Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

「ド」と「ポ」の話

2013-06-29 18:12:49 | Weblog
室温が遂に32度を突破。暑い。昨夜はあまりの暑さで寝たり起きたりの繰り返し。そのうえ午前3時頃には腹痛まで起きる始末。一昨日、枕を返却してしまったので、ありあわせのもので即席の枕を作って寝ていますが、それがどうもうまくない。そのせいもあるのでしょう。全然寝れない。おまけに今朝は背中が痛みます。変な枕で寝ているからに違いありません。それから、帰国間近なのでもう飲料水の貯えがほとんどなくなってきているにもかかわらず、ここへきてこの暑さなので、耐えがたいですね。飲みたいけど飲めない。お湯を沸かせばいいのですが、暑過ぎてお湯を飲む気にはなれないです。昨晩はそんなこともあって、喉が渇いてひーひー言いながら輾転反側。そもそも寮内に水を売っている売店がないのがいけないのです。外に出て横断歩道を渡ったところに食料品店がありますが、そこまで行くのはめんどくさすぎる。いやあ、しんどい。でも熱中症になるとまずいので、朝起きてとりあえずお湯を沸かし、お茶を飲みました。仕方ない、お茶で凌ぎますよ。

さて。「ド」と「ポ」の話。
ロシアに出入国するには「出入国カード」と「ビザ」が必要なのですが、ぼくの場合その滞在期限がどちらも「6月30日まで」となっています。だからぼくは6月30日まではロシアに滞在することができて、逆に言うと7月1日からは滞在してはいけないのです。ぼくは30日にロシアを出国するので、何の問題もないはずでした。・・・が、さっき最終チェックのつもりで出入国カードをよくよく見てみたところ、「ド・6月30日」と書かれてあるんですよね。「ド」というのはもちろんロシア語なのですが、「まで」という期限を意味する前置詞です。日本語で「30日まで」と言えば、一般的には「30日」も含みますが、しかし「ド」というロシア語は、ぼくのロシア語の知識が正しければ、そうではないのです。「30日」は含まず、「29日」までを意味するのです。不安になって辞書を引いてみたら、やはりそうでした。え、ということは、ぼくは今日出国しなきゃいけないんじゃないの?あれ?これってやばくない?でももう飛行機のチケットは買っているし、それに今日の分のチケットなんて今更買えるのかよ・・・とどんどん不安に。まずい。でも、明日チェックインするときに問題を指摘されたとしても、たぶん別室に通されて、その後ごたごたがあって、そして結局は日本に送り帰されるだけだろう、と腹をくくる。罰金くらいは払わないといけないかもしれないけど、でも日本には帰れるはずだ。

と、ちょっと開き直ったところで、ふと思い出したことが。でもたしか他の留学生たちもビザの期限は30日までと言っていたよな。そして30日に帰ると言っていた人もいたよな。そもそもビザにも期限が書かれてあるはずだよな・・・。ということで、自分のビザを確認。すると、そこには「ポ・6月30日」という表記。「ポ」というのもやはり「まで」を意味するロシア語ですが、しかしこれは「30日」を含む「まで」なのです。ビザの方が「ポ」だったら、やっぱり30日までいていいはずだよ!よし、これで安心。

出入国カードがどうして「ド」となっているのかは不明ですが、公文書では「ド」も「ポ」も同じ扱いなのか?そんなはずはないような気もしますが、しかしビザの方がこんな紙切れ(出入国カードのこと)よりも効力がありそうだし、きっと大丈夫なはずだ。

だいたい「2013・6・30」と印字されているんだから、普通は30日まで滞在していいと思うでしょう。その前置詞が「ド」であるか「ポ」であるかなんて、注意しないよ。よーし、不安を払拭したぞ。というわけで、明日出国(の予定)。

してやられる

2013-06-28 01:37:45 | Weblog
今日は一転して非常に慌ただしい日でした。

朝起きたら室温が31度になっていることに驚きましたが、ここ数日は非常に暑い日が続いています。先週末は最高気温が16度だったんですけどね・・・。ロシアって国は、タフな人間でないと生きていけないよ。

