サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

特別支援学校(知的障害)野球部 の甲子園予選生観戦

2024年07月08日 | 野球

東京都の青鳥特別支援学校が、知的障害の特別支援学校としては(ろう学校は以前出場したことがある)、初の単独チームでの甲子園大会予選出場となった歴史的な一戦を生観戦した。

そもそもこの試合のことはNHKの報道で知ったのだが、映像を見た際、おそらくコールド負けするだろうなというチーム力にしか見えず、「何でいきなり硬式? 軟式じゃダメなの?」もっと言えば(元高校球児としては)「硬式なめんなよ」と疑問がわき、まずは青鳥野球部久保田監督の著書を2冊、先月出たばかりの新刊「待ってろ甲子園(日比野恭三)」を読んで久保田監督の並並なら思いを知り、とにかく歴史的な一戦を観ておこうと猛暑の中、八王子の球場まで行ってきた。

久保田監督の思いをごくごく簡単にまとめると、大学まで硬式野球をやっていた久保田監督は高校野球の監督になろうと教職についたが養護学校(現在の知的障害の特別支援学校)へ配属。失意の後、ソフトボールの強豪チームを作り上げたり、社会人野球のコーチや監督を務めたものの、退職前に甲子園へつながる硬式野球部をなんとか設立しようということで現在に至る。

14時試合開始の予定だったがプレイボールは15時20分。14時前後に比べると暑さは若干和らいだがまだまだクソ暑い。

先攻は東村山西高校。青鳥の先発は3年生首藤理仁、捕手は2年生左利きの後藤浩太。キャッチャーの人選にも苦労があったようだ。
並みの守備力のチームであれば、ライトフライ、ピッチャーゴロ、サードゴロで三者凡退となるところだったが、実際は3人終えた時点で2失点。なんとか4番の外野フライはレフト熊谷がグラブにおさめて1アウト。続く5番は岩本へのショートライナーで2アウト!観客席からは拍手喝采!
しかしその後ヒットやエラー、盗塁が続き、初回に11点を取られてしまう。しかし首藤は四球を1個も出さず、スリーアウト目はレフト熊谷への外野フライだった。

1回裏青鳥の攻撃は先頭打者岩本がライト前クリーンヒットを放つ! 塁上でのリードも大きく、1年生ながら攻走守に渡って非凡な野球センスを感じさせる。しかし2死後、けん制アウト。高校野球人生のほろ苦いスタートとなった。

応援席からは関係者の皆さんとともに、八王子実践の野球部員たちも大挙駆け付け応援。昨年は部員が少なく青鳥は合同チームで大会に出場、その際、八王子実践とは秋季大会で対戦していた。

2回表はセカンド八木が2つのフライを掴んで2アウトをもぎ取ったが、その前後、外野の間を抜けたりエラーしたり後逸したりで、ランニングホームラン5本が飛び出してしまう。
捕手後藤は「外野、後ろいったら全力で追って、全力で!」と懸命に声をかける。
この時点で首藤は打者23人に相対し17失点。既にかなりの球数を投げていた。
首藤は24人目の打者への投球後、足が攣り、いったんベンチに引き上げる。だが続投できずショートの岩本がマウンドに立ち、セカンドフライで後続を断った。
この回のアウトは全てセカンド八木へのフライだった。

2回裏、6番熊谷はセカンドゴロを放つが3者凡退。

3回表岩本は、エラーなどもあって打者14人で1アウトも取れず14失点を喫してしまう。次の打者でセカンド八木がゴロでの初めてのアウトを取ったが、次のアウトが遠い。
「はたしてこの試合は終わるのだろうか?」そんな疑問も頭に浮かぶ。 
このままコールド負け(公式戦を成立させる)するための、8個のアウトが取れるとは思えない。岩本のどこかが壊れてしまうのではないかという勝手な心配もよぎる。

さらに4点を奪われ四球を与えたところで、「それしか選択肢はないだろう」と、ショートのポジションに入っていた首藤が再びマウンドに立った。
そして初の三振を奪う。次打者はセカンドへのイレギュラー気味のバウンドが右中間を抜け失点してしまったが、その後のバッターからも空振り三振!
ピッチャーが代わり、タイミングが取りづらかったのもあるだろうが、いい球がきていたようだ。
3回は21失点、3回を終えて38-0。

