でも すきだよ おばあちゃん (講談社の翻訳絵本) | |
S. ローソン | |
講談社 |
私たち透析患者の世界でも、高齢化は着実に進んでいます。透析療法に入る人の年齢も、最近では平均すると68歳くらいになっています。もちろん、元気なお年寄りもいますが、透析室の中には、年を取ってから透析を始めるお年寄りも増えてきましたし、今まで元気だった患者さんが、杖や車いすを使いだしたり姿が増えてきました。同じ部屋で、透析を受けますから、そうした姿を観ると、将来の自分の姿をみるような感じになります。最近では、透析患者の間でも、高齢化の問題が話題になる事も多くなりました。その中の一つに、認知症になった患者さんの事があります。人間は、医学の進歩とともに寿命が延びた分、年を取ることにより発症しやすい病気が増えてきました。認知症は、若年性もありますが、透析患者さんでも高齢ゆえに、今までの姿とは違ってしまった状態で透析を受ける患者さんも増えてくる傾向にあるようです。症状が進むと、クリニックでは対応できなくなりますが、なかなか受け入れてくれる病院のような施設が少ないのが問題となっています。子どものようになったり、人格が変わってしまった患者さんを見るのは、複雑な気持ちがします。
この絵本は、孫の少年がおばあさんに寄せる愛情を描いています。あとがきの訳者の解説にもあるように、初めは普通に読んでみて、2回目に読む時は、ページの左側だけを見ていくと、この少年の心の動きが良く見えてきます。
少年の友達のおじいさんやおばあさんの事も出てきます。それぞれ、仕事や趣味を楽しんでいるお年寄りたちです。でも、少年のおばあさんは、認知症で自分の事も忘れてしまったようです。でも、大好きなおばあちゃんは、元気な時の記憶ばかりではなく、今でも、少年にとっては大好きな存在です。
私たちの周りでも、認知症のお年寄りが増えているようですが、人格が変わったとしても、この少年のように、今まで通りの愛のある接触が出来るといいですね。子どもの世界でも、こうした状況が子どもの身近に起こっている時、このような絵本を子ども達に読んでもらいたいと思いました。