天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

月山の雪掘って採るばんけかな

2024-02-23 06:07:56 | 自然



山形県の月山のふもとに住む人から蕗の薹をいただいた。すごい数、75個もあった。前回いただいて喜んだらまた呉れた。あさって誕生日を迎える小生にすばらしいものが到来した。送り主の兄にあたる人が文筆に秀でていて、あるとき「庄内日報」に「少年歳時記」なる題名で寄稿していたという。その一節が同封されていた。
以下に紹介する。

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ばんけ
村上文昭

家の周囲はまだ雪がふかい。日差しがつよまり、日照時間が長くなると、目に見えて雪どけのはやさがわかる。たとえば、早くも消えかえたところを見ると、雪どけ水が沁みでている。
そんなところに顔をだす青い蕾がばんけである、指で摘もうにも土中深く根をはってかたい。コテをつかわないとえぐりだせない。だから摘むというよりは掘りだす感じだ。数カ月も雪の下にいて、着々と春を迎える支度をしていたわけで、そのたくましい生命力におどろいてしまう。
まるくかたい蕾を二つ三つと掘って、まず父が好む湯どうふの薬味とした。小さく刻んだばんけにはアクがあってほろ苦さがある。湯どうふを賞味しながら、父は春のいぶきを感じたものだろうが、少年にはさほどの味ともおもえなかった。薬味のなかに、刻んだネギ、くるみの実なども入れていたっけか。
湯どうふのばんけよりは、ばんけ味噌のほうが食べやすかった。かつお節や砂糖をいれていたかもしれない。
葉が開きかけて手でつまんで摘めるか、白い花が咲きかけたばんけなど、少年はばんけとおもっていない。ましてばんけを蕗の薹とおきかえるのも、少年のイメージとはことなっている。あくまでも雪の中から顔をのぞかせるかたい蕾こそが、ばんけなのだから。
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蕗の薹のことを<蕗のじい>とか<蕗のしゅうとめ>といったりするという。こちらのほうが、麦のように同じく踏みつけると根が浮いたり急成長するのをおさえる感じがでてくる。雪国では踏みつける役目を、冷たく重い雪がはたしているのである。
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この記事を読んで、「ばんけ」という呼称がえらく気に入った。東京で採る蕗の薹とは雰囲気がまるで違う。けれど記事を読んでもばんけを掘り出す絵が思い浮かばない。雪を割って蕗の薹を採ったことがないからである。
野生果実ハンターと自称して気取ってきたがまだまだ世界は知らぬことだらけである。月山のふもとへばんけを探しに行きたい。

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