今朝は事務手続きで忙殺されました。4階に行ったり8階に行ったり1階に行ったり5階に戻ったり、重い荷物を持って行ったり来たり。あちらでハンコをもらい、こちらに提出し・・・という手続きを1~2時間かけて済ませました。

あとトランクにもう大部分の荷物を詰めてしまって、リュックザックにも荷物をいれてしまう。出国日当日に小物を詰めたら、それで完了かな。

と思って午後はゆっくりしていたら、思いがけない事態が。

夕方5時頃に食堂に行ったところ、レジのおばさんが「閉まってるわよ」と言うのです。「売り切れよ」と。食堂にはまだ二人の学生がいて、その一人がぼくに向かって言いました。「何にもないわよ」。おまけに食堂の扉には、「6月28日は技術的理由により休業」という張り紙。

もう勘弁してくれよ。こういうの大嫌いだよ。もともと食堂は6月29日から長い長い夏季休業に入る予定ではあったのです。でも逆に言えば、それまでは営業しているってことです。ぼくはそう思っていました。けれども、2日前になっていきなり休業(今日の場合は売り切れだけど)。ほとほとうんざり。ほんと嫌だ。

ぼくはね、最終日にレジのおばさんに対して、「今までどうもありがとうございました」の一言くらいお礼を述べておくつもりだったんですよ。この寮の食堂には散々嫌な思いをさせられてきましたけれども、でも最後はお礼を言って去ろうじゃないかと。もうかなり前からそう考えていて、一人でうれしくなっていたりもしたのです。ご苦労なこった!そういう気持ちをこうして踏みにじってくれましたね。だから嫌なんだ。

ともかくこんなわけで、帰国日までひもじい思いをしそうです。

暇な日

2013-06-26 15:38:21 | Weblog
今日は一日中空いている日です。
だからちょっと外出しようかなあと考えていたのですが、朝目が覚めたときからお腹の調子が悪い・・・。大事を取って(モスクワはトイレ事情も悪いし)今日は一日中部屋に籠ってようかな・・・。

ところで、昨日帰るはずだったロシア人がなぜか今朝もいる。なんで?しかも洗面台を激しく汚している。その洗面台は、「もう自分ひとりだから誰も汚す人がいなくなった!」と喜んだぼくが昨日掃除したばかりだというのに!さすがに頭にきた。お前さんにはうんざりだよ。しかしこのうんざりする体験も、あと少しの辛抱だ。じっと我慢。

今日は暇なので、ひょっとすると後でこの続きを書くかもしれません。書かないかもしれません。・・・

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追記。
隣のロシア人、少なくとも今はいません。現在26日の22時です。もう出て行ったのでしょうか?ただ、昨日もこの時間にはいなくて、でも今朝はいたんですよねえ。そして洗面台を汚していったんですよねえ。明日にならないと真相は分かりませんが、いてもいなくてもいいからとりあえず共用スペースをこれ以上荒らさないでほしいものです。

こうして今日も日が暮れてゆく(モスクワはまだ日が沈みません)。

帰国後の予定

2013-06-26 04:01:12 | Weblog
今日の夕飯は黒こげのハンバーグ。うんざりだよ。ほんとにここの食堂、調理が上手になってほしい。

帰国後の予定が徐々に徐々に固まりつつあります。と言ってもほとんど人と会う予定ですけどね(もっと言えば飲み食いする予定)。

というわけで、もう気持ちはすっかり帰国モード。本は無事に日本に届いたようなので、あとは自分が無事に帰るだけです。

モスクワの空港まで大きな荷物を持って行くのは骨が折れますが(壊れそうなトランクが耐えてくれるかも不安)、最後の関門だと思って頑張ります。ああしかし、関門は他にも幾つかあるんだよな。出国する旨を寮の責任者に報告しなければいけないんですけど、それが誰だか聞かないといけないこととか、持ち物を処分することとか。いずれも一つ一つは大したことないかもしれませんけど、そういうのが積み重なるとけっこうな心理的な負担になるのです。でも不安要素は数えてゆけばきりがないので、同じ唇でそっと歌った方がいいのです。

