スペースオペラ&ミリタリーSF特集。
ローダンのリブート《ローダンNEO》は非常に大きな驚きだ。《ローダン》さえ読み切れないのに、新版かよと。これからの若者たちは、NEOだけを読むのだとすると、本家《ローダン》は先細りになってしまうんじゃないかとか。そもそも、《ローダン》ってどれくらい売れてるんだろう。これだけ続いているってことは、充分な読者がいるんだよな。正直言って、高校大学時代から、熱心に読んでいる人は周囲に誰もいなかったんだけど。これが凄い不思議。
そして、《ローダン》はさておき、最近のハヤカワ文庫 SFは《オナー・ハリントン》やら《シーフォート》やら、やたらとミリタリー系スペースオペラを出版しているイメージ。これが個人的にはなかなか乗れないものがあり、あんまり読んでいない。
おそらく、ミリタリー系(宇宙軍をミリタリーって言っていいのかは議論があるのかもしれないけれど)SF以外は、新☆ハヤカワ・SF・シリーズからの文庫化以外、ほとんどないんじゃないかと言う勢いだ。
個人的な趣味からすると、もうちょっと本格SF(だからそれはいったいなんだ!)的な作品も出して欲しいと思うわけだが、そういう視点では、どう考えたって、去年も今年も創元SF文庫の圧勝だ。『SFが読みたい!』のベストSFでも文庫勢が上位にくることを考えると、日本SFに続き、海外SFもハヤカワ惨敗なんてことになるんじゃないか。
いや、きっとおれの知らないところにミリタリーSFのファンがいっぱいいるんだろう。実物は見たことないけどさ。
特集以外の記事で興味深かったのは、「筒井康孝自作を語る」と、藤井太洋とケン・リュウの対談ぐらいか。特集のネタにあまり興味がないと、読み応えが無いな。
○「プラネタリウムの外側」 早瀬耕
あまりに簡単に再現できてしまうあたりは嘘臭いけれど、ちょっと胸に来るエピソード。死者が“残せなかった想い”をどう受け止めるかというのは、重たい問題。
○「と、ある日のズゥン」 宮崎夏次系
いろいろなものが詰め込み過ぎで濃縮過ぎ。これはこれでよい。
○「《偉大な日》明ける」 R・A・ラファティ
残念ながら、どこが面白いのかさっぱりわからず。
○「鰐乗り〈前篇〉」 グレッグ・イーガン
良くわからないので、〈後篇〉の前に再読予定。
谷甲州「新航空宇宙軍史」は読み切りとは認めない。なんで連載じゃないんだろう。
大井昌和「すこしふしぎな小松さん」は宣伝メタもの。最近、こういうの多いな。
連載では、山本弘「プラスチックの恋人」が遂にショタコン歓喜の濡れ場。
三雲岳斗「忘られのリメメント」はショッキングな展開の割に、いまだ行先不明。
冲方丁「マルドゥック・アノニマス」は痛快な反撃開始だが、彼らを“善の勢力”と呼んでいいのか?
新連載の藤井太洋「マン・カインド」は出だしとしては面白そうで、期待大。果たして、これこそミリタリーSFになるのかどうか。
ミリタリーSFについてはまったく同意見です。SF文庫は一部を除いてずっと読んできていたのですがこのところのミリタリーはさすがにパスするものが多くなりましたね。
ローダン好きの二階堂黎人氏でも[SFが読みたい」のコメントで「ミリタリーSFは苦手」と書いているくらいですし、本当どういう層に受けているんでしょうね。
どれも似たようなものばかりですが、その点去年創元から出た帰還兵の戦場は主人公がすでに退役して組織から離れたアウトロー的な立場ということで普通にアクションSFとして楽しめました。