サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

初代女王はリヨン

2012年11月26日 | サッカー

大宮に国際女子サッカークラブ選手権の決勝を観に行った。
INAC神戸レオネッサとフランスのクラブチーム、オリンピック・リヨンの対戦。

昼間は手話の講演に行っていたので、試合会場にはぎりぎりの到着になってしまった。
観客は決して多くない。いやむしろ少なすぎる。
有料入場者数は4201人だった。
日本代表とフランス代表、スェーデン代表などがひしめき合っていて、Uー20女子ワールドカップよりはるかにレベルの高い試合が繰り広げられているのに。
TV中継もBSフジのみの放送だったようだし、世間的にもあまり注目されていないのが本当に残念。

INACの先発は、
GK海堀、DFは右から近賀、甲斐、田中明日菜、ベッキー。
中盤は、澤、チ・ソヨン、大野。
基本的に澤が中盤の底にいて、チ・ソヨンは下がってきてボールも裁くし中盤を動きまわる。
毎回思うのだが、チ・ソヨンは本当にいい選手だなあ。
FWは、右に川澄、左に高瀬、中央にゴーベル・ヤネス。
4・3・3かなあ。

リヨンの先発は、
GKサハ、DF右からジョルジュ、ルナール、アガー、ボンパストール。
中盤はアンリ、アビリー、ネシブ。
FWは右にトミ、左にルソメール、中央にシェリン。
中盤が逆三角形の4・3・3かなと思ったのだが、アンリとアビリーがボランチでネシブがトップ下の4・2・3・1なのかな。
とはいえ、ネシブも準決勝の時より随分下がり目に見えたが。
準決勝とは先発が4人異なっていた。
準決勝はボランチにブサグリアとアンリが入っていたが、決勝はアンリとアビリー。
より攻撃的な(たぶん)アビリーが先発だったのが注目点。
そのアビリーとチ・ソヨンが対面することが多く、このあたりが勝負の鍵を握るかも、などと考えながら観戦。
また右サイドバックは、準決勝で先発したフランコではなく、準決勝で途中からセンターバックに入ったジョルジュ。
なでしこリーグ得点王の高瀬を警戒して、より守備的に入ったのかもしれない。
INACは川澄の右サイドでチャンスメークして、左の高瀬が決めるというパターンが今季は多かったし。


最初の決定機はリヨン。
右FWのトミが裏に抜けて折り返し、触れば1点の場面。
トミはわかっていても速い。
しかし、それ以外の時間帯は神戸の左SBベッキーがかなり頑張って押さえ込んだいた。

神戸の試合を久しぶりに生観戦して思ったのは、ベッキーとゴーベル・ヤネスの進化。
ベッキーの守備は危なっかしい印象があったが、今回は安定していた。
ゴーベル・ヤネスも動きの質・量もいいし、ボールタッチも柔らかい。守備も頑張るし、シュートにも絡む。
川澄はベテランのボンパストールに押さえ込まれ、なかなか持ち味を出せないでいたが、
前半39分、その川澄が右サイドからグラウンダーのクロスを入れ、ゴーベル・ヤネスがヒール気味のシュート、こぼれ球をチ・ソヨンが強烈なシュートを決め、神戸が先制した。
チ・ソヨンの動き出しが良かった。マークしていたアビリー(たぶん)は、ボールウオッチャーになって、チ・ソヨンのマークを外してしまった。

後半に入るとリヨンの怒涛の攻めが続く。
リヨンは、選手交代も早かった。
後半頭から左FWにディッケンマン、後半6分には右サイドバックにフランコを投入。
後半16分にはボランチのアンリに代え、FWにトナッジを投入。
2トップにして1点を取りにきた。
ボランチにはネシブが下がり、アビリーとの攻撃的な二人。
リヨンがチャンスを作り出すが逆にバイタルエリアが空くことも多く、大野やチ・ソヨンが侵入、神戸もゴールに迫る。
しかし後半35分、長身DFルナールのロングフィードを右サイドバックのフランコがペナリティエリア内で1トラップ、左足でニアに蹴りこみ、神戸が同点に追いつかれた。