ともかくまだ今月中はロシアなので、残り少ない日々だけど気を抜かずにいようと思います。

さあ、こうして今日も過ぎてゆく。

生活の断片

2013-06-25 02:28:34 | Weblog
寮のエレベーターの前でこんな会話を聞きました。

「二つあるのに一つしか動いてない」
「前は四つ動いてたさ」


解説。
寮にはエレベーターが六つあるのですが、そのうち二つは高層階用なので、ぼくの住んでいる5階には止まってくれません。したがって、四つのエレベーターが機能しているはずなのですが、しかし少なくとも去年の9月から、このうちの二つはスイッチを押しても応答しません。0階でスイッチを押せばちゃんと応答し、5階にも止まってくれますが、なぜか5階でスイッチを押しても応答しないのですね。したがって、5階から下に降りるには残り二つのエレベーターを使う他ないわけです。ところが、ここ1~2カ月の間、最後の二つの内の一つのエレベーターが動いていないんですよね。だから結局のところ、22階建の寮で、5階から下に降りるのに使えるエレベーターはたった一つだけということです。全然来ないよ。ちなみに5階と言っても、1階から0階まではなぜか3階分あるので、実質8階に住んでいることになります。

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最近、夕飯を食べるとお腹が痛くなります。今日もそうだったのですが、何とかやり過ごしてやった。

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寮の食堂では、誰も並んでいないにもかかわらず、給仕のおばさんは勝手にスープをよそい、それを配膳台に並べておきます。そして自分は引っ込んでしまって、学生が来ても知らん顔。仕方がないので、学生はその事前によそわれたスープを選ばざるを得なくなります。
今日、ぼくもそういうスープをお盆に載っけましたが、いざ食べてみてびっくり。ほとんど水じゃないか。一体どれだけ前に用意したスープなんだよ。うんざり。しかもこのスープ、異常なほど塩辛い。舌がひりひりしました。うんざり。
もっとサービス精神を身に付けてほしい。そしてもっと調理が上手くなってほしい。

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0階で新しいベッドが幾つも並んでいるのを目にしました。これから各部屋に配置されるのだろうな。ちっ、ここに来るのがちょっと早かったかな。ぼくのベッドは、去年一度ぶっ壊れてますからね。それほどボロっちかった。

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一日が過ぎてゆく。

最悪経由・・・

2013-06-24 03:40:25 | Weblog
・・・で、何とか「安心」に辿り着きました。今朝、日本からメールが来て、発送した本が無事に届いたという連絡を受けました。ほっ。実家では置き場所に困っているようですが、まあ何とかしてくれ。

置き場所というか処分に困っているのが冷蔵庫。買ったときから既に頭を悩ませていて、人に相談したりもしていたのですが、いよいよという段階になっても依然として始末に困っています。先日、ついに隣室のロシア人に相談してみたところ、「この寮には保管所があるから、自分はそこに冷蔵庫を持って行くつもりだ」と言われました。「その保管所はどこにあるのか」と尋ねたところ、「それは知らない。明日聞いてくるから、そうしたら君に教えるよ」ということになりました。でも、翌日の夜になっても何の音沙汰もないので、今日の午後改めてこのロシア人に事の次第を聞いてみました。すると、「冷蔵庫は保管所に受け入れてもらえないらしい」と言われました。「じゃああなたは自分の冷蔵庫をどうするのか」と突っ込んでみたら、「分からない。そんなことは誰も知らないさ」という返事。ちなみに彼は25日に帰郷するようなので、もう残された時間は僅か。

彼はたぶん冷蔵庫を部屋に置いていくんだろうな。だってもうそうするしかないじゃないか。ということは、ぼくだってそうするしかないということだ。もういいや。冷蔵庫のことで10ヶ月間頭を悩ましていたけれども、ほっとこう。なるようになれさ。

21日は夏至でしたので、せっかくだから夏至らしい過ごし方をしてみました。つまり、一日中部屋の電気を付けなかった。現在モスクワは23時頃まで日の名残りがあるのです。そしてぼくはこの日、23時過ぎに寝てしまったのでした。

