引き揚げ船、信濃丸で、親しくなった船員さんを
私室に訪ねると、早速、機関室へ
連れて行ってくれました
… … …
機関室のドアを開けると
ゴーン・ゴーンと音が下の方から
聞こえてきます。
ドアの内側は太い針金の金網の床です
網の間から遙か下の船底まで見えます
巨大なシリンダーにピストンが
上下に動いて、クランクには
太いシャフトが繋がっていて
ぐんぐんまわっています
… … …
蒸気機関車のシリンダーとピストンと
同じ構造です。蒸気機関車のエンジンは
横向きに取り付けられていますが、
信濃丸の蒸気エンジンは
縦方向に取り付けられていました
シャフトの遙か先の船外にはスクリューが
付いているのでしょう
金網の床についている
鉄製でスケスケの階段を怖々歩いて
船底に到着しました
私の横はクランクに取り付けられた
巨大なピストンがドーン・ドーンと
上下に激しく動いています
落ち着いてまわりを見回すと
機関士さんが、油差しを持って
クランクの油差しの穴、
シャフトのベアリングなどに
頻繁に油を差して歩いています
… … …
どうしてそんなに油を差していくの…
と船員さんに聞くと、
1900年に建造された信濃丸がいまも
エンジンが元気に動いているのは
油を切らさないよう大事にしているからだと
ニッコリと船員さんは笑っていました。