サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

松葉杖

2012年12月13日 | 日記

先日、毎日新聞の『記者の目』で松葉杖をついた記者自身の体験が載っていた。
要約すると、松葉杖をついて電車の優先席付近にいてもあまり席を譲ってくれなかったという記事である。

それを読んで自分の体験を思い出した。
20代の時に交通時故で足を骨折、入院→手術→ベッドで寝たきり→手動の車椅子→松葉杖という流れだったが、退院した時はまだ2本の松葉杖をついていた。
しかし、何度か電車に乗ったが一度も席を譲ってもらうことはなかった。
正直、優先席の前に立っていれば席を譲ってくれるものかと思っていたが、まったくそんなことはなかった。
その当時は優先席の図柄に松葉杖の人がなかったということもあるけれども、体験者でないと電車の中で松葉杖で立っていることの大変さが想像できないのだろう。
20代だつたし席を譲るべき対象と思われなかったのかもしれない。
ギブスには友人が骨の絵を落書きしていて折れた箇所も図解してあり「バキッ」とか書かれていてまったく同情をひかなかったのかも。 ついでに言えば、骨折したのはとあるTVドラマの撮影中で、退院後、主演男優・女優からギブスにサインしてもらった。ギブスを捨てずにとっておくべきかと思ったのだがくさいので捨ててしまった。すいません。
それはさておき、松葉杖をついているとブレーキがかかった時などバランスが取れずにとても怖い思いをする。
だから途中からは優先席で譲ってもらうことをあきらめて、ドア付近など、もたれかかれる位置にポジジョンを取る事にした。
電車では一度も譲ってもらえなかったが、バスで一度だけ席を譲ってもらったことがある。
あきらめていたので、声をかけてもらった時はとても驚いた。
40歳前後の女性の方だったかなあ。
とても嬉しかった。
バスに立っているのは電車よりももっと怖い。
動きに規則性がないからである。

ところで松葉杖だが、最初は2本使用することから始まり、徐々に骨折した方の足の負荷を増していく。
最初は0%、徐々に増やしていき、完治すれば100%の体重をかけることができる。
何%だったか忘れたが、途中で松葉杖が1本になる。
松葉杖を付くのは丈夫な方の足。つまり左足の骨折であれば、松葉杖をつくのは右側である。
左足の負荷を右側の松葉杖に逃がしてやるためだ。
ところがこれを逆だと思っている人が多い。
(実際に杖を逆についているを時折見かけるが、少なくとも骨折からのリハビリは左足の骨折なら右手でつく)

その昔よく一緒に飲んだくれていた小道具担当のスタッフから「松葉杖をどちら側でつくのか?」電話で聞かれたことがあった。
ドラマでそういったシーンがあるとのことだった。
キチンと説明し彼も理解してくれ現場でも説明したとのことだったが、結果として彼の意見は無視され逆になってしまったそうだ。
以前のTVドラマはそういったリアリズムなんかまるで無視した作りが多かった。

自閉症を題材にしたドラマなんかもひどかった。誤解が誤解を生むようなドラマが多かった。
とあるTVドラマでサード助監督をやった際、何冊か本を読んだだけで、そのドラマの自閉症に関する部分はまったくでたらめだらけということがすぐわかった。「自閉症」は「感動」のための都合のいい一要素でしかなかった。

そういえば「オレンジデイズ」も中途失聴者のリアリズムという観点から見れば、無茶苦茶なドラマだった。

しかし最近のTVドラマはかなりきちんとしてきている印象です。