部屋が東向きみたいで、朝は日の光がいつも眩しくて、随分早い時間帯に目が覚めます。そのせいかどうか、夏至に限らず最近は寝るのが早くなりがち。健康的だからいいかもしれないけれど、午前中は洗濯以外にすることがないので、暇。でも明日はパンを買いに出かけよう。

初心に帰る

2013-06-23 03:56:46 | お仕事・勉強など
何か書こうと思っていたことがあったんですけど、忘れてしまったので、別のことを。

論文の書き方って分からないなあと常々思っているのですが、さっき「はっ」と思い当たったことがありました。それは、「書くべきことだけ書く」ということ。当たり前のようですが、博士課程に入ってからぼくはこれができていなかった。というか、修士論文からできていなかった。いや卒論から?

でも、高校生のときの読書感想文では、これをきちんと実行できていたのです。ぼくはそれを方寸に刻んで感想文に取り組んでいましたから。

逆に言えば、何度も自分に言い聞かせなければ「書くべきこと」以外のこともついついぼくは書いてしまう性質なのです。そういう特徴はこのブログを読んで下さればすぐお分かりかと思うのですが、ぼくはどうも冗長で、余計な情報を盛り込み過ぎる。自分の考えたこと、思ったことを全部吐き出してしまわないと何だか気持ち悪くて、というかもったいない気がして、それが理路整然としていようといなかろうと書き足していってしまうんですよね。最低限の辻褄は合わせますが、でも基本的にはカオス。

卒論や修論は、調べたことの発表の場だったのでこれでもよかったのかもしれませんが(いや審査して下さった先生方の心が広かったのか・・・)、やっぱり博士の論文だと通用しませんね。ぼくはとにかく調べたことを吐き出すので、まとまりに欠ける。首尾一貫性がない。個人的にはそういうのはアリだし、そしてこういう論文でも評価して下さる方はいらっしゃるわけですが(いい評価を付けて下さる審査員もいる)、やはり全員を納得させられるものでは到底ないわけです。

調べたことの一部しか論文に活かせないのがもったいな気がしてしまうのは単に貧乏性なのかもしれませんが、まあでもこの辺にこれからは気を配ってみよう。「これから」ってのが「いつ」なのかは知りませんけどね。

授業終了

2013-06-20 02:41:13 | Weblog
明日で授業終了です。でも、明日の授業には「可愛いあの子」が出席しないと知ったので、すっかり出る意欲を失くしてしまったぼくは、休もうかなと思案中。

うまく行かないこともあるけれど、生きてりゃ何とかなる、というおトキさんの台詞を反芻しながらどうにかこうにか生活しています。

帰国準備は着々と進行中。とりあえず不要な大荷物を処分しなければいけないので、今はそれにかかりきり。大きなゴミを捨てる場所が外にあるのですが、本当にそこに捨ててよいのか自信が持てず、恐る恐る捨てに行っています。誰かに見つからないようにと。不法投棄と間違えられたら嫌だなあと。

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「大事な言葉は絶対に言わないで」生きている人って実際いますけれども、自分もそうなんだよなあ。「連絡してね」とは言っても、「連絡するよ」とは言わない。「会いに行くよ、ヤックルに乗って」だなんて口が裂けても言えない。それは自分が臆病だからってのもあるけれど、自分が真面目すぎるからってのもある。公平に言って、自分は真面目すぎると思う。

ところで、以前買った本の著者が、今日授業を受けた先生の旦那さんだということを知りました。なんだ、そうだったのか。もっと早く知っていれば、質問とかできたのにな。知るのはいつも遅すぎる。

さあてと。ゴミ捨てなきゃな。もっとも、まだそれは「ゴミ」ではないのだけど。

絶望発-最悪行

2013-06-18 02:34:40 | Weblog
既に予兆はあったのかもしれない。本を運ぶ手伝いを頼んでいた人から、「この日は午後に予定が入ったので午前中にして下さい」という連絡が来たのは、一昨日のことだった。確かに彼を一日中拘束するつもりはなかったけれど、しかしかなり前から今日手伝ってくれるように頼んでいたのだから、直前になって「午前中でなければ他の日にして下さい」と言われたぼくは、憮然とするしかなかった。

