神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

ミステリー・ワンダー・ランドのセンス・オブ・ワンダー[11] マチュピチュ到着

2016-05-03 18:30:35 | ペルー

朝食後にちょっとだけ街を散歩。

川沿いの坂道に沿って、各種の店が並ぶ。朝はどこも掃除中。レンガ敷きの道もデッキブラシでゴシゴシ磨く。この街が観光で成り立っているというのを良くわかっているのだろう。

レストランなどの入り口に獰猛な犬の顔をよく見かけるのはどうしてだろうと思ったら、これはピューマ。蛇とコンドルと合わせて、インカの象徴。しかし、見れば見るほど犬に見えるんだが。ピューマってこんな顔してたっけ?

ところで、温泉はどこ?

 

停電のおかげで集合時間になっても暗いロビーから徒歩で出発。メインストリートの坂道を下ると、村のメイン広場に出る。皇帝の像が真ん中にあり、役場や郵便局が並ぶ。まさにソカロというか、アルマス広場というか、中南米では一般的な街のつくり。

街角で日本語や韓国語のメニューが貼られた店もあったが、これはお客さんに書いてもらうんだそうだ。ナイスアイディアだと思った。

途中でマチュピチュへの入場チケットを発券するオフィスもあったが、停電なので発券できないのだとか。ガイドさん曰く、最近は全部オンラインでスマホ(iPhone)が繋がらないと大変だったよとのこと。メールか何かのオフラインのデータで発券してもらえたらしい。良かった。

さらにぐるっと回って、マチュピチュ行きのバス乗り場へ。目印にミニチュアのバスが飾ってあるのがかわいい。

モスグリーンのバスはメルセデスベンツ製だけれど、日の丸が描かれている。ここのバスは国際協力機構JICAが寄付して、マチュピチュまでの道も整備してくれたんだとか。

 

バスに乗ってウルバンバ川を渡り、九十九折の坂を上っていく。川側はガードレールもなく、崖下まっさかさま。途中、帰りのバスとすれ違うのが怖いくらいの道だ。

バス用の道と垂直に、崖をまっすぐに登る階段もついていて、これは歩行者用らしい。そういえば、昔、バスより早い少年の話題がテレビに出ていたが、ここの話だったのか。もちろんあれは下りなわけだけれど。

バスを降りると、そこがマチュピチュ遺跡の入り口。近代的なロッジとトイレ。そして、ジャングルっぽい木製の入り口ゲート。次々に到着するバスから降りる観光客で溢れていく。

 

印刷された紙ペラ一枚の入場チケットを手に、ゲートをくぐる。両脇に笹が生い茂る小道を抜け、石の階段を登ると遺跡が見えてくる。

そして、見張り小屋の横を登り、たどり着いた先には……。

ああ、テレビや雑誌で見た光景だ。

とにかくそれだけしか頭に浮かばないくらいの光景だった。

階段を登って、少し汗ばんだ背中を涼しい風が吹き抜けていく。背筋がぞくぞくするのはそのせいだけではないだろう。朝の光の中、まだ観光客も少ない遺跡が我々を待っていた。

 


ミステリー・ワンダー・ランドのセンス・オブ・ワンダー[10] 停電の温泉村

2016-05-03 18:01:23 | ペルー

列車はマチュピチュ駅に到着。この村の正式名称はアグアスカリエンテス。直訳すると、温泉村。なんでも、村の中に温泉があるらしい。時間があったら行ってみよう。

駅の花壇には色とりどりの花が咲き、目の前に迫る崖のような山々はつる草に覆われている。気温こそそんなに高くは無いが、植生は熱帯から亜熱帯にかけての特徴が見える。ここは思ったより熱帯だ。

列車を降りた先はトタン屋根のアーケードのようになっていて、急にバラバラと音がし始め、雨が降ってきた。アーケードの下は、そろそろ店じまいなのか、ポツリポツリとしか明りが無く、商品の片付けが始まっていた。

そこを抜けると大きな川があり、橋を渡る。雨はすでに止みかけており、熱帯のスコールにしても短すぎ。川に沿ったレンガ敷きの坂道がレストランや土産物店の並ぶ村のメインストリートのようだ。そろそろ暗くなっているので、レストランのテーブルには暖かい色のランプが灯り、おしゃれな雰囲気だ。さすが、ペルー屈指の観光地。

 

などと思いながらホテルに入ると、ロビーが薄暗い。というか、ほぼ真っ暗。なんと、村中が停電なのだという。ホテルの話では、明日の朝までには回復するでしょうとのこと。なるほど、今日のアーケードやメインストリートの風景はいつもの夕方とは違うのだな。