3回裏、青鳥の攻撃、9番三上がセカンドゴロを放つが3者凡退。

3回を終えたところでクーリングタイム。通常は5回を終えたところだが、この試合は5回までであることが明白であった。審判は投手に水分摂取を進めたり、回の途中でも選手をベンチに引き上げさせたり、臨機応変に的確に試合を進めていた。

再開後の4回表、東村山西は打者19人で15点。アウトはレフトフライ、ライトフライ、ファーストゴロだった。
ライト三上は西日のまぶしさもあり、それまでなかなか捕球できないでいたが、グラブにおさめて拍手大喝采。
この時点で53-0のスコア。

4回裏、青鳥は三者凡退。

そして5回表、首藤は残る力を振り絞って18人の打者に相対し、三振三つ(振り逃げ一つを含む)とピッチャーフライで投げ切った。

5回裏、青鳥はこれまで出番のなかった選手たちが代打に立つ。最初は3年生キャプテン白子、試合中は選手たちに声をかけ、ペットボトルをマウンドに運んだ。東村山西はエースナンバーの投手が登板、快速球を投げ込んでくる。「どうせなら見たこともない快速球で三振したほうが良いのではないか」と勝手に思っていると3ボールとなってしまう。しかしその後の3球で見事に三振。おそらく一生忘れらないボールの軌道、三振となるであろう。
その後の代打2人も三振でゲームセット。66-0で試合を終えた。試合時間は3時間を越え、照明塔にも灯がともされた。

ヒットは青鳥が1本、東村山西が55本。だが4割ほどは並のレベルの高校野球部ならアウトだっただろう。盗塁は手元の集計では30個走られた。捕手後藤はよく捕球した場面も目立ったが捕逸も多かった。


そんななか首藤は延べ62人の打者、200球近く投げただろうか(球数はカウントしていなかった)。
首藤がいなかったら試合が成立していなかったことは間違いないだろう。回復の時間を与えてくれた岩本のつなぎも貴重だっただろう。

またこの試合は東村山西高にとっても簡単な試合ではなかっただろう。バッティングのタイミングもそうだろうし、次戦につなげるためには集中力を欠いてはならないし。

この試合は野球の残虐性も感じられる試合だった。
時間制のスポーツ、サッカーやバスケット、ラグビーなら、どんなに点差をつけられても時間がくれば終わる。
逆にバレーなどのネット型スポーツなら、あっという間に終わってしまう。しかし野球は負け試合を自力で終わらせなくてならならない。

とにかくこの試合は歴史的な第一歩となる試合だったことは間違いない。青鳥野球部に続こうという学校も出てくるかもしれない。だが簡単ではないだろう。硬球を投げ、打ち、捕るのは簡単ではない。継続していくことはさらに簡単ではないだろう。
もちろん特別支援学校野球部が予選に出て、勝ったり負けたりすることが日常となるのが理想だが。

当面継続していくためには、最低でも首藤クラスのピッチャーがいないとなかなか難しい。青鳥野球部も首藤なき後の投手育成が課題となるだろう。守備力はおそらく1年後には飛躍的に進化しているだろう。

来年も是非観戦したい。


電動車椅子サッカーからボッチャへ転向 パリパラリンピック出場を決めた有田選手の映像

2024年06月01日 | ボッチャ
かつて電動車椅子サッカー選手だった有田正行さん。2011年パリで開催されたW杯では得点王にもなった。しかし有田は2017年(開催地変更で2年延期)アメリカW杯への出場は叶わず、妻の千穂とともに別の競技で世界へ挑もうとボッチャに転向した。
東京パラリンピックにはぎりぎりのところで出場を逃すものの、パリパラリンピックへの出場権を得た。
その過程を映像で振り返りました。
是非ご覧ください。20分ほどです。
撮影、編集しました。


ソーシャルフットボール全国大会の記事

2024年04月27日 | ソーシャルフットボール

4月13~14日の2日間、SAGA2024「第23回全国障害者スポーツ大会」オープン競技として第5回ソーシャルフットボール全国大会が開催され、取材に行き、Paraphotoに記事を書きました。
ソーシャルフットボールは精神障害を抱えた人のフットサルです。
是非、ご一読ください。

https://www.paraphoto.org/?p=39521


ボッチャ「火ノ玉JAPAN」 BC3クラス有田正行・一戸彩音ペア パリパラ切符獲得の記事

2024年04月27日 | ボッチャ

少々時間が経ってしまいましたが、ボッチャ「火ノ玉JAPAN」 BC3クラス有田正行・一戸彩音ペアがパリパラリンピックへの切符を手にした記事をParaphotoに書いています。
ポルトガルで開催されたボッチャパラリンピック予選には行けませんでしたが、帰国時の羽田空港へ取材に行きました。

https://www.paraphoto.org/?p=39466

 


火ノ玉JAPAN BC3 有田、一戸ペア パリパラリンピック出場権獲得!

