ことしはじめて18キップを使って磐越西線経由で日本海側にぬける。予定では、夕刻直江津駅で降りる。
在来線といっても快適で、約8時間の道中全線エアコンが効いていて、いまだエアコンさえもないわが家から比べたら、ガラガラの車輌で、前席に脚を伸ばしてまどろめる環境というのは、この炎熱地獄の季節、みほとけに抱かれている心地である。加えて、新しい車輌の大きな窓からは、会津の山々や夏色の深い緑に染まった南東北の田園風景が一望である。ときどき耳にする地元のオバァの方言も心地よい。

グループで劔岳に向かうために乗った40年ほど前の新宿発富山行き23時○○分発の夜行列車の車内を思い出す。季節は今ごろ。席という席は登山者で埋めつくされ、われわれは、みなと同じように床に横たわって寝た。あの当時の鈍行にはエアコンなんてあるわけもなく、開けらた窓から届く風に、わずかな涼を求めた。
快適になった2021年の鈍行列車。もう、夜行列車という言葉は死語。で、あのあふれかえっていた登山スタイルの青年たちは、今ごろどこで何をしているのだろうか。夢だったのか。