ブラインドサッカー日本代表はイランと0-0で引き分け、自力でのリオパラリンピック出場権獲得の可能性が消滅した。
なんだかあの時と似てきた。そう、フランスワールドカップアジア地区最終予選だ。ブラインドサッカー版ドーハの悲劇が4年前の宮城でのイラン戦だとすれば、今予選は自力突破の可能性がなくなりながらもワールドカップ初出場を決めたあのフランスワールドカップアジア地区最終予選。サッカーの神様がA代表と同じようにブラインドサッカー日本代表にも試練を与えたということなのだろうか?
その後の歓喜をより大きなものとするために。
例え話はともかく現実に話を戻すと、今後日本は韓国・インド・マレーシア戦に全勝し勝ち点を10に伸ばすことが最低条件となる。そしてイランが日本同様中国に敗れると勝ち点で日本に並ぶことになる。そうなれば得失点差で上回ったほうがパラリンピック出場権獲得である。そう考えるとインド、マレーシア相手への大量得点が求められる。ちなみにイランはマレーシアに5-0で勝っている。
具体的なスケジュールにそって考えると以下のような感じ。
4日(金)
17:30 イランvsインド がんばれインド! 負けるにしても0-1とか0-2くらいでなんとか踏ん張って!
19:30 韓国VS日本 日本の勝利あるのみ!
5日(土)
14:30 イランvs中国 中国勝てよ。引き分けもダメよ。
17:30 日本vsインド 日本の大量得点差勝利あるのみ!
6日(日)
17:30 韓国vsイラン この日ばかりは韓国を応援。引き分けでいいから頑張って。
(もしイランが中国に勝利していた場合は)韓国お願いします。勝ってください。
心の底から応援します。ホントです。
19:30 日本vsマレーシア 得失点差をにらみながらの勝負。消化試合となっていないことを祈る!
つまり1試合たりとも楽な試合はないわけだ。
イラン戦をごく簡単に振り返っておく。
まず練習で注目していたのはイランのGKメイサム・ショジョイヤン。細身なんだけどとにかくでかい!しかし無駄な動きがなく足元にも強くゴールを奪うのはかなり難しそう。4年前のイランのGKはパワフル系でエネルギッシュな選手だった記憶があるが、なんだか全然違うタイプである。ブラインドサッカーは、晴眼者であるGKが勝敗に直結する要素がかなり大きい。
日本の先発メンバーは、初戦の中国戦でスターティングメンバーだった黒田智成(クロ)に代わり加藤健二(カトケン)が入った。
試合が始まり日本、イラン両チームを見てまず思ったのは、やはり中国は一つ格上だったのかなということ。それはともかく日本の守備力は4年前に比べると格段に進化し安定しているので、あまりイランにゴールを奪われそうな感じはない。最終ラインに立ちはだかるアキ(田中章仁)の守備は相変わらず素晴らしいし、体を張ったロベルト(佐々木ロベルト泉)の守備も心強い。ファーストディフェンダーとしてのリョウ(河村玲)の進化も目覚ましい。もちろん偶発的な一発は怖いのだが。
そうなると日本がどうやってイランゴールをこじ開けるか?
この試合で可能性を感じさせたのはトモのドリブルシュート、そしてコーナーキック(CK)である。前半終了間際の右CKではトモ、カトケン、ロベルトの3人があがる。屈強なロベルトが相手選手をガードし空けたスペースをトモが中央へドリブル、ゴール左隅に強烈なシュートを放つ! しかしイランGKショジョイヤンが弾き出す。実に惜しい場面だった。試合前の練習で難なく弾き出していたコース、スピードであったこともまた確かである。
後半に入り日本は何度かシュートまでは持ち込むものの、GKショジョイヤンの牙城を崩すこととはできずスコアレスドローに終わった。
アジアの2強との連戦、連勝できれば一番よかったのだろうが絶対に避けなければならなかったのが2連敗。一敗一分けはおそらく想定内だと思う。もちろん想定したなかでは最悪パターンではあると思うが。
観る側からするともっと攻撃的にいく時間があってもいいのではないか、不満の残る2連戦でもあったかとは思う。今後は勝つしかない試合が続く。歓喜のゴールも何度か見れるだろう。いや何度かでは足りないはずだ、幾度ものゴールが必要だ。もっともっと・・。
ところでイラン戦はサムライブルーと同日開催、しかも雨。前日の中国戦のように満員にはならなかったのは致したかたのないところだった。しかし前日満員で入れなかった人も応援にかけつけた。前日入れなかったろう者サッカー・フットサルの女子選手はブラインドサッカー初観戦だったそうだ。中途難聴で車いす利用者の知人は初めてサッカーを生で見たそうだ。初めて生観戦したサッカーがブラインドサッカーだったというわけだ。
ブラインドサッカー協会のビジョンは、「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」である。
大会1日目、2日目と観客席では視覚障害者、各障害者サッカー関係者、サッカーバカ、たまたま興味を持った人、その他いろいろな人々が混ざり合い始めている。そういった貴重な空間になりつつある。
その場に一度も来ないのはもったいなさ過ぎる。