2024年03月27日 | ボッチャ
ボッチャ火ノ玉JAPAN BC3有田正行、一戸彩音ペアは、ポルトガルで開催中の「Coimbra 2024 World Boccia Paralympic Qualification Tournament」準決勝でギリシャに8-0で勝利、パリパラリンピック出場の条件である3位以上が確定し、バリパラリンピック出場権を獲得した。

有田、一戸ペアは、予選でイタリアに6-7、ポーランドに 2-3と連敗したが、その後、コロンビアに7-2、スウェーデンに5-0と連勝、プールB2位となり準決勝に進出。
準決勝ではランキング上位のギリシャにミスが見られたのに対し、日本は正確なショットを連続、スーパーショットも飛びだし8-0で完勝した。

有田選手、一戸選手、ランプオペレーターの有田千穂さん、一戸賢司さん、おめでとうございます!


ボッチャ パリパラリンピック出場権をかけた大会開幕

2024年03月24日 | ボッチャ

ボッチャのBC3、BC4クラス、パリパラリンピック出場権をかけた最後のチャンス「Coimbra 2024 World Boccia Paralympic Qualification Tournament 」がポルトガルのコインブラで開幕。
日本からは、BC3ペア有田正行、⼀⼾彩⾳、BC4 ぺア江崎駿、唐司あみが参加。
本当は私も行きたかったのですが、散々考えて断念しました。

BC3クラスのレギュレーション、試合日程等を整理しておきます。
大会には10か国が参加し、2つのプールに分かれ上位2チームが準決勝に進出、3位以上が出場権を獲得。

プールA
ギリシャ(6)、ポルトガル(11)、ペルー(14)、シンガポール(15)、イギリス(17)
プールB
ポーランド(8)、コロンビア(10)、日本(12)、スウェーデン(16)、イタリア(19)
*( )内はペアのランキング。個人ランキングは有田が13、一戸が11。


試合日程は以下、いずれもペア戦です。時間は日本時間。
24日(日)  第1戦 深夜26時45分~(翌2時45分) 日本ーイタリア コート2

25日(月) 第2戦 21時45分  ポーランドー日本 コート3
      第3戦   深夜26時45分(翌2時45分) コロンビアー日本 コート3

26日(火)第4戦 21時45分 日本ースウェーデン 

     2位以上の場合、準決勝進出
     準決勝 深夜26時45分(翌2時45分) 

27日(水)3位決定戦 21時30分  コート1
     決勝  深夜26時10分(翌2時10分)コート1

配信はあるようですが、全試合あるのか、どこかのコートだけがあるのかよくわかりません。
3位決定戦、決勝は間違いなくあると思います。
https://www.youtube.com/channel/UCT2JNO-JgFrR9UZeq9dvQ2w

是非、3位以上となり、パリパラリンピック出場権を獲得してほしい!

(追記)
別のクラスですが、コート1の試合が中継されています。
コート1のみの中継でしょうか。そうすると少なくとも3戦までは中継無しか?


デフリンピック滞在最終日 男子フットサル代表銀メダル獲得

2024年03月13日 | デフリンピック

トルコ・エルズルム冬季デフリンピック滞在最終日は男子フットサル決勝の日。
男子の優勝を見届けてから帰国する旅程を組んでおり、通い慣れた会場へ向かう。
3位決定戦はブラジルがスペインを破り、銅メダルを獲得した。

その後、日本対イラン戦の決勝。競技を終えた他競技の選手たち、選手団のスタッフ、そして女子フットサルの選手たち、いつものご家族が続々と集まってくる

日本の先発はピヴォに野寺風吹、アラは鎌塚剛史と東海林直広、フィクソに坂本大起、ゴレイロは斎藤基貴。設楽武秀、折橋正紀はベンチから応援するしかなかった。

先制は日本。2分、坂本が右サイドを素早く持ち上がり、イランのフィクソ10番が対応するよりも早く右足を振り抜いたシュートがニアの上隅に突き刺さる。
日本は幸先よくスタートした。

