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このところ結を自転車に乗せず歩かせている。いや彼が家から飛出して道を駆ける。そのとき自転車のことは頭にないほど歩くこと走ることに興じている。
「はやい、はやい」と言うのは自分にか、爺にか。両方に号令をかけているように聞こえる。体力を消耗させたいように感じる。
子供の動きはわけがわからない。「はやい」と駆けていってぴたっと止り「とまっちゃった」と言って動かなくなる。彼の心理にユーチューブで見た「大きな古時計」があるかもしれない。おじいさんが死んで止ってしまった時計の振り子が。
結は50㎝ほどの高いところによじ登るのが好き。ブロックを積み上げたフェンスがあると必ず上がって伝い歩きする。なにがおもしろいのか。
最近ペットショップを見つけた。窓近くに猫2匹がいてそれを嬉々として見る。これがおもしろいのはわかる。
道の端の暗渠の上の敷いてある鉄板も踏みたがる。ときに景気いい音を立ててくれる。駐車場の看板も叩いてみる。これも音が出てご満悦。
道端にもう猫じゃらしがいっぱい出ている。それを抜いてやると結は側溝の穴の中に落とす。そんなことをして時間を費やすわれわれの横を人が通り過ぎる。
人はみな何かに急くや猫じやらし
結にとって道は通り過ぎるだけのものではない。結とつきあう小生にとっても。道を急いで通るのは生産である。生産にかかわらないわれわれには道草を食う場所であり時間である。
見慣れた場所でも歩き方によって違った様相を表す。
きのうは家を出て駅へ向かい駅から爺婆の家へ行くというルーティーンを結が逸脱。北へ北へと行ってしまった。不安になって足が動かなくなったところでおんぶして軌道修正した。
別の方向から駅へ近づいたが興味ある場所は覚えている。結が小生の手を引くほうへ行くとそこはY銀行。ここは閉店していてもドアが開いてエレベーターに乗れることを知っているのだ。
夕方、すこし風が出た。すべり台の上で「かぜ」と言う。
9月になればいくぶん暑さが収まるだろう。永遠に道草を食っておられない二人である。路傍の時間を楽しみたい。
蒲の穂絮飛ぶ道草を食ふがいい
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