已むなく午前に本を郵便局まで運びに行くことを了承した。そして今日、大きな荷物を抱えて寮の外に出ようとしたら、警備員に呼び止められる。大きな荷物を運び出すには専用の許可証が必要らしい。急いでそれを作りに4階まで駆け上がる。

許可証の一件は無事に済んで、寮の外に出たら、ちょうど手伝いに来てくれた人もやって来た。彼は大きなトランクを引きずっていた。そのトランクの中にぼくの本を詰める作戦らしい。本の量が余りにも多すぎて、一日ではとても運び切れないとぼくは考えていたので、これはナイスアイディアだと思った。ファインプレーだと。ただ、トランクを持って再び寮内に入ると、出るときにまた許可証が必要になるので(新たに作成しなければいけない)、それを忌避したぼくは、自分ひとりだけ部屋に戻って大きな袋に本を詰め、それを寮の外に運び出してトランクに詰め――という作業をする方を選択した。この作業を3往復繰り返し、遂にぼくの部屋から本が消えた。

全部で何キロあったのか分からないけれど、とにかくとんでもない重さと数の本を、最寄りの郵便局まで運んだ。随分前から雨が降り出していた。ぼくらは傘もささずに、無言で本を運んだ。口をきく余裕などなかった。あまりに辛くて挫けそうになったけれど、やっとのことで運び終えた。

そこでぼくは「日本に本を送りたい。段ボールを下さい」と受付に頼んだ。すると、予期しない答えが返ってきた。「ここでは箱は売っていない」。

段ボールがなければ本を送ることはできない。では一体どうすればいい?この大荷物を抱えてまた寮に戻れとでも?それはできない。この荷物をもう一度運ぶことは、絶対にできない。ぼくは尋ねた。「どこで段ボールを売っていますか?」すると、受付のおばさんは「○○通りの郵便局で売っている」と言う。ちなみに今ぼくたちのいる場所は「EMSの支店」であって、厳密に言えば「郵便局」ではない。その郵便局はそこから歩いて10分ほどの距離にあることを知っていたので、とりあえず手伝いに来てくれた彼を荷物番にして、ぼくがその郵便局まで行って段ボールを買ってくることになった。

郵便局には前にも行ったことがあったけれど、ひどく分かりにくい場所にあるため、今回も道に迷った。おまけに雨脚が強くなった。さすがに傘をさして、人に道を聞く。とうとう目当ての場所に辿り着いて、窓口に並ぶ。自分の順番が来て、「EMS用の段ボールを下さい」と言ってみた。すると「ここには売っていない」という返事。「本を入れられる段ボールなら何でもいいんです」と畳みかけたら、「ここにはない。あるのはこれだけ」と言って指差したのは、ティッシュ箱くらいの大きさの段ボール。ぼくの心は、この時点で既に挫けていた。最初はEMSの支店で「段ボールはない」と言われたとき。二度目は郵便局が見つからず、おまけに雨が本降りになったとき。そして三度目がこのとき。それでもぼくはこう言った。「段ボールはどこで売っていますか?」そうしたら、「17番地で売っている」という答えが返ってきた。EMS支店のあるのが18番地だから、その隣だ。ぼくはEMS支店まで戻ってみることにした。

手伝いの彼に事情を説明して、再び外へ。しかし17番地など存在していない。18番の隣が16番になっている。ひょっとしたら、郵便局では「18番」と言ったのを、ぼくが「17番」と聞き間違えたのかもしれない。ロシア語の発音はとても似ているのだ。すぐに踵を返し、EMS支店へ。そこで改めて尋ねてみる。「郵便局では箱は売っていない。ここで売っていると言われました」。すると、「ここでは、今まで、一度だって、箱を、販売したことは、ないわ」と、一語一語区切って言われた。ぼくの心がへし折れたのは、今日4度目。あるいは4度目の絶望。

大荷物を持ち帰ることはできない。かといってその荷物を入れる段ボールがない。ではぼくらはどうしたか?ビニール袋をもらうことにした。ここでは巨大なビニール袋が無料で配布されていた。その大きさに、ぼくは僅かな希望を見た。100冊以上のハードカバーを、ビニール袋に入れる作業が延々と続く。もちろん、本を入れ過ぎれば袋が破けてしまう。袋は小分けにして、二重にした。

ぼくらがそれを受付に渡そうとすると、何か分からないことを言われた。よく聞いていると、「袋の数が多すぎる、これでは金額が膨大になってしまう。段ボールに入れた方がいい」。そんな内容だった。「段ボールはどこにも売っていない」とぼくは言った。あんたが教えてくれた郵便局でも、ここでも、段ボールは販売してないんだ。おばさんは、こう言った。「段ボールはお店で売っているわ」。は?