だがこのまま終わるイランではない。
「ごつい、高い、速い」3タイプのピヴォを使い分けて、日本に揺さぶりをかけてくる。フィクソのポジションに入る坂本や東海林は様々なタイプのピヴォへの対応を余儀なくされる。ごつい11番は強靭なフィジカルで反転してからのシュートも速い。高い8番は長い手足で懐の深いキープをする。速い6番は動き回ってスペースを作り出す。

しかし日本は斎藤がシュートストップし、簡単にはゴールを許さない。
日本も8分には左サイドでパスを受けた宗澤麟太郎が上手く入れ替わりシュートを放つが、イランのゴレイロの素早い飛び出しに防がれる。
13分、イランゴレイロからのスローが日本のゴールネットを揺らすが、1タッチはなくゴールは認められず胸を撫でおろす。
15分、左サイドで本多将起が土屋祐輝とのワンツーで抜け出し飛び出してきたゴレイロもかわすが、惜しくもゴールラインを割り得点には結びつかない。

その後のイランのシュートは斎藤が弾き出し、両チームが負けじと攻め合う展開が続くが、17分、懐の深いピヴォ8番への対応に苦慮、イランにPKを与えてしまう。
そしてPKをイランの小柄な5番に決められ、日本は同点に追いつかれた。

第1ピリオド終了間際、勝ち越したい日本は、東海林のポストプレーから右サイド鎌塚、左サイド坂本と1タッチでボールが動き、ゴール前に走り込んだ東海林が合わせるが、惜しくも枠を外れ、1-1の同点で第2ピリオドをむかえる。


第2ピリオド2分、日本は再び大きなチャンスを作り出す。
左サイド野寺から右の坂本へ展開、坂本の切り返しての左足シュートはゴレイロに防がれるも、こぼれ球に反応した野寺がシュート。しかし惜しくもクロスバーを叩く。
その直後 横パスをイランに奪われ5番がそのままドリブルで前進、ゴールを決められイランに逆転を許してしまう。

なんとか追いつきたい日本だったが、14分、イラン左サイドでパスを受けた5番が1トラップしてシュート、3点目を奪われ1-3とリードを広がられる。 
その後、日本はパワープレーに出て、まずは1点を取りにいくが、なかなかイランの頑強なブロックを崩せない。イランもマイボールになると、ゴレイロが上がりパワープレーに出て時間を使う。

もどかしい時間が過ぎ、ついにはタイムアウト。
イランに1-3で敗れ、世界一、金メダル獲得はならなかった。

昨年のW杯で史上最高位の3位となり、今大会は2位の銀メダル。
次こそは世界一、金メダルを獲得してほしい。

尚、決勝を裁いたレフェリーはデフの2人。日本を応援する立場からすると「えー」と声を上げることもあったが、冷静に考えると的確なレフェリングだった。

ということでトルコ・エルズルム滞在も終了。
現在イスタンブール空港でトランジット中、これから帰国します。
にわか勉強した国際手話も少し使う機会があり、やっておいて本当に良かった。


設楽選手に銀メダルを首にかけてもらいました。ありがとう!


女子フットサル最終戦PK戦勝利 デフリンピック滞在8日目

2024年03月12日 | デフリンピック

トルコ・エルズルム冬季デフリンピック滞在8日目は、女子フットサル5位決定戦のポーランド戦。

最後は勝って大会を締めくくってほしいと願いつつ会場へと向かう。

 《手作りの応援グッズ 裏面には選手個々の写真が入っている》

順位決定戦は中継も無く、どこか閑散とした雰囲気が漂う。
だがもちろんコート上では熱い闘いが繰り広げられた。
ポーランドはキックオフからいきなりパワープレーに出る奇策。選手も目まぐるしく交代し日本を揺さぶる。
そして3分、ポーランドが前線でボールを奪うと8番がゴールを決め、日本は先制されてしまう。

その後もポーランドの時間帯が続くが、日本は追加点を許さない。
中井香那が一度は切り返しで抜かれるが再び追いすがりブロック。ポーランドのピヴォ13番の反転シュートは國島佳純が弾き出す。
そして日本もようやくチャンスを作り出す。
右サイドからの宮田夏実のミドルシュートをゴレイロが弾いたところに宮城美来が詰めるが惜しくもゴールにはならない。
ポーランドは、マイボールになるとパワープレーでボールを回し時計を進める。
13分、日本はポーランド6番に2人で詰めるがゴール前にボールを出され13番に決められ、2点のリードを許してしまう。

