金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

白銀の翼(バンパイア)70

2011-08-26 22:10:47 | Weblog
 グルカ兵のドイツ最後の仕事は総統官邸防衛であった。
「私が自害すれば官邸にガソリンが撒かれ、火が点けられる。
それを合図に君達は契約解除だ。
あとは投降するもよし、闇夜に紛れて大陸を走って故郷に戻るもよし。
・・・。
これまで長いようで短い付合いだった。
ご苦労さん」と総統、アドルフ・ヒトラー。
 総統官邸に迫ったのはソ連軍。
野戦砲の掩護下、戦車隊と共に歩兵隊が進撃して来た。
これを阻止すべく戦ったのは親衛隊とグルカ兵であった。
彼等は貧弱な火器ながらも臆する事なく戦った。
要所に狙撃兵を配備し、塹壕の前に土囊を積み上げ、執拗に抵抗を続けた。
功を焦って前進するソ連兵。
阻止せんとする親衛隊とグルカ兵。
大勢が傷付き倒れた。
 そしてついに守備陣の一角が崩された。
どっと侵入するソ連兵。
それが合図だったかのように総統官邸から黒い煙が立ち上った。
ガソリンが撒かれたようで、火の回りが早い。
それは総統夫妻の自害の報せでもあった。
 クララの祖父はヒトラーの言に従い、故郷に戻る事を選んだ。
近くにいた仲間達と、遮蔽物から遮蔽物へと移動しながら戦場から離脱した。
敵の目を欺くなどグルカ兵には容易い事だった。
 ところが。
ソ連軍から逃れて気が緩んでいたらしい。
田舎の麦畑を移動していたところ、巡回中の米軍の発見され、
待ち伏せ攻撃を受けてしまった。
仲間達が為す術もなく次々と銃撃に倒れた。
辛うじて生き残ったのは数人。
彼等は散開して応戦した。
阿吽の呼吸で交代しながら殿を努め、後退に次ぐ後退を重ねた。
無理して一箇所に踏み留まれば敵の増援が来た場合、退路を失うからだ。
 銃撃を受けて倒れた一人にクララの祖父がいた。
銃創は肩口。幸いにも一発だけだった。
彼は負傷しながらも草陰に身を隠した。
幸いだったのは生き残った味方が応戦しながら後退するので、
米軍もその追撃に血の道を上げざるを得なかったこと。
倒れた祖父達を検めに来る米兵は一人もいなかった。
 祖父は米軍が遠ざかるのを見計らって草陰から身を起こした。
近くの小銃を掴む。
が、左肩を撃たれていたので自由に扱えない。
となると、頼りは腰の後ろのククリナイフだけ。
 小銃を手放し、周りの仲間達はと見ると、全員が既に息絶えていた。
この場で生き残ったのは彼一人。
祖父は手早く止血して、銃声とは反対方向に駆けた。
仲間達の負担になりたくないから一人で行動することを選んだ。
 止血したとはいえ簡易な手当て。
駆けるにしたがい血が噴き出してきた。
敗残兵である上、田舎の田園地帯。
医者の看板どころか、人家すらも疎ら。
医療は欠片も望めない。
 ついに祖父は駆けながら前のめりに倒れた。
大量出血と、今日までの溜まりに溜まった疲れが原因だった。
そのまま気を失った。
 行き合わせたのがクララの祖母。
農地からの帰り、道の脇に血塗れで倒れている親衛隊の兵士を見つけた。
祖母にとっては見慣れた制服であった。
戦死した兄が親衛隊に所属していたからだ。
 クララの話が終わるより先に森から出た。
人家はなく、田舎道が走っているだけ。
先の方の空き地に古い車が停まっていた。
その車をクララが指し示した。
「あれがそうよ」
「埃を被ってるみたいだが、手入れはしてるのか」
「見た目、目立たぬようにしてるのよ。
エンジンをかければ、手入れしてあるのが分かるわ」
 ルドルフは足を止めた。
「あれで俺を東京に運ぶ気か」
 アンネの口から出た、「東京」という地名が気にかかっていた。
 クララは太々しく笑う。
「東京というのはね、この国の首都で、世界でも一、二の町よ。
ドイツ人も多いの。
貴方がアンネ様の話を受ける受けないは別にして、
東京という大都会は貴方が身を隠すには丁度いい場所だと思うわ」




雨が、雷が、・・・。

嫌な円高です。
欧米の財政赤字のお蔭で日本の円が高止まりしています。
我が国の財界首脳とやらが、いつもの得意の台詞を吐きます。
「円高では国内で製造が出来ない、海外に工場移転だ」と騒ぎます。
原発の稼働停止でも財界首脳が騒ぎます。
「電気の供給が安定しないなら、海外に工場移転だ」と。
こんな煩い連中は日本での商売を止めて、
会社ごと、さっさと海外移住すればいいのに。
 農業では農地を大事にします。
種蒔き前に、農地を太らせる為に耕し、肥料等を撒きます。
それから種蒔きです。
大事に手入れ、管理し、そして収穫。市場に出荷。
それで終わりではありません。
収穫を終えた農地は痩せ細っています。
そこで肥料を撒きます。
御礼の肥料です。
常に農地の状況に目を配っているのです。
 企業にとっての農地は消費者です。
そして消費者=労働者です。
その労働者を企業は安く、安く雇用しています。
あまりの低賃金に、
例えば自動車製造に携わる派遣労働者、彼等は車が購入できません。
結婚も出来ません。
住宅購入などは論外です。
お蔭様で社会は衰退しました。
デフレに失業者増加、自殺者数の高止まり、少子化。
地域社会は崩壊し、家族すらバラバラです。
 昔は商人道がありました。
代表例は近江商人です。
彼等の家訓には考えされられます。
「売り手良し、買い手良し、世間良し」。
これは、「三方良し」として知られています。
・・・。
共存共栄。
他者を蹴落とさない社会。
だからといって、「怠け者を認める」という社会ではありません。
至極普通の社会。
働いたら、働いただけ受け取る。
けっして余分には取らない。
・・・。



ランキングはお休みです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 白銀の翼(バンパイア)69 | トップ | 白銀の翼(四面楚歌)71 »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事