「どういうお店で売っているんですか?」
「知らないわ。どんなお店でも売っているわよ。聞いてみなさい」
隣の受付のおばさんも口を挟む。
「朝早く行けば、お店で段ボールが売っているのよ。明日の朝行ってみなさい」

ふざけるな。段ボールが店で売っていることなどあんたらは最初一切口にしなかったし、だいたい明日では遅いのだ。明日の朝までこの荷物はどこに置いたらいいのだ?もう本は全てビニール袋に詰めて、口を締めてしまった。これを再びトランクに移し替えて、寮に運び、そしてまた後日この荷物をここまで運べと言うのか?

5度目の絶望。そのとき、知らないロシア人が日本語でぼくらに話しかけてきた。「あなたは日本人ですか?」と。

(救世主?)と思いながら、ぼくは「そうです」と答えた。彼が通訳になって、ぼくの主張を受付に伝えてもらった。そして受付側の主張も彼から教えてもらった。やはり、高額になり過ぎるので小分けにしたビニール袋は受け取れないらしい。でもどのくらい高額になるのか分からないので、とりあえず金額を教えてほしい、重さを量らせてほしい、とぼくらは必死に訴えたけれど、彼女は聞く耳を持たなかった。この時点で既に、手伝いの彼には午後の用事の時間が迫っていた。「もうすぐ行かなければいけません」と彼は言った。ぼくはもう気が狂わんばかりだった。今ここで一人になって、もし荷物を受け取ってもらえなければ、ぼく一人で大量の本を抱えて一体どうすりゃいいのだ?仮に荷物を受け取ってもらえても、高額過ぎて手持ちのお金を超過していたら、やはりその分の本を再び持ち帰らなければならない。それが大量にあったらどうする?「もう行っていいですか?何か問題ありますか?」彼は言った。「問題は大ありだよ」ぼくは自分の懸念を説明した。「でも用事があるんだろ。仕方がない!」たぶん、ヒステリックになっていたと思う。明らかにぼくは取り乱していた。通訳を買って出てくれたロシア人は、自分の用事が済むと帰って行った。「頑張って下さい」と言い残して。

結局、ビニール袋は小分けにせず、一枚の袋に大量の本を詰めることになった。たぶん、袋は自宅に配送されるまでの間に、どこかで破けてしまうだろう。本は散逸するだろう。それは、最悪の事態だ。何年もかけて集めた貴重な本の数々。もはや入手不可能な本もある。100万出したって入手できない本があるんだ。

彼はぎりぎりまでぼくに付き添ってくれた。約束の時間を1時間近くオーバーしてしまっているようだった。ぼくはこう思う。つまるところ、これは自分の判断ミスだ。事前に一度少量の本だけをEMSで送ってみればよかった。予行演習が必要だったのだ。ところがぼくは、ロシアでのEMSでの発送方法が分からないばっかりに、それを怠った。一度辛い思いをしてもいいから、まずは試してみるべきった。いきなり全ての本を送るのは、無理があった。危険すぎる賭けだった。そしてぼくはその賭けに負けたのだ。

本が失われれば、ぼくの研究人生――それはひょとするとまだ始まってすらいなかったのかもしれないけれど――は、もう終わりだ。終了。

甘く見ていた

2013-06-16 02:32:29 | Weblog
来週本を郵便局に運ぶ予定なので、今日とりあえずトランクに荷物を詰めて、本がどれだけトランクの中に入るか確かめてみました。すると、かなりの分量が収納可能!やったぜ、これで郵送する本は少なくて済むかも、と思ってトランクを持ち上げようとしたら、びくともしない。・・・どころか、取っ手がもぎ取れそうなんですが!やばいねこれは。この段階でトランクがぶっ壊れるとか勘弁してほしいので、作戦変更。

