叙事詩 人間賛歌

想像もできない力を持つ生命の素晴らしさを綴っています !

 すべて無料です、気軽に読んでください。

「目覚める人・日蓮の弟子たち」 十五

2010年03月19日 | 小説「目覚める人」

 北条小源太 十五

 それにしても、とのは随分お変わりになられたものだ。悪源太と言
われていた若い頃からお仕えしているが、その頃から家臣には思いや
りの深い方だったが、短気で乱暴もされたのが今では円満なお方にな
られた。

 彦四郎は、小源太にいわれて名越の北条時安邸に使いに行ったとき
のことを思い出した。
彦四郎を使いに出したことを忘れて、小源太は馬を飛ばして名越に行
き用事を済ませて出てきたところで、丁度着いた彦四郎とばったり出
会ったのだ。

「彦四郎、なんでここにおる。」 

小源太に言われて彦四郎は驚いたが

「はい、とののお使いで・・」

と彦四郎が言うと小源太は、はっと気がついて、

「いやあうっかり忘れていた。すまんすまん、用事はもう済んだから
一緒に帰ろう」

と大笑いしながら帰ったのだ。あの時のとののばつの悪そうな顔とい
ったら、今思い出してもおかしくなる。と、彦四郎は思わず顔をほこ
ろばした。

「源八、早駆けするぞ。」 彼は振り向いて言うと馬に鞭をいれた。

    「ハッ」

源八の声が聞こえたと同時に馬は松葉ヶ谷を目指して一目散に走って
行った。

続く