試合は10分ハーフの延長に入り、むかえた延長後半3分。
リヨンのトミが交代出場の高良を振り切り、右サイドをえぐって折り返す。
FWトナッジをマークしていた甲斐が反則をとられ、リヨンがPKを得る。
リヨンのキャプテン、ボンパストールがポストに当てながらゴールを決め、リヨンが逆転。
ボンパストールのPKも素晴らしかった。
左足でキックだったが、軸足は完全に左を向いているにもかかわらず、体をねじってコースは逆方向へ。

その後、神戸はチ・ソヨンに代え南山、ゴーベルヤネスに代え中島を投入、大野をトップにあげる。
一方のリヨンは疲れの見えるネシブに代えブサグリアを投入、守りを固める。

この大会は交代枠がなぜか3人ではない。
リヨンはその特別ルールをうまく使い4人の選手交代を行なった。
神戸は交代しようにも先発とサブの差があるという判断だったのだろうが、後手を踏んだ印象はぬぐえなかった。

しかしこの特別ルールはどうなんだろう。
準決勝はベストなコンディションで決勝を迎えるために特別ルールがあって良い様な気がするが、決勝は交代3人までで良かったのではないだろうか。
というか、この大会はいったいどういう位置づけの大会なのだろう。
好試合だっただけに釈然としないものが残った。
試合は本当に面白かったが。

ところで試合後インタビューがあり場内でも流されたが、もう少し具体的なことを聞けないのだろうか、というかもっとまともに質問できないのだろうか?
「試合の感想は?」「大会の感想は?」という質問だけなので、リップサービスのような受け答えにしかならないし、フランコ選手へのインタビューも頓珍漢だった。


繰り返しになるが、もっと多くの方々に生観戦してほしい試合だった。
こんな面白い試合を観ないなんて、もったいなさ過ぎだ。


ちなみにこの大会では、リヨン対ベレーザの準決勝、リヨンと神戸の決勝の2試合を観戦したが、ベレーザは、リヨンや神戸に比べて、球際で完全に負けている印象だった。
ワールドカップや五輪の経験の差ということになってしまうのだろうか?

 


ろう者サッカーの全国大会

2012年11月20日 | ろう者サッカー

先日の日曜日、「全日本ろう者サッカー選手権大会」観戦のため成田に行ってきた。
男子は11回目で、北海道、東日本、西日本、九州に分かれて優勝を争う。
女子は4回目の開催で、東西の2チームの対戦。

大会は土日と2日間行なわれたが、日曜日のみの観戦。
前日とは打って変わっての好天、しかしピッチコンディションはかなり劣悪。
かなりやりにくかったと思う。

男子の3位決定戦、女子決勝、男子決勝と、立て続けに3試合(正確には2試合半)を真剣に観たので疲れた。
もちろん選手たちはもっと疲れたはずだが。

男子の決勝は、東日本vs西日本の対決。
古島選手のハットトリックで、3対1と西日本が前回大会に続いての優勝。
西日本は守備が安定していたなあ。
終盤は疲れもあったのか、かなり裏を取られてたが。
両チームアタッカー陣は多士済々、来年のデフリンピックが楽しみ。

女子は、代表のキャプテンである西日本の大島選手が見事なミドルシュートを決め、1対0と勝利。4連覇を飾った。
大島選手はMVPも獲得。おめでとう。
それにしても目を引いたのは、濱田選手の進化。
技術もフィジカルも、戦術眼も意識も格段の進歩。
また初めて見る有望な選手もいたりと、代表の今後が楽しみ。
その他にも、フットサルに専念していた選手が久しぶりに復帰したり、フットサルの選手が初めてフルピッチでプレーしたりなど興味深いことも多かった。
選手によっては慣れないポジションでのプレーもあったが良い経験になったのでは。
女子もデフリンピックが楽しみ。


来年はデフリンピック開催年で選手権大会は開催されず、再来年は北海道で開催予定。


遠藤の『流し』は素晴らしかった!