第2ピリオドに入ってもポーランドはパワープレーを織り交ぜながら攻め込んでくる。
開始早々にクロスバーに助けられヒヤリとする場面もあったが、日本はポーランドの戦略にも徐々に対応、セットプレーからのシュート等、ポーランドゴールに迫る場面も増えてくる。
そして4分、宮田の左CKから酒井藍莉が直接蹴り込み日本は1点を返す。

その後も中井のポストプレーから酒井のシュート等の好機が続き、9分にはポーランドのハンドで日本がPKを獲得、阿部菜摘がきっちり蹴り込んで日本は同点に追いつく。
第2ピリオド終了間際には阿部から左サイド酒井、中央の桐生玲奈へと流れるようにパスがつながるが惜しくもゴールならず、逆にカウンターを受けるも凌いで、試合は延長戦に入った。

延長前半3分、第2PKを得るが阿部のキックはポストを叩く。
後半にはパワープレー返しの惜しい場面もあったが、決着がつかず勝負はPK戦へともつれ込む。

まずはポーランドの1人目を國島が止める。日本は、阿部、中島梨栄、酒井、岩渕亜依と4人が成功。
そしてポーランド5人目を國島が止めて渾身のガッツポーズ! 
日本はPK戦を制して5位となった。



國島は満身創痍で日本のゴールに立ちはだかった。その姿を頼もしく見ていたのは、今大会では控えに回ることが多かった芹澤育代。國島が、自分を越える後継者として育ってきたことで、心置きなく代表から離れることができるだろう。
芹澤や川畑菜奈、中島梨栄、中井香那はデフフットサルの源流であるデフサッカー女子日本代表の第一世代。
個々の去就に関して、きちんとは聞いていないが、まずは「本当にお疲れさまでした」と心から言いたい。
彼女たちは2009年台北デフリンピックで世界の壁をいやというほど思い知らされた。号泣する者もいた。
そんな彼女たちは昨年W杯で世界一に上り詰めた。その場にいなかった後悔から今回トルコへ渡航、世界と渡り合う姿を眼に焼き付けることができて本当によかった。

そして2013年ブリガリアデフリンピックでなす術もなかった岩渕亜依、酒井藍莉、宮田夏実は今やチームの中心中の中心。
今後は東京デフリンピックへ向けてサッカーに軸足を置いていくのだろうか。
その少し後に入ってきた阿部菜摘、桐生玲奈も今やチームの大黒柱だ。
宮城実来、山崎優子は今後どんどん成長曲線を描いていくことだろう。

山本典城監督の去就はわからないが、本気で世界一を狙うチームを作り、そして実際世界一を勝ち取った功績は素晴らしいものだった。

今大会、もっと良い成績を残せればよかったが、そう簡単にいかないのが勝負の難しさ。
スペイン、ブラジル、日本が同一グループに入るという不運(あるいは不可解?)なこともあった。5位決定戦の後は、イギリスvsドイツの3位決定戦。4-3でドイツが勝利し銅メダルを獲得した。
この両チームには、日本は勝つだろうなと(勝手に)思いながら観ていた。

決勝はブラジルvsスペイン。
スペインフットサル代表にも選ばれている選手がいるスペインが、実力的にはやはり上で、4-2と勝利したスペインが金メダル、ブラジルが銀メダルとなった。
試合はブラジルサポーター(男子選手等)が抗議し、一時は中断する荒れた試合に。
表彰式の場面でも抗議の拳を上げていた。
確かな情報を得ていないので抗議の内容はここには書かないが、問題点を残したことは間違いない。
ちなみに現時点で決勝の映像は削除され、観ることができなくなっているようだ。


《抗議の拳を上げる、あるいは金メダルのスペイン代表選手(手前)に対して背を向けるブラジル選手たち》

(追記)どの立場の誰かは分かりませんが、人種差別的な表現があり、そのことに対する抗議行動だったようです。

 


