Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

福島の犬

2009-11-02 00:34:14 | Weblog
まずは関係ない話題から。
今日、ある英語の論文を読んでいたら、ある人の論文(日本語)の元ネタを発見してしまった。に、似ている…。別にパクったとかそういうんじゃないですけど、引用するなりして元ネタを明示すべきじゃないか、などと思ったりする。それとも偶然でしょうか?あれ、そうじゃなくて、引用してたかなあ?見返すのがめんどい。まあしかし、これはなかなか鋭い指摘だぞと思ったぼくにとって、ちょっとしたショックでした。もちろん、この元ネタの内容を更に明確にして発展させた論文(日本語)なわけですから、全く問題はないんですけどね。ただ、オリジナリティって難しいんですねえってことを再認識させられたのでした。

さて、話は変わり、思い出話。このあいだ中学の頃のことを書いたので、今日は小学校の頃のことを。
福島へ移動教室に行ったのですが、そこの宿には一匹の犬が飼われていました。ぼくらはその犬をいたく可愛がり、「ケンタ」と名付けたのでした。ぼくらの学年にはけんちゃんという人気者がいて、彼の「けん」を取ったのだと思います。ぼくらはすっかり仲良くなり、ケンタもぼくらによくなついていました。2,3日滞在したぼくらはついにその宿を離れることになりましたが、別れ際にもケンタをあやしてやり(?)、本当に名残惜しい気持ちでいっぱいになったものでした。いざバスに乗り込み、出発したとき、後ろの席に陣取っていたぼくらの中の誰かが叫びました。「ケンタだ!」

皆一斉に後ろを振り返り、窓越しに遠くを眺めやると、なんと車が行き交う道路の中をケンタが走ってきます。脇目もふらず、一心に、真直ぐバスの後を追いかけてくるのでした。「バスを停めよう」「ケンタを連れて帰ろう」などと口々に言い合うぼくらでしたが、そういう気持ちを知ってか知らずか、ケンタはただ走りに走ってくるのでした。

しかし無力なぼくらには結局何もできませんでした。だいぶ長いことケンタの追いかけてくる姿を感動しながら見つめていましたが、とうとうその姿は小さくなり、やがて見えなくなりました。小学生時代に一番心に残ったことは何か、と聞かれたら、ずいぶん迷いますけれども、しかしこのケンタのエピソードが心に浮かんでくるのは間違いありません。それほどぼくには印象的な出来事であり、そして感動的な思い出になりました。あれから、ケンタは無事に宿に戻れたでしょうか?かなり長い道のりを走ってきたはずです。しかも車が猛スピードで行き交う道路を。

ぼくらは、最初は戯れに愛情を注いだだけだったのかもしれませんが、しかし本物の愛情というものを犬から教えられました。愛情の恩返し。それとも倍返し?本当に立派な犬がいたものです。