『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・アイルランド国に/黒人少女体操選手への人種差別❺(最終回)

2023年10月24日 21時40分06秒 | スポーツ

 

アイルランド国として、世界が納得できる解決を

 

 前回❹の「記事の前半」では、【アイルランド体操協会(GI)の「3声明※註①曖昧さを論じ、「解決」へ向けた「問題点」を指摘しました。そこで「最終回」の今回は、以下のように【問題解決へ向けて】を「提言」したいと思います。

 

【提言:問題解決へ向けて】

 《1》問題解決」に当たっては「アイルランド国政府」が中心となってGI:アイルランド体操協会」他の関連組織※註②)を統括する形で、作業が進められる事を願うものです。また実際にそのようなプロセスを辿(たど)のではないでしょうか。そうでなければ、この問題の「真の解決」は難しいような気がします。

 その理由として、本シリーズ❸の「SARI (Sport Against Racism Ireland)」の【声明】を再掲します。筆者が記した【注目☛】の箇所では、以下ⒶⒷように綴られていました。

 

 【注目☛……しかし、2022年3月、「SARI」はスポーツ大臣に対し、この事件についての調査を行うよう要請しましたが、スポーツ省による承認を除いて、それ以上の返答はありませんでした。

 【注目☛……このリクエスト(要請)」は「GI:アイルランド体操協会」の「CEO(最高経営責任者:Chief Executive Officer)」にもコピーして渡されました この事件とそれへの対応は、多様性と包括性を促進するために、どれだけの取り組みが必要であるかを浮き彫りにしました。

 

 上記ⒶⒷ整理すると、以下㋐㋑㋒㋽となるでしょう。

 ㋐事件直後の2022年3月、少なくとも「アイルランド国(政府)」の「スポーツ省・同大臣」は、「①メダル授与スルー事件」「②その関連動画及び「少女選手・家族」からの「③人種差別訴えの事実」を把握していた。

 ㋑しかしスポーツ省・同大臣」及び「GI(CEO=最高経営責任者)」は、SARI 」からの「事件調査の要請」を、実質的には受け入れなかった

 この「㋐㋑2点」すなわち「アイランド国政府)」としての「当初の対応の不備」が、「事件動画の拡散」を助長したように思います。

 ㋒その結果「GI」は、18か月後の2023年9月、国際社会に対する「謝罪声明(2023年9月)」を余儀なくされたのでしょう

 しかし、それでも「真の解決」には到らず、「少女選手・家族」は「GI」が公式に謝罪しなかったとして、スイスの「体操倫理財団」にこの問題を持ち込む意向と言われています(※註③)。

 《2》「アイルランド国政府」主導による「問題解決」の具体的な「第1段階」として、GI」の抜本的な「組織改革」が不可欠ではないでしょうか。

〈1〉そのためには「スポーツ界」に限定することなく、「教育界」や「実業界」等から「公正公平な第三者」を入れ、「組織」を新たに作り上げるくらいの意志が必要でしょう。

 本シリーズ❸❹で採り上げた「GI」の3声明は、問題の深刻さに対する真摯な態度には程遠く、何よりもその解決意欲希薄さには驚くばかりでした。

 事は「人種差別」という極めて深刻かつ重大なテーマです。それに意欲的に取り組まないという姿勢は、いっそう深刻な人種差別」を意味するのではないでしょうか。少なくとも筆者や身近な友人達は強くそう感じました。

〈2〉組織改革」に当たっては、「組織機構自体再編成」をはじめ、「役員人事」や「事業計画」さらには「運営規定」等についての抜本的な見直しも必要となるでしょう。

 以上《1》及び《2》のすみやかな実現のためにも、「アイルランド国政府」主導による「最終的な真の解決」を願うものです。

 筆者が「政府主導」に拘(こだわ)る理由は、「スペインサッカー協会・前会長ルビアレス氏」の「キス騒動問題」の早期解決が、念頭にあったからかも知れません※註④

 「スペイン政府」は非常に早い段階で「キス騒動問題」に関与しており、「司法当局」に対する手回しの良さに感心させられました。スペインサッカー協会執行部」を牛耳った難攻不落のルビアレス氏でしたが、一気に辞任へと追いやられたのは周知の通りです。

 「有無を言わさぬそのスピーディな解決」に、海外のマスコミや人々から多くの賞賛の声があったのは当然でしょう。結局その「スマートでスピーディな処理」が、スペイン国のイメージ向上に貢献し、計り知れない価値をもたらしたように思われるのですが……。