男子フットサル決勝進出! デフリンピック滞在7日目

2024年03月11日 | デフリンピック

トルコ・エルズルム冬季デフリンピックは滞在7日目は、男子フットサル準決勝スペイン戦。
そのスペイン戦の前に行われるもう一つの準決勝イランvsブラジル戦も観たくて試合会場へ。
近い方の会場での試合だがバスで行くと時間が読めないので、タクシーにて向かった。
会場はエルズルムテクニカルユニバーシティの施設、つまりエルズルム技術大学。ちなみに筑波技術大学は聴覚障害・視覚障害者が通う大学だ。

昨年11月開催のデフフットサルW杯優勝国イランが、序盤からブラジルを相手に試合を優位に進める。
イラン選手、特にピヴォの選手は体がごつい。6分、そのピヴォ11番がゴレイロからのスローを受けて反転してからの強烈なシュートが、ゴールネットを突き刺しイランが先制。
10分、ブラジルのゴレイロがドリブルで持ち上がるが、ボールを奪われてゴールに蹴り込まれイランに2点目が入る。
さらに17分に3点目をあげたイランがブラジルを寄せ付けず、そのまま3-0で勝利し決勝に進んだ。
イランは強靭はフィジカルのピヴォ達、こちらも強靭な体幹でほぼ出ずっぱりのフィクソ10番を中心に、運動量のあるアラが走り回り、ゴレイロは反応もよくパワープレーとなると自らが上がる。



そして日本とスペインの試合が始まった。
観客席には日本選手団関係者、他の競技の選手たち、そして選手のご家族(1家族です)、そして私。女子選手たち試合の開始時間が遅いということもあって明日に向けてホテルで備えているはずだ。
日本の先発はピヴォに野寺風吹、アラは右に鎌塚剛史、左に東海林直広、フィクソ坂本大起、ゴレイロに折橋正紀。設楽武秀はこの試合出場を回避したようだ。

スペインはやはりスペイン、ボールを回して相手の隙を窺う。生観戦したカタールW杯スペイン戦を思い出したりする。
10分を過ぎたあたりから、日本は立て続けに危ない場面を迎える。
ピヴォへの縦パスをカットされ、それが裏への浮き球のパスとなりループシュートを打たれるも野寺がカバーし難を逃れる。
続いてのスペインのCKにゴール前で合わせられるがゴレイロ折橋がかろうじて弾き出す。
その後もボールを回すスペイン。ギャップでパスを受けた選手がタメて左サイドから裏へ抜ける選手へ、ゴレイロ折橋も抜かれるが最後は坂本がゴール前で体を張り得点を許さない。
さらにゴール前の浮き球のパスからのループシュートでひやりとさせられる。
そうして迎えた19分。坂本の右CKを鎌塚が直接蹴り込んで、日本に貴重な先制点が入る。
いい時間帯でのゴールだった。

ハーフタイムにいろいろと修正もあっただろうか、日本の1点リードで第2ピリオドをむかえると日本はスペインにボールを回させても中には入らせない。
体を張るべき場面では体を張る。
残り8分ほどになり、スペインはパワープレーに出る。しかし日本は隙を与えない。
残り5分、ルーズボールを野寺が右サイドに持ち出し抜けようとするとスペインの8番がファールで止め、レッドカードが出される。そのまま抜け出していたら無人のゴールが待っていたのだから退場は当然だろう。
ちょうど6つ目のファールとなり第2PKを得ることになった。
その第2PKを鎌塚が決めて日本が2-0とリードを広げた。鎌塚はこの試合2点目。
選手のご家族が「今日は鎌の日」というかけ声が印象的だった。
そしてタイムアップ。日本がW杯を通じて初の決勝進出を果たした。
これまでの最高位は昨年W杯の3位。前述のイランと、初代デフリンピック金メダルをかけて決勝を戦う。

決勝は12日(火)12時30分(日本時間18時30分)~
https://www.youtube.com/live/XoWioUpkkIM?feature=shared


男子フットサル日本代表の合宿にはそれほど行けていなかったのですが、藤井監督が就任して初めて見学させていただいた合宿の際には、女子代表の進化に比べると少し遅れているのでないかという印象を持ちました。
今は本当に隙のない良いチームに仕上がっている印象です。私が言うのもおこがましいですが。
是非是非、この機会に世界一を勝ち取ってほしい!


