叙事詩 人間賛歌

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「目覚める人・日蓮の弟子たち」四十九

2010年11月01日 | 小説「目覚める人」

 法華経の行者 二十三     

 「ほほう、それでまた出てきたかな、」

 「いいえ、それがモグラのほうがこわがってどこかに逃げたみたい
です。それからは一度も出てきませんから。」

「モグラのほうがこわがったか、ワッハッハ..」小源太は愉快そうに
笑った。

「とのに似て気の強いお子です。」

「それはりょう、わしに似ているのではないぞ、そなただってずいぶ
ん気の強いところがあるではないか。」

小源太に言われてりょうはパッと顔を赤くした。このあいだの夜のこ
とをとのは言われているのだ。先日一緒に過ごした夜のことを思い出
してりょうは恥ずかしかったのだ。
顔を赤くしたのを小源太に見られないために、りょうがそっと立ち上
がろうとするのを小源太が腕を伸ばしてグィと止めた。そのまま肩を
抱かれてりょうは小源太の膝の上に倒された。

「まあとの、外はまだ明るいのに、」とりょうは小声で言った。

「りょう、本番は暗くなってから致すとして、早駆けじゃ。」

 と言いながら帯をゆるめた小源太の手がりょうの着物の裾をまくっ
た。むきだしになったりょうの白い下半身が囲炉裏の火を映して赤く
染まった。

 「とのったら..」

明るい外の周りを気にしていたりょうの両腕が、やがて小源太の背中
を強く抱きしめた。

江ノ島の上にあった太陽がやや西のほうに移ったころ、香ははしやい
で帰ってきた。

「ははさま、お魚がたくさんとれたのよ、じいや、早くははさまに見
せてあげて」

続く  

 

   
 



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