明日元気になれ。―part2

毎日いろいろあるけれど、とりあえずご飯と酒がおいしけりゃ、
明日もなんとかなるんじゃないか?

真実を書くということ

2011-11-26 01:26:38 | 仕事
出張から帰って来た。
1キロ太って・・・

いつも東京へ取材に行くと、太って帰ってくる。
朝昼晩としっかり食べ、日中は車で移動なのでほとんど歩かず、
さらにホテルではほとんどベッドの上で暮らすので動くこともあまりない・・・
という状態なので、まあ、太るのは当然なのだが。

向こうではまた美味しいものをご馳走になった。
仕事をもらっている身分なので、ただただ恐縮
しかし、ありがたい。

今回はお豆腐をたくさん使った懐石のコースだった。
その一部。









日本酒「而今」「十四代」など、いいものが置いてあり、堪能した。

夫がいつも「かおりは恵まれてるなぁ」と言うが、自分でもそう思う。
本当にありがたい。

「おいしいものが食べられる」からじゃない。(もちろんそれもあるけど)
もてなしの心をもった人とか、気さくにお酒を酌み交わせる人とか、私を信頼して仕事を任せてくれる人とか、
そういう寛大で人間的に優れた人といつも一緒に仕事ができること。
それが、本当にありがたいし、それを思うだけで涙が出そうになる

仕事を一生懸命、誠実にしようと、また心に誓う。

今回もたくさんの人を取材したが、久しぶりに泣かれた。
私は昔から、なぜか取材中に泣かれることがよくあって・・・。
(決して私が泣かしてるわけではない)

今回も、某技能試験に受かった人にインタビューしていたのだが(合格率8%を切る難関の試験だ)
どんな想いでこの試験に臨んでいたのか、という話を聞いていたときに、突然言葉を詰まらせ、ポロポロと泣かれてしまった。
正直、焦る。
ティッシュを出してあげたら、少し笑って「恥ずかしい・・・」と言いながら鼻をかんで、ぼちぼち話せるようになってくれた。

そういうとき、本当は私まで泣きそうになる。
感情移入を特技としている(?)私だから、そりゃ、もうその時は、自分のほうがもらい泣きをこらえるのに必死で・・・。

息子さんがいるらしい。
離婚したのかなぁ、母子二人暮らし。
息子さんには夢があった。
その夢に向かって頑張っていた。
でも、なかなか叶わなかった。

それで、彼女は社内でもまだ2人しか合格していない難関の試験を受ける決意をした。
1年目は不合格だった。
息子さんは夢をあきらめたのだろうか・・・就職した。
今は離れて暮らしているらしい。
でも、彼女は勉強を続け、2年目も試験を受けた。
そして、見事合格した。

「努力することの大切さを、自分の背中で教えられたらいいと思って・・・」
そう言って、ポロポロ泣いた。

「伝わっているのかは、わからないんですけど」

謙遜ではなく、本当にそうなんだろうな、と思った。
だけど、きっと伝わっている。
そういうひたむきな誠実さが彼女にはあった。
それを息子がそばで見ていて感じないわけがない。

取材後、彼女も息子さんも、どうか幸せになりますようにと、自然に祈る自分がいた。

ひたむきに一生懸命生きている人を見ると、自分も頑張ろうという気持ちになるね!
もうこんなふうに人に泣かれるような取材はないだろうと思っていたのだけど、あったなぁ。
いろんな人の人生を、想いを、垣間見れる。
だから、この仕事は辞められない。

思い返せば、もう何百人も取材した。
はっきり知っているだけでも、その中で3人亡くなった。

1人はまだとても若かった。

もう1人は60歳くらいで、私に大切なことを教えてくれた。
たった一度の取材だったけど、印象深かった。

「カッコいいことなんて書かなくていい。あなたは、真実を書いてくださいよ!」

取材の後、私にそう言った人だ。

「真実」という言葉がとても重くて。
私は必死にそれを追った。

記事を書いたあとで、「真実が書かれていたと思います」とメッセージをいただいたときは、本当に嬉しかった。

でも、「真実」を嫌う人もいた。
そのことで私はずいぶん悩んだし、葛藤した。
最終的に、「嘘」はダメ、「真実」を書けばいいわけでもない。文章は「虚構」が大事なんだ、と学んだ。
それが、プロとして文章を書く意味なんだと。

「嘘」も「真実」も書くのは簡単だ。
「虚構」を書くことこそが、プロなんだと知った。

「虚構」と表現してしまうと、反論されそうだが、まあ、言葉通りの意味ではなく、もう少し深い。

例えば、さっき取材中に泣いた彼女の話。
このブログには「真実」を書いた。
でも、実際の記事にはここに書いたようなことは書かない。
だけど、もちろん「嘘」も書かない。
さっき書いたようなことを含めつつ、別の文章表現をするということだ。

相手が何を書いてほしいのか?
この媒体では何を表現すべきなのか?

まずこの2点が先にあって、その上で、自分の視点や想いを入れる。
そういうことが、駆け出しのライターの頃はできなくて、ずいぶん悩んだんだ・・・
まず「書きたい」気持ちが先走って。

「真実」さえ書けばいいと思っていたのだ。

取材をたくさん重ねて、決してそうではないとわかってから、
なおさらあの亡くなった「真実を書いてください」と言ってくれた方の言葉がよくよみがえった。

だって、私はたぶん、真実を書きたいんだと思う。

「カッコいいことなんて書かなくていい。あなたは、真実を書いてくださいよ!」

今でも宮地さんの言葉をよく思い出す。
ギロっと光る目。
近寄りがたい雰囲気。
昔気質の職人で。
でも、とても仕事に誠実で、優しい人だった。

向こうは、たった一度会っただけの小娘(当時はそうだった!)のことなんて、生きていたって覚えてないだろう。
だけど、私は忘れないな。
私に「真実を書け」と言ってくれた、唯一の人だから。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (かおり)
2011-11-29 01:07:51
>ひろさん

ありがとうございます。
そんなふうに言っていただけると、
嬉しくて、私のほうがぐっときます。

実際の記事は、感情的に書けない媒体なので、
ここに書いたようなことはあまり盛り込めないんですけどね・・・。

また明日から頑張りましょう!
私も頑張ります!
こちらこそ、ありがとう。
返信する
Unknown (ひろ)
2011-11-28 19:41:03
 いい人に出会っていますねえ。
 ぽろぽろと涙がこぼれてくる文章です。
 きっと実際の記事読んだら、立っていられないだろうなあ。
 また、明日から頑張ります。そんな気持ちにさせてくれる文章書きだと思いました。
 ありがとう。
返信する