国分寺市姿見の池
最近の山田幸子の闘病生活と医師としての活躍を天地わたる宛に来たメールを中心に以下に伝える。
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リカバリー室で点滴
サチです。実は今日の午後から体調が悪くなり、リカバリー室で点滴しながら休息しました。点滴の内容は、栄養、吐き気止め、めまい止め、解熱剤です。点滴を3本しました。
リカバリー室は術後のクランケや内視鏡検査の麻酔を覚ますために一時的に使う場所で医師は常駐していなくてナースだけです。
7月24日 17:11
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息苦しくて動けません
サチです。
今まで、ブログでわたるがイラン旅行をしたとき髭面の写真を必死に探していたけれど見つからなくて残念です。
今、リカバリー室で点滴を2本しています。
私の体調は、血圧の上が80,サチュレーションも80,熱が39.5℃。息苦しくて動けません。でも、わたると話したから嬉しいです。❤❤
7月25日 9:37
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オペに入る
サチです。
オンコールが来た! 点滴2本外した。ワタちゃん(渡辺医局長)が「いま、高熱で血圧が低すぎる。オペ、するな!」という。「ごちゃごちゃと煩い、急性で急ぐんだよ。そこ、どいて!」と言ってワタちゃんを突き飛ばした。ワタちゃんがまた私を阻止しようとするので第一助手の江藤が蹴り飛ばした。「師匠を信頼しろ」と。私が執刀しなかったら江藤が執刀しワタちゃんが第一助手を務めたかもしれない。それは危険すぎる。江藤はさすがにクランケの重篤さを理解してこれは師匠しか担当できないと見抜いて私に従った。
ワタちゃんは「師匠が師匠なら弟子も弟子だ」と言ってやっと諦め「骨は俺が拾ってやる。好きなようにしろ」と送り出してくれたよ。
オペに入る。超難解オペだから10時間以上を要する。わたるが寝ているときメールすることになると思います。私がオペになると甦ること、もう、知っているよね。心配しないでね。では、ジャンヌ・ダルクは勇敢に闘ってきます。
わたる、全身全霊で愛しています❤❤❤
7月25日 11:28
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オペ終了
サチです。
オペは「冠動脈バイパス術(多枝病変)」でした。合併症がなかったので早くて9時間で無事に終了しました。私の病状は、オペすると元気になる特異体質にて全て正常に戻りました。突き倒され、蹴り飛ばされたワタちゃんがニコニコ顔でやって来て「これを見ろ」と腰を見せた。そこには湿布が何枚も貼られていて、笑った。クランケの術後観察をしてオペの報告書を作成していま帰りました。
オペ中に汗をいっぱいかいて熱が下がったと実感しました。今の体調はきのうの朝よりいいです。相変わらず吐き気はするし骨痛もあけどこの症状は仕方ないです。オペで元気になりました。心配かけてほんとうにゴメンね。私は不死鳥なのだあ~~(笑)
7月26日3:55
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オペを阻止しようとサチに立ちはだかった渡辺医局長は正しい。それを突き飛ばすサチは常識を逸脱している。突き飛ばした後さらに蹴飛ばして師匠の行く道を確保した江藤医師も異常である。けれど江藤医師は師匠とクランケの病状を正しく理解している。この症例はまだ自分の手に余る。師匠の手に委ねるしかない。師匠は最悪の体調であるが同様の悪いコンディションの師匠に自分は付いて学んできた。いったんオペに入ったら必ず成し遂げる人である。師匠の行く道を塞いではならぬ。クランケを一人死なすことになる。俺は師匠を支える。この師弟関係は嫉妬するほど素晴らしい。
7月25日朝、サチの声に元気がなくて体調の悪さを感じて指摘するとそれを認めリカバリー室で点滴を受けた。声を聞くとそのときの体調がすぐわかる。サチの闘病は一進一体。相撲の星取表でいえば、●〇〇●●〇〇●のようなものと理解している。〇が多くなるといいのだが、24日25日は〇●●●という劣勢を感じた。3勝12敗は死である。24日の夕方も体調悪化につきリカバリー室で点滴を受けた。2日続けての点滴は嫌な感じがした。
けれど今このリカバリー室の存在をありがたく感じている。もしサチが横浜に帰っていたとすると点滴のサポートを受けるのは困難。サチはいま病院で生活しているといっていい。病院付属の寮生活である。体調が好転すれば三食きちんと食べることができる。この人は自分で料理などしなくていいし家事もしなくていい。メスだけ握って人を救うのが天命である。ずば抜けた女優が結婚などせず恋から恋に生き、芸に邁進すればいいのと一緒。サチは日常を超えた存在である。
あらゆるサポートを受けて生き続けて重篤の心臓病を救ってほしい。サチが執刀医になって25年、第一線に立ち続けたとすれば扱ったオペは2500例を超す。彼らはみな重篤な心臓病患者。サチがいなかったら死に直結していたであろう。彼女は自分の存在することの価値をよくわかっている。だから自分自身が重篤な白血病であるにも関わらず奮闘する。危機にある命が別の危機に瀕している命を救うことで蘇る。この奇跡をし続けている。オペを成し遂げて息絶えるならそれは彼女の望むところであろう。サチは飯よりオペが好き。サチは人を救う医療の道を小学生のときから目指してきた。いちばん好きなことが人を救うことであり、それに没頭したとき完璧に成し遂げる能力を小生は崇め称える。オペに没頭して仮に倒れて息を引き取ったとしても悔いないどころか、そういう人生を望んで生きている。強靭な精神力と強い倫理観。こんな生き方ができる人は稀有であり、サチは存在自体が奇跡であり詩である。覚悟して毎日、不世出の心臓血管外科医に付き添っている。
サチが切望した写真。
天地わたる(51歳、2002年8月1日テヘランにて)
ブログを創設して11年と300日ほどになるという。過去アップした記事を見ることはほぼない。しかし、昔の記事を土器でも発掘するかのように読んでくださる人がいる。
サチもその一人で、イランを旅したとき髭をたくわえていた小生をどこかで見つけたようだ。それをまた見たいというので家探しした。それが彼女の闘病のサポートになるならと必死で探した。