前回の続き、
リエは夫の最期の願いを叶えてやりたい、と思うが
さきだつモノがないうえ、近所の店はツケがたまっているので、
これ以上売ってくれるとは、思えなかった。
しかたなく彼女は家をでると、走って隣町まで行った。
そこでワケを話し、モチと酒を手に入れて帰ったのだ。
夫は旨そうにモチを食い、酒をいっぱい飲んで息を引き取った。
苦労と名のつくものを、ひとつ残さずかけた夫だったが、
いなくなると、リエの胸に穴があいたようで、
しばらく何も手につかなかった。
子供は、男の子ひとりと、女の姉妹三人で、四人が残された。
夫の死後も苦労はつきなかったが、
歳月がたち、長男が働ける年頃になり、
これで一息つけると、リエはホッとしていた。
長男の仕事先もきまって、いよいよこれからというときに、
突然、長男は首をくくって自殺した。
なぜ死んだのか、書いたものも残さなかったので、
理由はわからなかった。
長男が首を吊って死んだ姿を見て、長女は発狂した。
二女は好きな男がてき、
結婚して幸せにくらしていたが、夫の留守中、
ひとりでいたところを、ヤクザがおそい手ごめにした。
そのうえ手ごめにしたヤクザ男の、めかけにされたのだ。
三女は隣村に嫁にいき、子をもうけたが、
リエが届けた出産祝いが少ないと、シュウトに非難され、
それがもとで気が狂った。
これでもか、これでもか、と不幸がリエをおそうが、
彼女はそれでもケナゲに生きてきた。
いつのまにか歳も五十をこえ、髪に白いものが目立ちだした。
続く