サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

電動車椅子サッカー日本代表合宿~関東大会、そして全国大会

2015年09月30日 | 電動車椅子サッカー

先週のシルバーウイークは19~21日が神戸での電動車椅子サッカー日本代表合宿、翌22日~ 23日が横浜で電動車椅子サッカーの関東大会に行き、電動車椅子サッカーにどっぷりと漬かった日々となった。
 
 日本代表合宿は昨年11月以来、久しぶりの開催。元々の予定では1月にオーストラリアなどが来日し『APOカップ』という国際大会が開催される予定だったが、残念ながら中止。理由は電動車椅子サッカー協会のHPを参照。
 その後7月に合宿が行われたが世界大会の開催時期がまだ正式に決まっていないということもあり、若手選手や最近招集されていなかった選手などを中心としたものであった。そいういった意味では今年初めての日本代表合宿となった。
 世界大会は元々今年の秋にブラジルで開催される予定であったが、昨年の時点でブラジルではおこなわないことが決まりいったん延期。現時点で来年開催されるのではないかという噂もあるようだが、正式決定には至っていない。今年は日本国内のブロック選抜大会も中止。ブロック選抜大会はクラブチーム間の大会ではなく、例えば関東ブロックや関西ブロックの代表選手たちが勝敗を競い合う、国際ルールの電動車椅子の制限スピード10kmで行われる大会である。
 
 つまり今年は3つの大会が中止あるいは延期となったわけである。
 電動車椅子サッカー界、受難の年である。

 その電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画を撮り続けている立場から言うならば、42.195kmのフルマラソンを走っていて30km地点にさしかかりなんとか先が見えてきたかなと思っていたところ「ゴールは42.195kmではありません。ゴールはその先のどこか?50kmあたりっすかねえ?? でももっと先かもね?」なんて言われた感じで大ショック!! 世界大会まで撮影を続けてまとめる予定だったからだ。
 しかし選手はもっとショックだったはずで、自分自身も何とか走ることをやめずに走り続けるしかない。 

 そんな流れのなかでの代表合宿には、7月の合宿で見出された選手たちや、久しぶりに召集された選手などを含む17名が集まった。選手たちは4チーム、あるいは3チームに分けられ、ゲーム形式中心で合宿が進んでいく。個々の能力が高い選手たちばかりなので、正直言って「オモシロイ!」
 しかし、連動してうまくいくチームがある反面、どうもうまくいかないチームもあったりとチームスポーツの難しさを感じる合宿でもあった。強烈にアピールできた選手、あるいは自分の持ち味を選手同士で引き出し合い楽しくプレーが出来ていた選手もいる反面、なかなか思うようにいかずもどかしさを感じている選手が多い合宿でもあった。また一度完成したチームの形を構築しなおさなくてはならない事情もあり、チームの輪郭が見えてくるのはもう少し先のことになりそうだ。

 2泊3日の神戸合宿が終わり翌日は関東大会が開催された。代表合宿に参加していたYokohama Crackers、レインボーソルジャーの6名の選手たちには、相当にハードな日程だった。というか私も疲れた。
 そしてその2チームが午前中の1回戦から激突! 全国大会の決勝でも不思議ではない対戦カードなのに!しかも 関東大会は日本代表合宿と違い日本独自のルールである制限速度6kmで行われるため、選手にとってはアジャストするのがとても大変だ。日本代表合宿は国際ルールの電動車椅子の制限速度10kmでおこなわれている。
 試合は永岡選手のキックインからのパスを紺野選手が見事に決めてYokohama Crackersが1-0と勝利。決勝戦では、YOKOHAMA Bay Dreamを3-0と撃破しディビジョン1の優勝を飾った。紺野選手はMVPも受賞。日本代表候補に選ばれてもなんの不思議もないほどに成長してきた。

