満州・新京で敗戦を迎えて、いよいよ
内地(日本)に引き揚げる時期を迎えて
将来にすっかり自信を失った父親は、母親に
「日本へ帰ったら農業でもしようか…」と
いいました。
「なに、気の弱いこと云って…」と
笑って、励ましていたようでした
… … …
父親も渡満で日本映画界へのブランクが
心細かったのでしょう
戦争中だった日本映画界は進歩もなく
停滞していたのが幸いしてか、父親は
映画制作現場へ帰って昔の勘が戻ったようでした
現代劇「夜の女たち」、溝口健二監督
主演、田中絹代(たなかきぬよ)、
高杉早苗(たかすぎさなえ)
時代劇が得意だった父親が、
ロケーションが主体の
現代劇で、荒んだトーンで
表現されていました
… … …
次にこれも現代劇「我が恋は燃えぬ」、溝口健二監督
明治の自由民権運動の女性闘士の話。
出演は、田中絹代、水戸光子(みとみつこ)
小澤栄太郎(おざわえいたろう)、
千田是也(せんだこれや)
戦後、映画界は時代劇が制作されず
現代劇からスタートしたようでした
これらの二作品は時代劇がメーンだった
松竹京都撮影所(下加茂)で作られた現代劇でした
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父親は家族よりはやく、京都へ帰ったのでした