神なる冬

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コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] オマル2 ―征服者たち―

2014-09-23 10:06:23 | SF

『オマル2 ―征服者たち―』 ロラン・ジュヌフォール (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

『オマル ―導きの惑星―』に続き、物語世界に没入するまで時間がかかった。何が起こっているのか良くわからないのに、惹きが弱いので推進力がない感じ。

ただ、列車が走り出すあたりからは急加速。『夜来る』とか『逆転世界』とか、過去の名作SFへのオマージュも織り交ぜつつ、陽光溢れるラストシーンへ突き進む。

今回も複数の物語が絡む群像劇なのだけれど、3つの物語が微妙に交差しそうで交差しないところは、いまいち感が募る。

実は大使たちの物語が発端で、“闇のプレート”が作りだされたということであれば、“闇のプレート”を通じて3つの物語がつながるのだけれど、そんな描写になってたっけ?

1巻からそうなのだけれど、舞台設定や小道具が魅力的な割に、物語としては単調でいまいちなのだよな。3種族の対立を現代フランスの移民問題に絡めたテーマも今回は背景に追いやられて、愚かな戦争を必死で続ける人々の英雄的行為ぐらいしか読み取れない。

オマル世界はダイソン球だというのがわかってしまっているから、SF的な壮大さも二番煎じ。しかも、そこで発生する現象や、オマル世界の成り立ちについても、Whyの部分が説明されないままなので、いろいろ消化不良。

というわけなので、いまひとつ読みどころのわからないまま、シリーズはさらに続く。

これがフランスSFの最高峰と言われても、本当にそうなのかと疑問に思う。これじゃ欧米SFの輸入による模造品のようだ。ジュール・ベルヌを生んだ国としては、ちょっと情けないんじゃないか。