移転だ」と騒ぎます。
原発の稼働停止でも財界首脳が騒ぎます。
「電気の供給が安定しないなら、海外に工場移転だ」と。
こんな煩い連中は日本での商売を止めて、
会社ごと、さっさと海外移住すればいいのに。
農業では農地を大事にします。
種蒔き前に、農地を太らせる為に耕し、肥料等を撒きます。
それから種蒔きです。
大事に手入れ、管理し、そして収穫。市場に出荷。
それで終わりではありません。
収穫を終えた農地は痩せ細っています。
そこで肥料を撒きます。
御礼の肥料です。
常に農地の状況に目を配っているのです。
企業にとっての農地は消費者です。
そして消費者=労働者です。
その労働者を企業は安く、安く雇用しています。
あまりの低賃金に、
例えば自動車製造に携わる派遣労働者、彼等は車が購入できません。
結婚も出来ません。
住宅購入などは論外です。
お蔭様で社会は衰退しました。
デフレに失業者増加、自殺者数の高止まり、少子化。
地域社会は崩壊し、家族すらバラバラです。
昔は商人道がありました。
代表例は近江商人です。
彼等の家訓には考えされられます。
「売り手良し、買い手良し、世間良し」。
これは、「三方良し」として知られています。
・・・。
共存共栄。
他者を蹴落とさない社会。
だからといって、「怠け者を認める」という社会ではありません。
至極普通の社会。
働いたら、働いただけ受け取る。
けっして余分には取らない。
・・・。
★
ランキングはお休みです。
「私が自害すれば官邸にガソリンが撒かれ、火が点けられる。
それを合図に君達は契約解除だ。
あとは投降するもよし、闇夜に紛れて大陸を走って故郷に戻るもよし。
・・・。
これまで長いようで短い付合いだった。
ご苦労さん」と総統、アドルフ・ヒトラー。
総統官邸に迫ったのはソ連軍。
野戦砲の掩護下、戦車隊と共に歩兵隊が進撃して来た。
これを阻止すべく戦ったのは親衛隊とグルカ兵であった。
彼等は貧弱な火器ながらも臆する事なく戦った。
要所に狙撃兵を配備し、塹壕の前に土囊を積み上げ、執拗に抵抗を続けた。
功を焦って前進するソ連兵。
阻止せんとする親衛隊とグルカ兵。
大勢が傷付き倒れた。
そしてついに守備陣の一角が崩された。
どっと侵入するソ連兵。
それが合図だったかのように総統官邸から黒い煙が立ち上った。
ガソリンが撒かれたようで、火の回りが早い。
それは総統夫妻の自害の報せでもあった。
クララの祖父はヒトラーの言に従い、故郷に戻る事を選んだ。
近くにいた仲間達と、遮蔽物から遮蔽物へと移動しながら戦場から離脱した。
敵の目を欺くなどグルカ兵には容易い事だった。
ところが。
ソ連軍から逃れて気が緩んでいたらしい。
田舎の麦畑を移動していたところ、巡回中の米軍の発見され、
待ち伏せ攻撃を受けてしまった。
仲間達が為す術もなく次々と銃撃に倒れた。
辛うじて生き残ったのは数人。
彼等は散開して応戦した。
阿吽の呼吸で交代しながら殿を努め、後退に次ぐ後退を重ねた。
無理して一箇所に踏み留まれば敵の増援が来た場合、退路を失うからだ。
銃撃を受けて倒れた一人にクララの祖父がいた。
銃創は肩口。幸いにも一発だけだった。
彼は負傷しながらも草陰に身を隠した。
幸いだったのは生き残った味方が応戦しながら後退するので、
米軍もその追撃に血の道を上げざるを得なかったこと。
倒れた祖父達を検めに来る米兵は一人もいなかった。
祖父は米軍が遠ざかるのを見計らって草陰から身を起こした。
近くの小銃を掴む。
が、左肩を撃たれていたので自由に扱えない。
となると、頼りは腰の後ろのククリナイフだけ。
小銃を手放し、周りの仲間達はと見ると、全員が既に息絶えていた。
この場で生き残ったのは彼一人。
祖父は手早く止血して、銃声とは反対方向に駆けた。
仲間達の負担になりたくないから一人で行動することを選んだ。
止血したとはいえ簡易な手当て。
駆けるにしたがい血が噴き出してきた。
敗残兵である上、田舎の田園地帯。
医者の看板どころか、人家すらも疎ら。
医療は欠片も望めない。
ついに祖父は駆けながら前のめりに倒れた。
大量出血と、今日までの溜まりに溜まった疲れが原因だった。
そのまま気を失った。
行き合わせたのがクララの祖母。
農地からの帰り、道の脇に血塗れで倒れている親衛隊の兵士を見つけた。
祖母にとっては見慣れた制服であった。
戦死した兄が親衛隊に所属していたからだ。
クララの話が終わるより先に森から出た。
人家はなく、田舎道が走っているだけ。
先の方の空き地に古い車が停まっていた。
その車をクララが指し示した。
「あれがそうよ」
「埃を被ってるみたいだが、手入れはしてるのか」
「見た目、目立たぬようにしてるのよ。
エンジンをかければ、手入れしてあるのが分かるわ」
ルドルフは足を止めた。
「あれで俺を東京に運ぶ気か」
アンネの口から出た、「東京」という地名が気にかかっていた。
クララは太々しく笑う。
「東京というのはね、この国の首都で、世界でも一、二の町よ。
ドイツ人も多いの。
貴方がアンネ様の話を受ける受けないは別にして、
東京という大都会は貴方が身を隠すには丁度いい場所だと思うわ」
★
雨が、雷が、・・・。
嫌な円高です。
欧米の財政赤字のお蔭で日本の円が高止まりしています。
我が国の財界首脳とやらが、いつもの得意の台詞を吐きます。
「円高では国内で製造が出来ない、海外に工場移転だ」と騒ぎます。
原発の稼働停止でも財界首脳が騒ぎます。
「電気の供給が安定しないなら、海外に工場移転だ」と。
こんな煩い連中は日本での商売を止めて、
会社ごと、さっさと海外移住すればいいのに。
農業では農地を大事にします。
種蒔き前に、農地を太らせる為に耕し、肥料等を撒きます。
それから種蒔きです。
大事に手入れ、管理し、そして収穫。市場に出荷。
それで終わりではありません。
収穫を終えた農地は痩せ細っています。
そこで肥料を撒きます。
御礼の肥料です。
常に農地の状況に目を配っているのです。
企業にとっての農地は消費者です。
そして消費者=労働者です。
その労働者を企業は安く、安く雇用しています。
あまりの低賃金に、
例えば自動車製造に携わる派遣労働者、彼等は車が購入できません。
結婚も出来ません。
住宅購入などは論外です。
お蔭様で社会は衰退しました。
デフレに失業者増加、自殺者数の高止まり、少子化。
地域社会は崩壊し、家族すらバラバラです。
昔は商人道がありました。
代表例は近江商人です。
彼等の家訓には考えされられます。
「売り手良し、買い手良し、世間良し」。
これは、「三方良し」として知られています。
・・・。
共存共栄。
他者を蹴落とさない社会。
だからといって、「怠け者を認める」という社会ではありません。
至極普通の社会。
働いたら、働いただけ受け取る。
けっして余分には取らない。
・・・。
★
ランキングはお休みです。