足元が暗くなっている中、とりあえず部屋に入る。窓の外には緑の山が迫り、狭い曇り空が見える。停電なので電気は点かない。それ以上に問題なのは、お湯が出ない。ボイラーは別かと思ったが、やはり停電で動かないようだ。しかも、部屋間の内線電話も使えないらしい。

しばらくすると、ホテルの人が部屋にろうそくを持ってきてくれた。まぁ、たまにはこんな感じもいいか。廊下にもろうそくが立てられているので、足元は見える。

食事はレストランにて。レストランには文明の利器、電池式のLEDランプの白い光が。まるで、クラブか何かのような感じ。それでも、割とはっきり見える。ガラスの食器などは返ってキラキラして綺麗なくらいだ。

ビールは昼に飲めなかったので、念願のクスケーニャ(ゴールド)を。これもちゃんと冷えていた。

前菜はサラダ。レタスでくるくる巻かれていて、これまたおしゃれな感じ。メインはマスっぽい魚。盛り付けが妙に偏っているのはわざとなのか失敗なのか。そして、デザートは3種類から選択で、レモンパイを。

LEDの硬い光の演出効果で不思議な空間になっていたが、これまた思いもかけないハプニングで悪くなかった。

 

その後、レストランの隣というか階下(ホテルは坂に建っているのでこういう作りになる)のバーにて、ウェルカムドリンクチケットでここでもピスコサワー。なんだか、どんどんグラスが小さくなっているように思えるのは気のせいか。ここはLEDランプひとつと、ところどころにろうそくで、かなり薄暗い。なんだか怪しい店のようになってしまっていた。

ここで、部屋のろうそくをどうしてきたかという話になり、ちゃんと消してこなかったので慌てて部屋に戻る。特に何も燃えてなかった。良かった。

まだ時間も早かったが、特にすることも無いのでそのまま就寝。早朝出発が多くて時差ボケが続いていたので、そのままぐっすり。

 

起きたのは早朝5時。停電は回復していなかった。蛇口をどちらに捻っても水しか出ない。

山々の間には白い霧。清々しい空気を期待して窓を開けてみると、予想に反してムワッと暖かく湿った空気が入ってくる。ここはやはり熱帯なのか。

待てよ、これぐらい暖かいならば、水でシャワーを浴びられるのでは。

ということで、水浴び。……しかし、やっぱり冷たかった。そして気付いた。ドライヤーが使えない。

そんなわけで、朝食までタオルで頭をゴシゴシとするハメに。

 

朝食はレストランにて。停電のせいで大したものは無いだろうと思ったら、パンとフルーツと飲み物。トースターは無いけれど、それなりにおいしいパンだった。もしかして、停電でもパン釜は使えるのか?

昨夜の話をツアーメンバーと。水風呂を浴びた話をしたら、奇異な目で見られた。

一番悲惨だったのは、昨晩、虫が入ってきて鳴きまくってた部屋があったらしい。暗いのでどこにいるかわからないし、でかい音で鳴くので眠れなかったとか。ご愁傷様です。

さて、今日はマチュピチュに出発だ。

 


ミステリー・ワンダー・ランドのセンス・オブ・ワンダー[9] インカレール

2016-05-03 16:44:05 | ペルー

再びバスに乗ってオリャンタイタンボへ。ゆらゆら揺られて気がつくと九十九折りの下り坂。山を越えて盆地のクスコとは反対側へ降りて来たのだが、これがまさに急峻な崖の下。高山感のまったく無いクスコとはうって変わって、岩肌の見える崖の上に低木が生える高山の風景。ああ、アンデスに来たんだと、やっと実感する。

オリャンタイタンボは遺跡の街にして、マチュピチュ行きの列車のターミナル。多くの列車がここからマチュピチュ駅(アグアスカリエンテス)の間を往復している。なんでも、昔はクスコまで来ていたのだが、環境破壊だかなんだかの理由で、ここまでしか来なくなったんだとか。

駅まで行く間に、急な崖に沿って階段状に張り付いている遺跡が見える。あれがオリャンタイタンボ遺跡(オリャンタイ将軍の場所)。今日は登らないけど、マチュピチュから帰ってきたら登るんだってよ。あんな急なところ、大丈夫か。

駅前には土産物屋が縁日のように並んで、カラフルな民芸品や飲食物を売っている。でも、時間が昼下がりのせいか、なんだか売る方も気だるげで、あんまり活気は無かった。

旅行ガイドなどでよく目にする青に黄色いラインの列車はペルーレール。今回利用するのは、ベージュに緑とオレンジのラインが入ったインカレール。チケットを見ると、ビジネスクラスとか書いてあったけど、1クラスしか無いらしい。