 今年の関東大会は初日がディビジョン1、2日目がディビジョン2という開催方式。身も蓋もない言い方で2つの違いを語るとするならば、ディビジョン1はレベルが高く、2が低い。そういったこともあり以前はディビジョン2を見ていてもあまり〝面白く〟はなかったのだが、今大会はついつい見入ってしまう内容の濃さがあるような気がした。きちんとパスをつないで崩そうという意図が感じられたり。意図は感じるけどうまくいかなかったりするのでかえって応援したくなる気持ちになるというか、そんな感じで試合が繰り広げられた感じ。
 つまりスポーツそのものというか、底辺のレベルが上がったというか。もちろん前述したYokohama Crackersやレインボーソルジャーと試合をしたら全く試合にならないことは明白なのだが、実力が拮抗していている同士がきちんとしたイメージを持ってガチンコで勝負したら観ている人の心に届くんだなあと再認識した。
 ディビジョン1とディビジョン2の違いは、大会パンフレットの関東協会会長の言葉を借りるならば、「技術を高めていくことを重視するディビジョン1」「身体機能の改善と楽しさを重視するディビジョン2」ということになる。まったくその通りなのだろうが、「身体機能のさらなる改善が求められ、決して楽しさを忘れてはならないディビジョン1」と「技術を高めていくことで、さらに楽しくなっちゃうディビジョン2」という言い方も出来るかもしれない。
 
 ただ全員が国内ローカルルールの6kmでプレーする限界は、もう既に超えているような気がする。日本代表レベルの選手で言えば10kmと6km、双方に対応するのはとてもとても大変だと思う。プロ野球の選手が軟式野球の試合にも対応しなくてはならないみたいなもんだ。ちょっと違うか。
 もちろん電動車椅子サッカーの原点や基本を6kmのルールで再確認することもあると思うが、確認したければいくらでもそういったシチュエーションは作れるはずだ。全員が国内ローカルルールである6kmでプレーしなくてはならない点は、大局的な代表強化であったり、電動車椅子サッカー全体のレベルアップにもマイナスに働いているように思う。トップと裾野の差はもっと開いても良いと思う。
 例えば大会2日目ディビジョン2の試合の昼休みに、関東代表選手たちにより10kmルールのエキシビションマッチがおこなわれた。普段なかなか10kmでの試合を目にすることのない人々が熱心に見入っている姿がとても印象的だった。 将来的に10kmをやりたいと思う人もいるだろうし、やるスポーツとしては6kmで充分だが、観るスポーツとして10kmを見たいと思った人もいるだろう。
 個人的には簡易電動車椅子でもできるようなクラスがあってもいいのではいかと思っている。さらに裾野を広げて。バンパーもソフトなものにしてボールもスポンジで覆ったりして、お年寄りの方々も参加できるようにしてもいいのかもしれない。

 そして今週末(10月3日~4日)は静岡で全国大会が開催される。6kmルールで開催される大会だがしびれる試合もかなりある。6kmの好ゲームは手に汗握るような試合になることが多い。例えば昨年のNanchester United鹿児島とFCクラッシャーズの対戦はワクワクしつつ、本当に手に汗握るような試合だった。
 そして今年は1回戦からなんと昨年の決勝の再現、レインボー・ソルジャーとNanchester United鹿児島の対戦! 昨年は予選リーグもあり1試合で大会を終えることはなかったが今年は最初からトーナメント方式。どちらかのチームは早々と姿を消してしまう。これはしびれること間違い無し。昨年、死のグループに入り予選リーグで姿を消したYokohama Crackersや Red Eagles兵庫も当然優勝を狙っているだろう。とにかく見所満載!
 個人的には常々お世話になっているYokohama Crackersを応援しつつ撮影するということになります。
 
 会場は静岡県小笠山総合運動公園エコパアリーナ、いわゆるエコパのサッカースタジアム(専用ではないけれど)のすぐ近くだ。
 詳しい日程は日本電動車椅子サッカー協会のHP参照。当日の詳しい資料が出ている。
 http://www.web-jpfa.jp/event/index.html#m3

 そして全く同じ日程で日本ソーシャルフットボール協会(http://jsfa-official.jp/)の第1回全国大会が名古屋で開催。精神障害者のフットサルである。こちらにも是非行きたかったのだが、日程がもろダブりで行けなくて残念!来年予定されている国際大会には是非足を運びたい。

 そして10月17日~18日にはCPサッカー(脳性麻痺7人制サッカー)の全国大会が岐阜で開催。なんとか行きたいと思っています。