オカンと私

うちのオカンは、わりと上品な人だ。
子供の頃から、電話に出ると、友達などに「お母さん、上品やなー」とよく言われていた。
いろんなことに、きちん、きちんとした人で、少し前までは誰よりも尊敬している人だった。

でも、最近、尊敬する気持ちはもちろんあるが、
「この人、私にそっくり？！」
と思うことが増えた。

昔は、上品さや几帳面さ、優等生な面しか見えていなかったのだが、最近はオカンの「自由奔放」「一匹狼」「勝手気まま」「結構いい加減（よく言えば柔軟性がある）」「思ったことが口に出る」など、「あれ？」という部分ばかりが目につくようになった。

先日も、彼の両親とうちの両親との顔合わせのとき、「あちゃー　この人って……」ということがあった。

大阪の某ホテルの眺めの良い個室。
一同が緊張の面持ちで向かい合い、食事をしていたときのことだ。

来る料理、来る料理、「これでもか！」といわんばかりの「寿器」でやってくる。
「打ち出の小槌」型の器、「鶴と亀」入りのお椀、「扇」型のお皿……

みんな話題もないものだから、お料理が運ばれてくるたびに、「あらー、すごい器」「まぁ、おめでたい」などと器について話題をふっていた。
私も合わせて「うわー、すごいね」などと言っていたのだが、オカンだけがずっとしゃべらない。
機嫌悪いんかなぁとハラハラしていた。

そうしたら、何度目かに彼のお母さんが、「まー、すごいキレイな器」と言った時、オカンが口を開いた。

「まあ、普段の生活では使えませんけどね」

……
言った！

あーあ、言っちゃったよ、この人は……

一瞬の気まずい空気をオカン以外は察知していたが、本人だけは気付いていないようだった。

後で彼も「かおりのお母さん、言ったなー」と苦笑。

しかし、後日、オカンにそのことを言うと、
「あらー？　そんなこと言った？　気をつけないとね」
と、舌を出していた。

ああ……
悲しいことに、似てる……
この思ったことをポロッと口に出して、周りをヒヤッとさせながらも、本人だけ気付かない感じ……
私にそっくりやん！！

どうして昔は気付かなかったんだろう？
最近は、オカンの自由奔放な面ばかりが目に映る。
この人、こんな人やったっけ？！