トランクには最低限の荷物だけを詰めて、あとは郵送してしまうことにしました。そこで、郵送すべき本をバッグに入れてみましたが・・・全然入らない!う~む、こりゃあ一日で仕事が片付くとは思わないことだ。見通しが完全に甘かったですね。何日か郵便局に通う羽目になりそうです。しかし、ただでさえロシアでのEMSでの発送方法が分からなくて心配なのに、これを何度もしなければならないとは。はあ。嫌だあ。

もう当たって砕けろですね。とにかく「EMSで日本に本を発送したいんだ」と訴えて、住所を所定の用紙に記入すればいい。あとはもう知らない。お願いだから、無事に済んでくれー!頼むよ。最後くらいは優しくしてくれ。

へとへとに疲れる

2013-06-14 04:09:36 | お出かけ
文字通り朝から晩まで外出して歩き回っていたので、へとへとに疲れました。

今回の行き先の一つは、ヴェルニサージュ。お土産屋さんです。と言っても、ただの土産物屋ではなく、土産物屋の集合地です。幾つものお店が軒を連ねていて、そこで買い物をしました。モスクワでお土産を買うと言ったら、真っ先に思い浮かべる場所がここです。もっとも、ぼくは初めて行きましたが。ちょっと辺鄙なところにあるんですよね。

ガイドブックにも書いてあった気がしますが、モスクワの土産物屋では値引き交渉をするのが普通で(いや普通とまでは言えないかもしれないけど少なくともおかしなことではない)、ぼくも試しに値切ってみました。初値切り(「初音義理」と変換された我がパソコン)。最初は200ルーブルと言われたのですが、「160」「駄目だ」「180」「持ってけ、交渉成立だ」ってなって、見事180ルーブルでゲットしました。これで味をしめたぼくは、他のお店でも次々と値切りを敢行、ほとんどの品を定価よりも安く購入できました。けっこうおもしろいな。

このあと、場所を移して教会を探訪、それからモスクワ川クルージング、最後に雀ヶ丘を登ったところのレストランで遅い夕食。

いやあ、疲れた。普段はこんなに遊び歩かないのですが、今日はたまたま。あった出来事をもっと詳しく書きたい気もしますが、疲れたのでこのへんで。

eチケット

2013-06-11 02:57:38 | Weblog
少しずつ帰国に向けての準備を進めつつあります。本を送る日取りやお土産を買いに行く日取りを決めたり・・・まだ計画段階ですけど。

ところで、航空機のチケットってeチケットですから、「eチケット控え」を印刷して空港に持って行く必要ってないですよね・・・。アエロフロートの公式サイトで初めてチケットを買ったのですが、部屋にはプリンタなどあるはずもなく、「控え」をプリントアウトすることができません。空港ではパスポートだけ見せればOKですよね・・・年末に帰国した際もeチケット控えなんて持たずにパスポートだけでチェックインできたし(ただこのときはアエロフロートの公式サイトでチケットを購入しなかった)、大丈夫だよなあ(オンラインチェックインだってできるわけだから、控えなんていらないよな)。でもこういう不安が積み重なって、心労が増す。

そういえばお土産、もうそろそろネタが尽きているので、今回は期待しないでください(いやいつも期待してないか)。皆に一律同じものを買って行こうと思っています。すみません。

なんとなく不愉快なこともあるのだけど、時が解決してくれるのを待ちます。

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あと、ロシアからEMSで荷物を発送する仕方を調べてみたんですけど、やばいな、全然分からん。こういうのは本当に苦手だ。税関申告書だとかインボイスだとか、何それ。ロシア語または英語で記入するのも自信ない。あああ、嫌だ。

きれぎれ

2013-06-10 04:18:28 | Weblog
言の葉バブル継続中。普通は1週間もしないうちにアクセス数は標準に戻るのですが、今回は依然として高い水準を維持。新海監督すごいじゃないですか!ずっと検索され続けてるってことですよ(たぶん)。

