神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] ガンパレードマーチ2K

2012-02-12 23:13:02 | SF
『ガンパレード・マーチ 2K 北海道独立(1)~(4)』 榊涼介 (電撃文庫)




『ガンパレード・マーチ 2K 5121暗殺』 榊涼介 (電撃文庫)





ガンパレード・マーチシリーズの去年の新作(笑)を一気読み。

ガンパレード・マーチは一時期本当にはまったゲームで、会社のサーバー室でも「世界の謎掲示板」を読みふけっていたくらい。

世界の謎掲示板は、ゲーム製作会社がゲーム内の謎を解こうというゲーム外ゲームを仕掛け、そのゲームの会場となったネット掲示板。本当にそこまで練り込んであったのかと驚くようなシナリオと裏設定だった。

そのゲーム世界を引き継いで書き続けているのが“榊版ガンパレ”であり、ゲーム外ではもっともオリジナル・ガンパレ遺伝子が濃いと考えているガンパレ作品であり、これまでずっと楽しみにしてきた作品なのだが、どうも今回は乗れなかった。

故郷を愛する北海道出身者としては、樺山などという小物にそそのかされて日本から独立しようとするとか、1級道民と2級道民の階層社会とか、挙句の果てに幻獣に売り渡すとか、正直勘弁して欲しかった。これが、道産子部隊の活躍のひとつでもあれば変わったのだろうが、道民は完全なる道化か無関心の市民、役立たずばかり。これでは道民を馬鹿にしてるのかと思われても仕方がない。

まぁ、それ以上に、これまでの敵であった幻獣(の一部勢力)と和解してしまったために、わかりやすい敵がいなくなってしまったということが行き詰まりの問題としてあるのだろう。そのために、新たな敵を人類の中に作らざるを得なくなってしまった。これは強力な敵がどんどん出てくるドラゴンボール的マンネリの始まりなんじゃないだろうか。

今まで舞台に上がらなかった北海道はまだしも、さらには日本国内を裏から牛耳る影の組織、そして、壊滅寸前だったはずのアメリカ政府。いったい、ガンパレはどこに向かってしまうのか。

そんな変な方向に風呂敷を広げなくても、まだまだガンオケ緑、ガンオケ青のネタが残っているであろうし、いわゆる史実(ゲーム内設定)のネタがすべて尽きているわけでもないはずだ。

そもそも、黒い月の謎はどこに行ったのか。茜作戦、銀環作戦は発動するのか。幻獣との和解をメインに据えてしまったために、シリーズのゴールがまったく見えなくなってしまっている。このまま、新たな敵を登場させながらズルズルと続くんだろうか。

ガンパレード・マーチは何度もループし、らせんを描くゲームだった。したがって、榊版ガンパレも、TVアニメ版やコミック版と同様、第5世界の別ループを描いた作品であることは確かだし、それについては全く問題がない。しかし、榊版ガンパレも、おれの好きだったガンパレ世界からどんどん離れていき、光速の彼方に消えるのだろうかと考えると、ちょっとさびしい。



[SF] SFマガジン2012年3月号

2012-02-12 22:31:33 | SF
『S-Fマガジン 2012年3月号』 (早川書房)




今月は英米SF受賞作特集。毎年この時期になるのは翻訳のせいなのでしょうか。ときどき受賞作がまったくなくて候補作だけ載ってる年もありますが、今年はちゃんと受賞作がどっさり。未掲載のものも、すでに日本発表済みだったり、近刊だったり。出版権と翻訳作業という壁を越えて、前年の話題作がすぐ読めるなんて、ありがたいことで。

ちなみに、ヒューゴー賞はこんな感じ。

■ ヒューゴー賞
【長編部門】
『ブラック・アウト/オール・クリア』 コニー・ウィリス (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ近刊)

【ノヴェラ部門】
「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」 テッド・チャン (2011年1月号掲載・2012年読者賞)

【ノヴェレット部門】
「火星の皇帝」 アレン・M・スティール (2012年3月号掲載)

【ショート・ストーリー部門】
「For Want of a Nail」 メアリー・ロビネット・コワル

コニー・ウィリスは相変わらず強いね。しかも今回はおなじみのダンワージー先生が出てくる例のシリーズとのことで、期待度満点。正座して待つって感じ。

テッドチャンは向こうだとあんまり人気がないとかっていう話も聞いていたんだけど、しっかり受賞してますね。

そして、SFマガジン読者賞も発表。海外編は下馬評通りヒューゴー賞受賞のテッド・チャン「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」。国内編は飛浩隆「零號琴」。連載物だったのと、途中で読むのをやめていたせいもあって、まったく忘れてました。

「零號琴」を読まなくなったのは面白くなかったわけではなくって、あの話を連載細切れで読むのに苦労したせい。単行本で出版されたら、しっかりと読ませていただきます。

他には連載コラムの「センス・オブ・リアリティ」金子隆一が現代美術やら、ストラディバリウスの心理的バイアスについて書いていた話が興味深かった。何に価値を見出すかは人それぞれだし、いいと思うものは胸を張っていいと言えるようになりたいもので。




○「雲海のスルタン」 ジェフリー・A・ランディス
金星ってなんであんなに雲に覆われた星なんですかね。それはさておき、少年王が家庭教師に求愛するという、それなんてエロゲな展開に笑う。歳の差結婚を交互に行うシステムは別の場所でも読んだ記憶があり、確かに合理的かもねと思った。特に最近、若者の結婚離れ(笑)とか、少子化問題の解決方法としてはありだと思う。ただし、制度的なものじゃなくって社会システムなので、一気にこれを実現するのは大変だろう。
えーと、もうひとつのちゃんとしたSFネタの方は、……霞んじゃったからいいや。

◎「火星の皇帝」 アレン・M・スティール
これも一種のSFファン内輪受け小説だと思っていいのでしょうか。自分は物語の力を確信しているけれども、ちょっとあざとい気もする。しかし、本読み、SF読みにとっては、感動するなというのが無理な泣ける話だった。

◎「アウトバウンド」 ブラッド・R・トージャーセン
これもまた悲壮な話。最終戦争が始まった地球を脱出した少年の長い旅。ハッピーエンドになるのか、バッドエンドになるのか最後まで想像がつかなかった。

-「女王の窓辺にて赤き花を摘みし乙女〈前篇〉」 レイチェル・スワースキー
例によって完結するまで評価未定。ただし、このまま終わるのならば、凡庸かな。

○「ウェイプスウィード(後編)」 瀬尾つかさ
微笑ましくてのほほんとした感じだったのだが、母親の死因あたりが絡んで一気にきな臭くなり、オーソドックスながらもしっかりとしたSFネタを見せてくれる。なんというか、ちょっとそれはないでしょうというツボをうまく押さえている感じがする。予定調和の中でも、かならずどこかに不協和音が入ってくる感じ。