叙事詩 人間賛歌

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「目覚める人・日蓮の弟子たち」 十六

2010年04月10日 | 小説「目覚める人」

 ご挨拶

 気分一新のためにブログのデザインを変えました。
今までの部分表示から全体表示になりますので、戸惑うかたもいると思い
ますが慣れてくださいますようお願いいたします。



 「目覚める人・日蓮の弟子たち」 十六

 北条小源太 十六

 小源太が家中の者に常々言い聞かせていたことがあった。それは、常に
二人で行動せよ、という事である。
かりに暴漢に会ったとしても二人でいれば、襲ってくる事は少ないが、一人
でいると確実に襲撃される。それも同僚と二人でいるよりも、自分の配下
の者と一緒のほうがよい。同僚だととっさの場合に意見が分かれる事があ
るからだ。
そして常に声を掛け合い呼吸を合わせることが大切だ。と教えていたので
ある。

 小源太のこの方針は、特に戦場で威力を発揮した。
日頃から二人一組で行動する習慣を身につけている北条軍は、戦場でも
その習慣を生かした。
一人の敵に二人で向かっていく戦法は、血迷って突進してくる敵を確実に
討ち取るのにおおいに役立った。
激戦になればなるほど効果を発揮したのである。

 戦えば必ず勝つ、という自信を北条軍は持つようになり、悪源太どのの
軍は強い、と恐れられていた。

三善邸を過ぎて名越坂に近くなると、所々に丘がある勾配のきつい道にな
った。何回か坂を駆け上ったり降りたりしている内に、黒々とした山が前方
に現れそのふもとの辺りに、民家の明かりがぽつんぽつんと見えてきた。

彦四郎は馬の手綱をゆるめて速度を落とすと蹄の音をたてないようにゆっ
くりとそのなかの一軒の家に向かって行った。
家のそばまで来ると馬を降りて、植え込みで囲んだ民家の門の中に入っ
た。板戸の隙間から明かりがかすかにもれている。

    「夜分におじゃまします、彦四郎でございます。」

 入り口の板戸を叩きながら彦四郎が低い声で言うと、ガタンとつっかい棒
をはずす音がして板戸が少し開いた。

    「まあ、彦四郎どの、こんなに遅くなにか変わったことでも・・」

戸をあけて出てきたのは髪の長いまだ若い女だった。

続く

  



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