いま読んでいる論文が、妙に難しい。構文は単純ですっきりしているのに、使用される単語が特殊だったり、言い回しがものすごく堅かったり。この著者は若い頃は非常に難しい文章を書いていたものの、最近は簡明な文章を書くようになっていて、で、いま読んでいるのはちょうど端境期の文章なんですよね。そういう意味では分かりやすい。

明日はフォネチカ(音声学)のテストなんですが、ぼくには別にテストを受ける義務はないので、行く必要はないのです。が、先生が「来たかったら来てもいいわよ」と言うので、(自分で言うのも何だけど)殊勝なことに出席しようと思っています。しかもさっきまでそのテスト対策をしていました。(自分で言うのも何だけど)え、偉い・・・!

ぼくには将来のビジョンがないので、ややもすると暗黒面に引きずり込まれそうになるのですが、しかし目先の目標ができたりすると、ほっと安心したりもします。目の前のことを淡々とこなすだけ、というのは一つの理想ですので、たとえ刹那的ではあってもそういう態勢に入れることがうれしいのです。と言っても、自分の場合は無気力や倦怠感と付き合いながら(少なくとも今のところは)やっていくしかないので、遅々として作業が進まないことに焦りや苛立ちを募らせてしまったりもします。今日は論文1ページしか読めなかったなあ、とか。文字通り「朝飯前」のウォーミングアップで終わってしまった感ありですね。まあしかし、1日1頁でも1年あれば300頁以上読めますよ、と言ってくれた先輩もいるし、簡単に絶望したり諦めたりしてはいけない。

さて、明日からまた一週間が始まる。

仲間を作ること

2013-06-08 02:43:12 | Weblog
皆で誘い合って集まったり、○○会を催したり、そういう試みに対して、「群れるのが好きなだけ」と言い放った人が昔の知り合いにおりましたが、ぼくはその発言を聞いてちょっと嫌な気持ちになったのでした。

ぼく自身は割と一人でいることが多いのですが、しかし仲間を作ることを否定しようとは思いません。確かに、仲間を作るということはそれ以外の人たちを疎外するということにも繋がります。でも、だからと言って仲間を作ることが悪いことだとは自分には思えない。それは、ぼくが価値観を共有できる人たちを求めているので、本当は一人でいたいのではなく、仲間と一緒にいたいからなのだと思います。

もちろん何事にも両面があるわけですから、「仲間」にもいい部分と悪い部分とがあるのでしょう。ぼくはそのいい部分の方により重きを置いているということです。

ここ何年もの間、そういう本心を表に出すことはなるべく控えていましたけれども、やはりぼくは多くの人たちと繋がっていたいのだと思います。「あるいは焚き火を囲み、あるいは緑陰で肩を並べる」、そういう空想が原点にあります。

風立ちぬ キャスト発表

2013-06-07 03:59:58 | アニメーション
宮崎駿監督の新作映画『風立ちぬ』のキャストが発表されました。
詳しくは、公式サイトへ。
http://kazetachinu.jp/

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さて。ここ10日間ほどで20冊ほど本を買ってしまっています。郵送が大変になるのでもう買わないようにしようと決めていたのにもかかわらず、今日も5冊。まずいなあ。もう書店にはなるべく足を運ばないようにしたいですね。でもせっかくロシアに滞在しているのだからって考えもある。

ところで今日はなんとなく時間がなくなってしまって、明日の宿題まだやってません・・・。昨日も同じようなことを書きましたが、あれから頑張って宿題をこなしたのでした。しかし今日はどうかな?

それにしても、宮崎駿の「企画書」を読むと心躍りますね。「高畑勲と宮崎駿の比較文体論」というテーマで書いてみたいともう何年も考えているのですが、機会は訪れません。魅力的なテーマなんですけどね。

宮崎駿というのは、一言で言えば天才なのだと思いますが、しかしその「天才の属性」がいかなるものなのか、ということを詳らかにしたいと思っています。天才の属性。ちょっと分かりにくい表現をあえて採用しています。というのも、これはまだ書かれていないテーマだから。