
きのうはいつもと違う気分で姿見の池を見ていた。姿見の池の背後の雑木林を散策してすこし秋の気分がした。
それは萩にちらほら花が出たことであった。
細道や腕にさらりと萩の花
萩の小花がちらほら、ああ秋か。萩は最盛期になってもそう派手な感じがしない。それがこの花のいいところ。
ちらちらとさざなみ見ゆる木下闇
雑木林の中から池が見える。暗いことろから明るいところ、水面を見るのは爽快。森を出ると暑いが3000歩歩いて池の端へ。
池のそばを川が流れているがそれが池を満たすのでなく地下水が湧いて池になっていると思う。川も200m先の暗渠から突如出現する。
恋ヶ窪は水が湧く窪地である。

鯉涼し沈まぬほどの鰭使ひ
真鯉が3匹ほど、緋鯉が同じくらい。暑いのか鯉の動きが鈍い。鯉の大人はヒトの大人同様せかせかしないらしい。しようがないから鰭を動かすかといった感じ。鴨が2羽いて子鴨を連れている。生まれたらしい。もう完全に定着した鴨である。
緋鯉撥ね入道雲を乱しけり
緋鯉は花がある。ときに激しく動くと雲とごっちゃになる。水面はカオスである。

ゆつくりと白鯉浮かぶ秋の風
額に紅があるほかほとんど白い鯉が1匹。白い鯉はたくさん色がある鯉より存在感がある。白、黒は無彩色というが色ではないと聞いたことがある。
あをみどろどろどろ動く暑さかな
鯉が動くとあおみどろが動く。そのとき暑さを感じるが鎮まったあおみどろは涼しげ。涼しいあおみどろも書いてみたい。
病葉が水面の雲に落ちにけり
ときおり散る木の葉が静かな水面のアクセント。
泡燦燦緋鯉入りたる水草(みくさ)より
緋鯉の立てる泡は豪華で美しい。
一顧無し夏鴨と鯉すれ違ふ
鴨は水の上、鯉は水中にて目を交わすことはない。両者はその存在を感じているだろうが邪魔とは思っていない様子。

腿ほどに太りし鯉や秋暑し
太った鯉はいつも食いたいと思う。鯉は何年生きるのかふと考える。
夏霞沼吐く気泡そこかしこ
水面に水輪が絶えずできる。空から何か落ちたのでもなくあめんぼでもない。池の底から泡が出ている。へどろが溜まっているのではなくても何か泡立つ。ああ、まだ暑さが続くと泡を見て思う。
