『ATOM <日本語吹替版>』 - goo 映画
(C)2009 Imagi Crystal Limited
Original Manga (C) Tezuka Productions Co., Ltd.
実はまったく見る気が無かったんだけど、土曜日の「世界、ふしぎ発見」を見て、予約してしまった(笑)
近くのシネコンでは、吹き替え版しか上映していなかったので、久しぶりの吹き替え版。まぁ、アニメだしな。
シナリオは、まとも。逆の意味で期待していた崩れっぷりはまったく無い。日本発のゴジラやガンダム(笑)が、ハリウッドでまったく別ものに作り変えられてしまったのとは異なり、これはちゃんとしたアトムだ。
ロボットと人間の間で悩むアトムというモチーフを生かしているが、そこにアメリカ人好みの天馬博士との親子関係の断絶と修復が大きくインサートされている感じ。どうしてアメリカ人はワンパターンに、なんでも同じ物語にしてしまうのだ?
同じといえば、地上のゴミは『ウォーリー』を思い出させるし、キャラの質感はピクサーの3Dアニメにそっくり。あの空中都市がそのまま飛んで行ってしまって、地上ではゴミ処理をウォーリーが……というラストでも上手く繋がりそうなくらい。でもこれ、ピクサーじゃなくて、香港のスタジオで作ったカドカワ映画(←日本での配給)なんだよね。
出てくるロボットもアメリカンなゴテゴテ系や、着ぐるみ系ではなく、手塚デザインっぽい丸っこいレトロ・ロボットなイメージ。ここらへんはリスペクトが感じられて良い。
トビオがトビーになっていたり、ビル・天馬とか、ジャンなんとか・お茶の水とか、西欧圏な名前に変えられているのと、アトムの顔がどうしてもおかしいのは、さすがに慣れないけど。あれは、顔のバランスがアニメ顔じゃなくてリアル顔に近くなっているせいなのか。それとも眉毛のせいか。天馬博士や、コーラの方がよっぽどロボットっぽい顔だと思われ。
アトムの声を担当した上戸綾も上出来。どちらかというと、林原めぐみの方が演技過剰っぽくてヤバイ。あの声聞いたら、どうしても他のアニメとか思い浮かぶし(笑)
全体的には十分合格点なのだが、映画としてはどうかというと、ちょっと弱い。これもメインストーリーが絞りきれてなくて、クライマックスの盛り上がりに欠ける。詰め込み系の映画にはありすぎなパターン。
最後の戦いでは派手に街をぶっ壊していたが、逃げ惑う人々が人間ではなくて人形に見えて恐怖感が無いし、空中都市が地上に落ちたらどうなるかという焦燥感もない。まったく能天気な戦闘シーンである。さらに、裏では空中都市対地上国家の軍拡競争とか、経済格差が原因と思われる憎悪と嫉妬の構図が見えなくも無いのだが、それがまったくストーリーに影響を与えず、最後の最後に出てくる一つ目モンスターとそれら裏設定の関係も匂わされすらしない。
結局、アトムだねぇ、アストロ・ボーイじゃないよ、よかったねぇ、で終わる作品。まぁ、それはそれで悪くないのだけどね。
日本のファンとしては、ルパン三世みたいに毎年新作をTV放映してくれるのが一番嬉しいんじゃないかな。