まず、マルクスの著作を読むならば何から読むのがお勧めか、と聞かれれば、個人的には『経済学・哲学草稿』『共産党宣言』『資本論』の三冊を挙げたい。いずれもマルクス著作のなかで超メジャーなものばかりだ。
書名:経済学・哲学草稿
著者:マルクス
訳者:城塚登、田中吉六
出版社:岩波書店
出版年:1964年
『経済学・哲学草稿』(城塚登・田中吉六訳、岩波文庫、1964年)は若き日のマルクスが残した草稿(生前には出版されず)であるが、頭から読み始めるよりも、まず「疎外された労働」の章から読むことをお勧めする。といよりも『経済学・哲学草稿』は、ひとまず「疎外された労働」の章だけ読めば良い。疎外、類的存在、自己確証などマルクス思想特有のタームがいきなり出てきて戸惑うかもしれないが、考え過ぎる必要はない。それほど長くない章なのでとりあえず読み通してみて欲しい。昨今、非正規労働の増加、派遣切り、ワーキング・プア問題、就職活動競争の激化など、労働・雇用をめぐる社会問題が頻発しているが、このような時代だからこそ、改めてマルクスの労働疎外論を坦懐に読み直してみて欲しい。それが現代の労働にも十分に説得力をもって訴えかけるものをもった概念であることを理解してもらえるのではないかと思う。