荒井 献(あらい ささぐ、1930年5月6日 - )は、日本の新約聖書学者でグノーシス主義研究者である。神学博士(ドイツ・エアランゲン=ニュルンベルク大学)、東京大学及び恵泉女学園大学名誉教授。日本学士院会員。
荒井献氏(神奈川県川崎市宮前区けやき平)「特別功績者」=1959年、東大大学院西洋古典学博士課程終了後ドイツへ留学、エルランゲン大学でDr.theol(神学博士)の学位を取得。
以後、キリスト教史学者として研究に専心し、キリスト教成立時、正統とされた初期教団と異端とされたグノーシス主義との関連を世界で初めて解明、その成果は国際的にも認められ、73年に日本学士院賞を受賞、98年には地中海学会賞を受賞した。また、多数の著作や大学教授として後進の指導など、聖書学会でのめざましい活躍で昨年12月に日本学士院会員に選定された。
原始キリスト教史、新約聖書の国際的第一人者として恵泉女学園大学学長などを歴任、現在も同大学教授、東京大学名誉教授としてわが国をはじめ世界の学術文化の向上に貢献している。
- 原始キリスト教とグノーシス主義(岩波書店、1971年)
- イエスとその時代(岩波書店<岩波新書>、1974年)
- 新約聖書とグノーシス主義(岩波書店、1986年)
- 新約聖書の女性観(岩波書店、1988年)
- トマスによる福音書(飜訳および解説、講談社、1994年)
- 問いかけるイエス(NHK出版、1994年)
- イエス・キリスト(上・下、講談社、2001年)
- 荒井献著作集(全10巻+別巻、岩波書店、2001年6月 - 2002年6月)
- 初期キリスト教の霊性-宣教・異端・女性観(岩波書店、2009年)
聖書に向かって,現代の難問を問いかける.隣人とは誰か,なぜ差別は生き続けるのか,政治的支配と権力構造への批判の拠点とは何か-新約の読み方の幅を押し広げた綿密な文献研究を導いたものは,同時代への熱い視線であった.新約聖書学上の主要な業績に,状況への発言,説教,自伝的エッセイを併載し,信と学問と思想を一望する自選集. |
〈 全巻の構成 〉
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キリスト教の基礎を据えたパウロ,最初の共観福音書記者マルコ,使徒たちの事績を記したルカ.同時代の国家と社会に対する,それぞれの闘争の痕跡を探り出す.「奴隷」「罪人」といった語の使用法と,女性の地位をめぐる発言の検討を通し,権力構造と差別意識が原始キリスト教に落とした影を捉える.
原始キリスト教成立の緊迫した事情を,宗教思想上のリアルな出来事として描く.その文化史的・社会史的背景を,イエスの原像とともに明るみに出そうとする.日本の新約聖書学を国際的な水準に押し上げた研究の集成.〈解説〉佐藤研
グノーシス主義の本質とは何か.世界の成り立ちを,多彩なシンボルと破天荒なイメージで語ろうとする神話群と綿密に組み上げられた教義体系-その神観念・人間観・救済観の特徴と問題点はどこにあったのか.「異端」の宗教思想に映し出される,正統の正統たる所以を問う.