2012年11月15日 | サッカー

日本代表=サムライブルーが2対1でオマーンに勝利し、ワールドカップ出場に王手!
暑い中、お疲れ様です。

しかし2点目は素晴らしかった。
酒井高徳が1対1で勝負、突破して折り返す。
遠藤がニアに詰め、柔らかなボールタッチでファーに流す。シュートではなく、あきらかに誰かが走り込んでくるのがわかった上でのボールタッチ!
もちろんファーには岡崎が詰めていて、見事なゴール!

早ければ、3月26日にもヨルダンでワールドカップの出場が決まる。
またしてもアウェイで、決まるのか?
フランスワールドカップはジョホールバル(中立地ですが)、ドイツワールドカップはタイ、南アフリカワールドカップはウズベキスタン。
一度も日本国内で出場が決まったことがない。

ところで国内組は、帰国早々、土曜日にJリーグの試合。
今回は国内組の方が大変なのかな。
遠藤と今野は残留をかけての戦いだ。


DEAF PEAPLE『ろう者の識字率を上げるために、あなたに出来ること』について

2012年11月14日 | 手話・聴覚障害

DEAF PEAPLE というサイトがあります。
聞こえない人のことがわかりやすく書かれている、本当にいいサイトです。
私自身も、そのサイトを見つけて以来、ずっと読んでいます。

本日、『ろう者の識字率を上げるために、あなたに出来ること』というタイトルで
新たにアップされていました。

http://deafathlete.blogspot.jp/

しかしこれは、知らない人に相当な誤解を与えるのではないかと思い、
あわてて書いています。

是非、ブログを読んでほしいのですが、
「なぜ、ろう者の識字率が低いのか?」
書き手の方は2つの原因をあげられています。
1 聞こえる人に比べて、圧倒的に情報量が少ない
2 (原文を引用)2つ目の原因は手話です。ろう者が使っている手話のなかに文法というものが存在していないからです。手話はジェスチャーに近い、ボディランゲージのようなもので、彼らにとっては、ごく当たり前で、自然なことです。文法というものを身に付けていないだけだと考えられます。

(注・その後、批判的な意見が多数寄せられたようで、かなりの部分を削除し、書き直してあります。2つ目目の原因の部分もすべて削除されています)


次に、私が考える「ろう者が日本語の読み書きが苦手な理由」を書きます。
一言で言えば、
日本手話を母語としている人にとって、日本語の読み書きは別の言語を読み書きすることになり、困難がともなう。
ということです。
もう一点付け加えるとすれば、ろう教育の弊害です。
過去、聾学校では、手話が禁止され、日本語の発音指導が延々と繰り返されてきました。
日本語の読み書きを習得するという点に力点がおかれた教育ではなかったということです。


補足説明します。
○識字について
まず識字とは私の解釈では、ある音声言語を母語(第一言語)としている人が、その言語の読み書きも出来るということです。
要するに、日本語をしゃべる人が、日本語の読み書きが出来る。韓国語をしゃべる人が、韓国語の読み書きもできる。
とまあそういうことです。
ですから、日本手話を母語にしている人にとって、日本語の読み書きは別の言語の読み書きにあたるわけで、識字という言葉は適当ではないと思われます。
しかし、書き手は確信的にその言葉を使われているようで、そのことは後述します。

○日本手話について
日本手話とは、とある文法体系を持った日本語とは別の言語です。
ジェスチャーやボディランゲージとは根本的に違います。
もちろん、そういった要素も含んではいます。
また、手話は国や地域によって異なります。


