「ビジョン(vison)を見る」と、「レビジョン(revision)を上げる」を掛けたところまではなかなか面白かったのだけれど、それ以上のものは無かった。タイムパラドックスものであることはわかりきっているのだから、もうちょっと捻りが欲しかった。
自分の生んだヤスヒコに固執する女性主人公がだんだん怖くなって、意図せずホラー風味になっている気がする。っていうか、もともとホラーのつもりで書いたのか。
一番なんだかなーと思ったのは、手鏡の擬人化。「えー、僕はどうしたらいいの」って、そこは笑うところなのかなんなのか。ちょっと外し過ぎているんじゃないか。
『リライト』との関連がかなり密接で、おそらく前作を読んでいない読者にはさっぱりわからない部分も不親切。“言及があります”というレベルではなく、これだけ読んでもまったく意味が通じない。
全4部作を構想ということなので、4作全部で浮かび上がってくるストーリーもあるのだろうが、“スピンアウト”ではなく、続編、もしくは裏編であることをもうちょっとはっきりアピールした方がいいのではなかったか。
ついでに言うと、時間テーマの連作というと、どうしても北村薫の三部作『スキップ』、『ターン』、『リセット』が思い浮かぶのだけれど、これを上回ることができるのかどうか。今のところ、かなり不安な感じだが、これまでにない斜め上の展開を期待したい。