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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

日テレvs.NHKの「アリエッティ」特番対決

2010年08月31日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』の連載コラム「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分は、日本テレビとNHKによる、映画「借りぐらしのアリエッティ」のドキュメンタリー対決について書きました。


見出し:

日テレ「アリエッティ」特番はNHKを見習え

コラム本文:

すでに600万人を動員し、興行収入も70億円を超えたという映画「借りぐらしのアリエッティ」。

先週、日本テレビはNEWS ZERO特別版「借りぐらしのアリエッティを支えた職人たち」を放送した。

「密着120日」が売り文句だ。

番組には宮崎駿監督や今回抜擢された米林宏昌監督の他、“職人たち”として作画監督、美術監督、音響監督などが登場した。

彼らは作品をジブリ・ブランドたらしめる原動力だが、取材が中途半端で総花的なのが致命的。

たとえば45人のアニメーターを束ねる作画監督の仕事など、もっと詳しく見せて欲しかった。

また、この番組が「NEWS ZERO」の番外編とはいえ、ジブリの仕事場を見学するだけの鈴江奈々アナや、作曲者に形ばかりの質問をする宮本笑里は不要。

その分の時間を、“背景画の天才”と呼ばれる美術監督や、登場人物の心情を表す音を“手作り”する音響監督の職人技に、1分でも多く回すべきだ。

今月10日、NHKで「ジブリ 創作のヒミツ~宮崎駿と新人監督 葛藤の400日」という秀作ドキュメンタリーが流された。

悩みながら作品と向き合う米林監督。じっと見守る宮崎監督。

密着400日は日テレの120日を大きく上回るが、単に日数の問題ではない。

「何を見せたいか」が明確かどうかで、番組の質は大きく違ってくるのだ。

(日刊ゲンダイ 2010.08.31付)