一身二生 「65年の人生と、これからの20年の人生をべつの形で生きてみたい。」

「一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」

枢軸時代(Achsenzeit)

2013年05月18日 | 世界史

枢軸時代(Achsenzeit)とは、ドイツの哲学者で精神科医でもあったカール・ヤスパース(1883年?1969年)が唱えた紀元前500年頃に(広く年代幅をとれば紀元前800年頃から紀元前200年にかけて])おこった世界史的、文明史的な一大エポックのことである。枢軸時代の他に「軸の時代」という訳語があてられることもある。

この時代、中国では諸子百家が活躍し、インドではウパニシャッド哲学や仏教、ジャイナ教が成立して、イランではザラスシュトラ(ツァラトストラ、ゾロアスター)が独自の世界観を説き、パレスティナではイザヤ、エレミヤなどの預言者があらわれ、ギリシャでは詩聖ホメーロスや三大哲学者(ソクラテス・プラトン・アリストテレス)らが輩出して、後世の諸哲学、諸宗教の源流となった。

なお、枢軸時代とは「世界史の軸となる時代」という意味であり、ヤスパース自身の唱えた「世界史の図式」の第3段階にあたり、先哲と呼ばれる人びとがあらわれて人類が精神的に覚醒した時代、「精神化」と称するにふさわしい変革の起こった時代ととらえられる。

Raffael_058

食料生産革命、文明の誕生に続く、人類史の第三の転換点が、「精神革命」とでもよべる出来事です。これは、前500 年前後におきた、人類の精神における大変革を指しています。つまり、この時代にはじめて、人類は「思想」とよべるものを手にしたのです。

 こう書くと、それ以前にも思想はあった、と反論があるかもしれません。たしかに、はるか昔から、世界各地で人々は呪術的な信仰や、独自の神話などをもってはいました。しかし、それは自然界や人間界の出来事を説明するために、それぞれの「集団」がもっている思想でした。たとえば、雨が降らないのは水の神様が怒っているから生けにえを捧げなければいけないとか、そういった類いの迷信・神話の世界に人々は生きていたわけです。

 ここでいう「思想」とは、そうした神話などに疑問を感じ、自然のしくみ、あるいは人間や社会のあるべきすがたを、自分の頭で考えて説明しようとする、そういった行為をさしています。前500 年前後に、世界の四つの地域で、この「思想」が誕生しました。つまり、インドでは仏陀があらわれて仏教を開き、中国では諸子百家とよばれる大ぜいの思想家があらわれ、イスラエルでは預言者らによってユダヤ教が確立し、ギリシアでは哲学が全盛をむかえました。この時代を、ドイツの哲学者ヤスパースは「枢軸時代」とよんでいます。その後の人類史の基軸となった時代、という意味でしょう。