次に母語、第一言語、自然言語について書きます。
自然言語とは、特に苦労することもなく、自然に身につける言語のことです。
聞こえる日本人が、日本で育てば、自然の日本語(話し言葉)を覚え、それがその人にとっての母語、第一言語になります。
聞こえない、聞こえにくい人にとっての自然言語は手話でしかあり得ません。
聞こえない、聞こえにくい人が日本手話の環境で育てば、日本手話が母語となり、第一言語となります。
母語、第一言語は一つとは限りません。日本語と韓国語というバイリンガルもあります。
またコーダ(デフを親に持つ聞こえる人)の場合、手話と音声言語双方を身につけるバイリンガルの例もあります。

ところが、聞こえない、聞こえにくい人の中には、最初に日本語を覚えた人が多いのです。
その際、自然に身につけることができないので、かなりの訓練を要します。
つまり、自然言語ではない言語を第一言語としたわけです。
そういった困難、大変さがともないます。
おそらくサイトの書き手の方もこちらの例なのではないかと思われます。
ですから、識字という言葉を使われたのかもしれません。
また、最初に日本語を覚えた人の中にはかなりしゃべれる人もいます。
かなりしゃべれるというのは、健聴者にもわかりやすい発音でしゃべれるという意味です。
但し、しゃべるからといって聞こえるわけではありません。


つまり、聞こえない、聞こえにくい人は文章が苦手という時、
日本手話が母語の人と、日本語が母語の人と分けて考えなくてはならないと思います。

日本手話が母語の人にとって、日本語の読み書きは別の言語の読み書きです。
当然習得するのは大変です。
どんなに字幕が増えようが、読めない、あるいは読むのが苦手な人もいます。
もちろん日本手話が母語の人の中にも、流暢に読み書きできる人はいます。

日本語が母語である人にとっても、耳からの情報が限られているため、読み書き(書記日本語)が苦手な人も多いです。
前述しましたが、サイトの書き手の方もこの例なのだと思います。
彼女は努力を重ねて、かなりの文章を書けるようになった。
だから是非、同じような立場の人にも努力してそうなってほしい。
ある種のもどかしさから、おそらく批判なども覚悟のうえで書かれたのでしょう。
日本語が母語である人に向けては、ある種の説得力があるとは思うのですが、
誤解をあたえてしまう、あるいは書き手自身が誤解しているのではないかと思う点もあり、書き連ねました。
ただ、聞こえない、聞こえにくい人にとって、日本語の読み書きを苦にしなければ、現在の日本社会において職業などの選択の幅が広がることは確かです。
現代の聾教育のおいても、書き言葉(書記日本語)の習得がもっとも大きなテーマの一つになっています。
ただその習得方法には様々な議論があります。

この文章を読み進めて、余計わからなくなった人もいらっしゃるかもしれません。
具体的なことを少し書いておきます。
ろう者が文章が苦手という時、何が苦手なのかいうと、一例をあげると、助詞の使い方です。
日本手話と日本語は文法が違いますから、日本語の助詞に戸惑い、うまく使えないことが多いのです。
その際、耳からの情報が少ないため、間違いをなかなか訂正できません。
聞こえる人であれば、助詞の使い方に迷った時に、ぶつぶつとつぶやいてみて、音としてしっくり来る助詞を選ぶことも出来ますが、聞こえない、聞こえにくい人にとっては難しい点です。
それから漢字の音読み、訓読みです。
漢字は表意文字なので、むしろ、ろう者の子供の方が関心を示すということもあるようですが、音読み、訓読みの使い分けは、耳からの情報が少ない分、とても苦労するようです。

本当はもう少し推敲してアップした方がよかったかもしれません。
あわてて書いて、不備な点もあるかと思います。
またサイトの書き手の方には失礼な書き方になった点もあるかもしれません。
是非、ご指摘ください。

聞こえない、聞こえにくい人々のことが、まだまだ正しく伝わっていないのではないか、
日々、そう感じています。
誤解が誤解を招く、そいういったことも多いように感じます。
もちろん私自身も知らないことも多いのですが、わかり得る範囲内で発信していきたいと考えています。