叙事詩 人間賛歌

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「目覚める人・日蓮の弟子たち」三十六

2010年08月23日 | 小説「目覚める人」

 法華経の行者 十   

「はい、近くの民家にわけを話して休ませてもらいました。火傷もな
いようなので元気になったら、何か着る物を与えて帰すよう、銭を少
し渡しておきました。」

「それはよいことをなされた。女人に罪はないからの。時孝はどうし
た。」

と小源太が問うたのに、

「はい、弟はよく働いて私が着いた頃には、類焼している民家から逃
げる人びとを助けていました。
動けない老人や病人は背中におぶって、安全な場所に避難させていま
した。」

「そうであったか。そなたも時孝もよい働きをなされた。わしが常々
言い聞かせているように、我が家の家訓は、領主あっての領民ではな
く、領民あっての領主だからの。領民を親のように大事にしなくては
ならないということだ。
ご苦労であった。疲れていよう、早く帰って休むがよい。」

義昭は立ちかけて、

「母上がみえませぬが、」と訊いた。

「母上は、頭痛がすると言って休んでおる。」

「おかげんが悪いのですか。」

「いや、いつもあることだ、心配するほどのことではない。」

「そうですか、お大事になさいますよう、それでは失礼致します。」

と、義昭は父親に誉められて嬉しそうな顔で下がって行った。

続く   

     



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