国鉄・南風崎駅(はえのさき)から
乗車した引き揚げ者専用列車は
本州を走っています
途中、目的地に着いて
下車する家族もありました
私ら家族は、父親の郷里、浜松へ
向かっていました
専用列車は何故か夜行列車になっています
やがて、広島駅を通過しました
私は、新京で友だち、二瓶(にへい)君と
夏の午後、丸太にまたがって話した
「広島に新型爆弾が落とされた…」を
思い出して、列車の窓を開けました
… … …
列車のゴトンゴトンの音だけ聞こえて
外は真っ暗で何も見えませんでした
もっと明るいころに広島を通過していたら
なにか見えたのかも知れません
… … …
いまから思えば、九州、佐世保の
南風崎から関門トンネルを
通って、わりと近い広島駅、通過が
どうして夜行になってしまったのか
わけを覚えていません