叙事詩 人間賛歌

想像もできない力を持つ生命の素晴らしさを綴っています !

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人間賛歌 人の生命活動 七

2006年07月26日 | 人の生命活動
 前回のあらまし

 自分の心を劇的に変えた男の話の途中て終わりました。
職業相談所のカウンセラーに、解決策か見つからねば自殺するしかないと、
男は苦しい胸のうちを打ち明けたが・・・


 男の話によると、いままでまじめに仕事をしてきたが、いつも人に騙されて、
良い結果になったことは一度もなかった。
弱り切っていたところを性懲りもなく、また騙されて、今度ばかりはもうどう
しようもない破目に陥った、と言うのだ。

 男の話を聞き終わったカウンセラーは、確かにこの男の置かれた状況は、
たいへん厳しいものであるが、もっとたいへんな状況で相談にくるものが、
いることを経験上知っていた。


 カウンセラーは男にこう言った。

 「 ooさん、  お話しはよく分かりました。
 あなたが切羽詰まった状態におられることも理解できます。
  それについて、今のあなたに一番適切なアドバイスが出来る人が
 います。
  いまその方を紹介しますが、その方はとても無口な方ですので、
 あなたからよく話しかけて、なんでも相談してください。
  その方はどんな困難にも挫けず、勇敢に立ち向かっていく人です
 から、キツト満足できる答えが得られると思います。

  相談が終わったらもう一度ここに来てください、
 私もあなたにアドバイスできることがありますから。」

カウンセラーは男を別の部屋に案内した。
その部屋は家具もなく、中央に椅子がひとつ置いてあるだけで、椅子
の向かい側の壁にカーテンが掛かっていた。

 カウンセラーは男を椅子に掛けさすと、カーテンを開いて、

 「 ご納得いくまで、いつまででも話し合ってください。」

と言って、部屋を出て行った。
男はうつむいて、暫くじっとしていたが、顔をあげて見ると一人の男
が、自分と向き合って座っていた。

 どこかで見た事がある人だな、
と思って、男は相手がなにか言ってくるのを待ったが、その人は黙った
ままだった。

 ヘンだな、と思い目をこらしてよく見ると・・・向き合って座って
いるのは、鏡に写った自分の姿であった。

 それからかなり時間がたったあと、男は部屋を出てカウンセラーの
前に立った。

 「 カウンセラーさん、私が間違っていました。
    もう一度やり直してみます。 」 

と男は言った。男はカウンセラーに礼を言い、ここえ来たときとは別人
のような、しつかりした足取りで出ていった。   つづく






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