列車は4人掛けのボックスシート。椅子は皮張りのソファー。真ん中にパタパタと開閉できるテーブル。天井には窓が空いていて解放的。

人数の関係で、ボックスはエクアドル人カップルと、現地ガイドのホセさん、そして俺。なんだ、この席割り(笑)

ホセさんによると、二人は金持ちの婚前旅行らしい。英語ならまだしも、スペイン語はぜんぜんわからん。

おかげでホセさんとはいろいろな話をする。なんと、日本の出稼ぎ時には羽村に住んでたことがあるとか。でも、羽村市内のひとつ奥の駅、小作は知らなかったみたい。

日本語の漢字が読めないので、ふり仮名を振ってくれというので、ペルー産のジャガイモの種別を紹介したガイドブックに振り仮名振ったり、ペルーの年表の説明をしたり。日本のジャガイモの「インカのめざめ」を紹介もしておいた。次からホセさんが黄色いジャガイモのことを「インカのめざめ」みたいなのとか紹介しているかも。

そんなこんなで、窓から見えるはずの遺跡もすっかり見落としてしまった。まあ、帰りにも見られるからいいか。

列車はウルバンバ川に沿って川を下る。雨季なので川の水量は多め。かなりの濁流だ。車窓は山肌が見える高山地域から、次第に植生が変わりジャングルへと変わっていった。そう、マチュピチュは高山のイメージがあるけれども、クスコからはずっと下流の低地にあるのだ。

途中で飲み物サービス。アンデスドリンクなるものがあったので、それをいただく。ジンジャーエールベースに謎の香辛料が浮いている。味は、まあジンジャーエールと大差なく。

 

 


[SF] 明日と明日

2016-05-03 16:19:15 | SF

『明日と明日』 トマス・スウェターリッチ (ハヤカワ文庫 SF)

 

『SFが読みたい!』のベストSF2105 海外篇12位。

紹介文は読んでいたので、ピッツバーグで〈終末〉と呼ばれる何かが起こって仮想現実の街になっている、ということはわかっていたのだが、それ以外でわけが分からずに序盤で混乱する。

主人公のドミニクは保険か何かの調査員で、仮想現実の街を舞台に調査を行っているようなのだが、これが特殊能力なのか、その時代の誰でも使える能力なのかがわからない。どうやら、誰でも使える能力っぽいのだが、なんで主人公が調査員に選ばれたのかも良くわからない。おまけに、最新の特殊な〈アドウェア〉なんかも貰えてしまって、なんだか奇妙なご都合主義の物語に思えて、最初から読み直してしまった。

100ページぐらいを越えると、やっと世界の有り様が頭に入って来て、スムーズに読めるようになった。

主人公は保険会社からの依頼で過去のアーカイブ(監視カメラや行動履歴の集積)から対象者の行動を割り出し、保険の対象となるのかどうかを査定するのが仕事。その中で調査対象となった少女の履歴が編集されていることに気付いてしまったことが事件のきっかけ。その後のご都合主義に見える展開は、すでに“犯人”の手によって踊らされていたということになる。

この世界の注目すべき点は、出歯亀的ニュースメディアの発展。現実の世界でさえ、何か事件が起これば、被害者や容疑者の子供の頃の文集までもがニュースショーに流れ、匿名掲示板を中心にSNSのアカウントや住所までもが飛び交うという現状にあるが、それをさらに推し進めたのがこの小説の舞台。ひとたび何かがあれば、事件現場の動画から、過去のスキャンダルまでもがメディアに飛び交い、しかも、金儲けのために親が亡き子供のセックスシーンまで売るという酷さ。

しかも〈アドウェア〉との呼称の通り、主機能は広告を強制的に見せられること。その換わりに仮想世界へのアクセスが許される。レコメンドのウザさはもちろん、事件直後にはゴシップスキャンダルのストリーム視聴を勧める広告があふれたりするわけだ。

すべてのものがネットでつながるという未来は、このようなディストピアにつながる可能性もあるが、だからこそプライベート空間をどうやって持つのかというのも一つの問題でもある。しかし、この小説のように、アーカイブとして再生される〈市〉の中で過去を再体験できるというの、それはそれで魅力的。

ネット文化の功罪というのは確かにあって、あまりに大き過ぎるデメリットから悲観的になりがちではあるのだが、メリットを享受することもあるだろう。たとえば、主人公がこんなに深入りする前に、入手した証拠の断片をネットに公開したならば、集合知によってあっさりと犯人を追い詰められたかもしれない。

そう思うのは、俺がネットに親和的で、ちょっと楽観視し過ぎているのだろうか。