叙事詩 人間賛歌

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「目覚める人・日蓮の弟子たち」 十三

2010年03月12日 | 小説「目覚める人」

 北条小源太 十三 

「さようか。それもこれも頼朝公以来の幕府のご威光のおかげじゃ。
ところで、今度の蒙古の申し出には幕府はどう対処されるおつもりじ
ゃ。」

「はい、京の朝廷にもお伺いはたてているようですが、まだ如何に対
処するか決め兼ねているようです。
いずれにしても幕府が一丸となって国難に立ち向かわねばならないと
覚悟はしていますが。」

「そうじゃ、執権どのはまだ若年ゆえ、そなたたちがよく補佐して遺
漏の無いように頼み申すぞ、隠居はしていてもこの時昭いざとなれば
筑紫まで馳せ参ずる用意はできているのでな。」

 小源太は残っていた盃の酒をうまそうに飲み干すと盃を伏せて置い
た。かねが、

「御前、もう少しおすごしなされては」 と留めるのを、

「いや、すっかりご馳走になった。時節がら余りのんびりともしてお
れない。これで失礼する。奥方も一度大学どのともども我が家に参ら
れよ。」
 
と言って立ち上がった。

 斉藤彦四郎は、由比ヶ浜通りを東に名越坂に向かって馬を駆けてい
た。由比ヶ浜通りは西に行くと大仏坂を通って京に行く道に通じてい
るので、まだ人通りがあった。
人通りを避けて海岸を行こうかと思ったが、時間がかかるのと馬の疲
労を考えて街道を行くことにしたのだ。

続く