ボートというと下の競艇とまぎらわしい。ボートレースという言葉には、エンジン舟での競艇の意味と手漕ぎのボート競走の両方の意味がある。やっと「漕艇」という言葉にたどり着いたがこなれの悪い言葉である。
日曜日の朝、NHKテレビをみていたら「小さな旅」で戸田漕艇場が出て画面に見入った。特に東大の漕艇部員8名がボートを担ぐ場面に。そのとき御嶽渓谷でゴムボートを担いだ男たちを詠もうとして「ボートを担ぐ裸かな」の後何の進展もしていないことを思った。
見たまま、「一艇を担ぐ八人」のあと季語をつければ俳句になる、「一艇を担ぐ八人南風」でとりあえず句になる。ボートレースの中ではエイトが一番迫力がある。それを書きたくなってきて、「漕ぎ手八人統ぶる声」が浮かんだ。統ぶるは、統括する、ゲームメイクする、というような意味である。
声を発する人はコックスである。コックスは舵手と訳されるので舵を持っているか動画をいくつか見たが両手で舵を操っているふうに見えない。エイトの舟に舵が付いているとは思えない。舵手という言葉は妥当でないのではなくリーダーというほうが適切である、あるいは邦訳しないほうがいい。コックスは声だけで采配できるのか。もっとも離れた漕ぎ手に声が届くのか。接戦になれば敵のコックスの声も聞こえてこんがらがりそう。ある動画でコックスの「いち、に、いち、に」は聞き取れたがほかに何と言っているのかはわからなかった。
「8人の漕ぎ手たちの一体感のあるオールさばきも必見であり、コックスの合図に従い、一定のリズムを刻みながら一糸乱れることなくボートを動かします。コックスの役割は合図だけでなく、ペース配分、ラストスパートのタイミングや他のボートとの駆け引きをしながら8人の漕手に指示を出していきます。」と、トヨタ紡織ボート部のHPが解説するが、これを読んでもコックスと8人の漕ぎ手との関係がどうなっているのかよくわからない。
戸田漕艇場へ行く気になった。行って見学しても動画より遠くから見るのでわからないと思う。しかし行けば、動画で見えなかったものも見えるだろうし、岸にいるボートレース関係者に取材ができる。
エイトの戦う2000mで漕ぎ手は1分に37~39ストロークするとして210~240回オールを動かす。5分30秒~50秒ほどを全力で漕ぐ。
「陸上400メートルが究極の無酸素運動と呼ばれ、約50秒の間走り続けますが、ボート選手はこれの約5倍の時間を漕ぎ続けます。有酸素運動と無酸素運動の融合した究極的な過酷さを誇る競技と言っても過言ではないでしょう。」と、トヨタ紡織ボート部のHPが言う。
戸田漕艇場へは2、3年前の桜のときに吟行したことがある。雨が降って震えた。あのときはレガッタが春の季語であると知った。人が冷たい水にいて水にいるはずの鴨が陸上を歩いておかしかったので、
レガッタの掛け声岸を鴨歩く わたる
というとぼけた句ができた。一緒にいた句友がレガッタと鴨と季語がぶつかると懸念したが無視した。
再び、戸田漕艇場へ行く気になってうきうきしている。
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