神なる冬

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[映画] はやぶさ 遥なる帰還

2012-02-14 21:53:50 | 映画
『はやぶさ 遥かなる帰還』


(C) 2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会


はやぶさ映画はこれが2本目。全部で3本作られるらしいが……。

この映画は、いったいどの層に向かって、どのような物語に、どのようなテーマを載せて語ろうとしているのかがさっぱり見えなかった。

渡辺謙が主演ということでか、平日午前の映画館は高齢の観客が多かったのだが、イオンエンジンやリアクションホイールが何なのかわかって見ていた人はどれくらいいるんだろう。その辺の細かい説明もなく、淡々と話が進むのが気になった。

メーカー側技術者との衝突や小さな町工場の関わりなど、官民一体の開発ドラマを主体にしたかったのかもしれないが、いかんせん、エピソードが細切れで起承転結や物語の盛り上がりがまったくない。

プロジェクトXのようなドキュメンタリーならばそれでもいいのだろうが、それだったら最初からドキュメンタリーで撮ればいいわけで。

小ネタは随所にあり、ネットや講演会で見聞きした内容からしても割と事実に忠実なんだと思うが、それはわかっている人向けであって、しかもわかっている人にとっては二番煎じの再現フィルムに過ぎないので、映画として見る価値があるのかどうか。

日米の宇宙開発予算の違いや、財務省との厳しい予算交渉のエピソードも、それだけで一本映画が作れるくらいだと思うのだが、小さなエピソードのひとつとして埋没してしまっていて、この映画を観た有権者が宇宙開発予算に好意的になってくれるほどのものではなさそうだ。

正直言って、この映画を見て感動して泣く人がいるとは信じられない。これでは、はやぶさが成し遂げた偉業の凄さも、満身創痍で帰還して燃え尽きた感動も、まったく伝わらない。


これまでのはやぶさ関連コンテンツで、一番泣いたのも一番笑ったのも、ネットに転がっている“はやぶさ”Flashだ。『今度いつ帰る』も、『こんなこともあろうかと』も、『はじめてのおつかい』も、何度見ても泣ける。本当に、マジ泣ける。

当時、まだニコ動が無い頃から無名のアマチュアが、はやぶさの帰還を祈って作ったコンテンツたち。日本の映画界は、いくら金を掛けても、いくら時間をかけても、たとえアカデミー賞俳優を使っても、これらのアマチュアコンテンツにはかなわないということが証明されたという認識でいいのか。それならば、やっぱり映画なんていらないでしょう。


結局のところ、これはNECの宣伝映画だと思っていいのか。そう思うくらい、やたらとNECが出てきた。はやぶさに協力していた企業はNECだけじゃないと思うんだけど。

そして、どうにもならなかったリアクションホイールには、でかでかと“made in USA”の文字が。これは、リアクションホイールも日本製だったら、誰かが「こんなこともあろうかと」と、秘密の仕掛けと神業運用でなんとかなったはずだというメッセージと思っていいのか。だったら、そういう物語の作り方もあっただろうに。


とにかく、何のために作られたのかまったくわからない映画だった。おもしろくないわけでもないのだけれど、誰にも見る価値の無い映画だと思う。