*応援に集中していて写真をほとんど撮っていませんでした。


デフリンピック滞在6日目 フットサル女子トルコを下し5位決定戦へ 

2024年03月10日 | デフリンピック

トルコでの冬季デフリンピック、エルズルム滞在も6日目。
今日は女子フットサル順位決定トーナメント日本vsトルコ戦。
こちらの生活にもだいぶ慣れてきて路線バスでスムーズに移動できた。
この会場へのバス移動はタクシー代の5%程度で済む。

トルコは他グループで4位だったチーム。公式記録は1勝4敗 勝ち点3 得点9 失点25 得失点差-16。
しかし5位のケニアは大会に参加しなかったため、実質的な記録は 0勝4敗 勝ち点0 得点4 失点25 得失点差-21である。
試合前の練習を見ただけでも地力の差は明らかだった。



この試合には前日の激闘を制しベスト4進出を果たした男子選手たちも応援に駆け付けた。
日本の先発は過去2試合と同じく、ピヴォに中島梨栄、アラに酒井藍莉、桐生玲奈、フィクソに阿部菜摘、ゴレイロに國島佳純の布陣。
試合開始早々、酒井のトーキック気味のシュートが右ポストをかすめて日本が先制する。

ゴールラッシュかと思いきや、そうはうまくはいかない。
トルコは切り替えも遅く、日本3人対相手ゴレイロ1人という局面もあったが決めきれない。
一方ゴレイロの國島は落ち着いたプレーでトルコのシュートを防ぐ。
9分、岩渕亜依が自陣からのロングシュートを放つが、がっちりした体躯のトルコのゴレイロが後方にジャンプし弾き出される。
その後も日本はゴールを決めきれない。
宮田夏実の左CKに川畑奈菜が合わせるがポストに嫌われ、18分中井香那が川畑とのワンツーでゴール前に飛び込むも届かず、追加点は奪えず1-0でハーフタイムをむかえた。
トルコが頑張って守ったというより、日本がバタバタしていて、どこかちぐはぐで空回りしているように思えた。

トルコは第1ピリオド途中からゴレイロが上がる形のパワープレーをしかけてきていた。
第2ピリオド2分、國島がボールをキャッチすると、落ち着いて、間を持って、相手の無人ゴールに的確に蹴り込んだ。
日本がパワープレー返しで2-0と追加点をあげる。
3分、酒井の左サイドからの折り返しを中島が決めきれない。
9分、宮城実来のパワープレー返しで3-0とリードを広げる。
11分、酒井が相手ゴレイロと1対1となり、相手の動きをよく見てゴール左隅に決め4-0。
15分には中井がゴレイロとの1対1からゴールに流し込んで5-0。
その直後、トルコのゴレイロは交代。マイボールになると上がってパワープレーをしかけ、へとへとになっていたようだ。
そして終了間際、トルコのゴレイロがエリア外で手を使う反則で得た直接FKを、阿部が豪快に蹴り込み日本は6-0で勝利した。

スコアだけ見ると快勝のように思えるが、日本の力を出しきれていないモヤモヤした試合だったように感じた。あくまで私見だが。

次戦は最終戦5位決定戦、相手はポーランド。ポーランドはグループリーグでイギリスに4-6、ドイツに3-6、トルコ6-2、順位決定トーナメント第1戦でアイルランドを3-1で下している。

ポーランドとの試合は大会の最後という意味のみならず、現役最後の選手もいるであろう、大会後はサッカーに軸足を移す選手もいるだろう。山本監督が今後どうされるのかはわからないが、いろんな意味で大きな区切りとなる試合となる。

是非とも、これまで培ってきたものをすべてピッチで表してほしい。

トルコ戦は順位決定トーナメントの試合のみ別会場だったので中継がなかったが、5位決定戦は決勝と同じ会場なので中継はあるのではないか。
11日(月)12時30分(日本時間18時30)~  
https://www.youtube.com/live/XoWioUpkkIM?feature=shared

トルコとの試合が終わり、別会場のスペイン-ドイツ戦へバス&タクシーで移動。
今大会未見のドイツを見たかったし、興味を持ったが日本戦には出場しなかったスペインのゴレイロ イエネバ・サグントも見たかったからだ。
試合は第1ピリオド途中から観戦、ドイツが試合開始早々のFKのトリックプレーから先制したようだが、最終的には8-4と、スペインが力の差を見せつけ決勝へ駒を進めた。
ちなみにスペインの4失点のうち2点は、リードしているスペインがパワープレー、パワープレー返しを食らったもの。
もう一つの準決勝はブラジルがイギリスを4-1で下して決勝進出。
決勝は、日本と同じグループだったスペインとブラジルの組み合わせとなった。