6月17日付讀賣新聞の社説で「有人国離島地域保全特別措置法」の成立を知った。超党派の議員立法で与野党のほぼ全員が賛成したというのでいくぶん議員たちを褒めたい気分になった。
日本の領海と排他的経済水域の合計は世界第6位の広い面積だという。その基点となる無人化を防ぐことが国益の確保に直結する。
したがってこういう辺境に人を住まわせて無人化を防ごう、そのためにいろいろな支援をしようというのがこの法律の趣旨らしい。
けれど陸地の奥の集落も人が減って空き家が増えている少子化のなかで極めつきの僻地、辺境に行って住む人などそうそういるものではない。「仏作って魂入れず」になる可能性のある立法である。
よほど奇特な変人しかこんなところには住まないだろう。
変人といえば俳人……変人俳人変人俳人、奇人俳人廃人ということで俳句をする者のなかで有志を募って「俳人防人隊」を結成せして離島へ住みつく活動をしたらどうだろう。
俳人協会、伝統俳句協会、現代俳句協会といろんな俳人の集まりがある。
ほかにも俳句団体はあるのかもしれないがどれも排他的でうちうちで賞など出すなどプロレスのタイトルみたいなことをして喜んでいる。
俳人はもっと風通しよく社会一般と交流したほうがいいのではないか。
日蓮宗ほど政治にかかわるのはどうかという懸念もあるが政治と無縁でもいられないのではないか。
なんらかのことで社会、政治とかかわっていくのも時代の趨勢ではなかろうか。
こういった俳句団体の首脳部は「俳人防人隊」を結成して国とつながってもいいような気がする。
俳人は廃人に近い。
テレビに俳人というレッテルで登場すると世間の人はやや尊敬の念が湧くかもしれぬが家に帰ればほぼ粗大ゴミ。
年を取っていて偏屈、家人のいうことは聞かない頑固者。
年寄り俳人はすぐさま出家していいのだが寺がそう簡単に受け入れてくれるものでもない。
すると「姨捨」の山へ行くしかないが餓死するなどこわくて御免こうむる。
「俳人防人隊<はいじんさきもりたい>」。
声にして読んでみてかっこいいではないか。なんという蠱惑的な響き。
国とかけあって支度金をもらい離島に家を建ててもらい住む環境が整えば行こうという人が現れても不思議ではなかろう。こういう税金の使い方なら国民も納得してくれるだろう。
俳句をする仲間が仮に100人もいれば離島住まいも悪くない。
防人といえば俳句よりむしろ短歌が大先輩。
短歌界こそ「防人隊」を結成してもよかろう。
たとえば与那国島に俳人100人、歌人100人が住めば文化が興るのではないか。自衛隊やアメリカ軍が来たら彼らに俳句を教えて句会をするもよし。
世捨人が集まって辺境に文化を興すなど痛快ではないか。
そんなのは世捨人ではない。世を捨てないと文学者はだめであるなどとこの際、固いことはいわない。
世を捨てて世の役に立つという道を開拓してもいいのではないか。世を捨てて国の役に立つというとかの太平洋戦争に至るスローガンに似てくるが、俳人の辺境移住計画は実現性が高いグッドアイディアではなかろうか。
ぼくは会費を払いたくなくて俳人協会をやめてしまった。
俳人協会にいる先輩諸氏にこのプランを授けたいのである。