 それに比べて、今回の「黒人少女体操選手」に対する「人種差別問題」。その「解決への道のりの不透明さ」と「有力な解決主体の不在」とが、懸念されるところです。「アイルランド国そのものに対する問題として、「世界の目」が注がれている事を、同国国民のみなさんに訴えたいと思います。

 他国の事をとやかく言いたくはありませんが、今回の「人種差別事件」については、「アイルランド」や「ダブリン」に人一倍想いを寄せる一人として、見過ごすことができませんでした。

 だからこそ筆者は、ここまで5回もの長文の連載を続けることができたと思います。当初3回で連載を切り上げようとしたところ、友人知人の数人より〝包み隠さず詳細に伝えて欲しい〟との強いリクエストとともに、さまざまな意見を聞くことができました。

 同時に彼ら全員が筆者の論旨に賛意を示してくれたことは、何よりもの励みであり、その中の一人(20年来の知己)より三日前、次のようなメールを受信しました――。『最終回は、昔のように舌鋒鋭くを期待!』(※註:下線も「知己」)と。

 久しぶりに目にした〝舌鋒〟の文字に、懐かしさと共に静かなる闘志が湧いて来るような気がしました。その「二文字」に勇気を得、最後を締めくくりたいと思います。

✤✤✤

 今回の「人種差別事件」が、「アイルランド国政府)」としての初期対応の不備にある事は衆目の一致するところでしょう。その最大の要因は、やはりSARIからの「調査要請」に、「国(政府)」として積極的に取組まなかった事にあるのかも知れません。

 あくまでも筆者個人の推測ですが、「アイルランド体操協会(GI)」の「公式の謝罪声明」が、事件から18か月もかかったのは、「アイルランド国政府)」からの何らかの指示によって、GI」が主体的に動けなかったからではないでしょうか。

 しかし、それが事実であったとしても、やはり「アイルランド体操協会(GI)」自体の3声明曖昧さが「課題」を残した事は事実です。

 筆者は礼を失しないためにと曖昧さ」という表現にとどめましたが、これらの3声明に目を通すたびに、実のところ〝やり切れない思い〟でいっぱいでした。

✤✤✤

 

アイルランドのみなさん! 真の行動を

 最後に、筆者の〝思いの丈(たけ)〟を申し上げます――。

 3声明」とは、〝誠実さに欠けた弁解がましさいっぱい〟のメッセージと言わざるをえません。すなわち謝罪声明:2022年3月の「GymSTART イベント」に関するGIの声明そして明確化の声明――マイリード・カバナー】がそれです。

 この3声明の共通点は、「メダル授与をスル―された少女」に対する〝心を込めた思いやり〟など、〝これっぽちも感じさせない無神経さ〟とでも言うのでしょうか。

 そのような〝無神経さ〟すなわち〝配慮の欠如〟は、自らの差別意識や行動を〝止むを得ないもの〟として無意識のうちに正当化することであり、極めて〝危険な潜在意識〟と言わなければなりません。

 そのような〝危険な潜在意識〟が、「GI」をはじめ、「家族・集団・地域・民族・国家」というそれぞれの「人間集団」において、集団内の群衆心理〟として無責任に同調したとき、どのような行動が生み出されるでしょうか

 例の「メダル授与スルー事件の動画」が、実に端的に物語っています。あの時の「メダル授与者の女性」をはじめ、「MEDIAカメラマンの男性」「COACHと思われる男女」「主催者スタッフらしき女性」達に加え、「画面には映っていない人々」……。無論、全ての「大人」だけでなく「メダルを受ける少女」を含む「一定年齢以上の子供達」も含まれるでしょう。

 そういう状況下にあって、〝素晴らしい行動を見せた〟のは「黒人少女」の「右側にいる少女」だけでした。少なくともあの「82秒間の真実」においては。

 〝あの時〟「大人」や「一定年齢以上の子供」達をはじめとする人々すなわち「アイルランドの国民」は、何をどのように考えながら沈黙していたのでしょうか。筆者の関心はただその一点にあると言えるでしょう。

 アイルランド国民」のみなさん。どうか「GI」の「3声明」に目を通してください。といって筆者は、「GI」を非難するために勧めているわけではありません。

 そうではなく、あのような3声明が、そのまま〝世界へ向けて発信され続けているという事実〟の意味を、冷静に考えていただきたい……ただそれだけです。

 そして現在の3声明に代わる〝真心のこもった誠実な声明〟を期待したいと思います。もちろんそのためには、「GI」と「あの少女や家族のみなさま」との「完全な和解」が絶対条件となるでしょう。

 そのためにも、「アイルランド国」の英知と行動力とによって、世界に誇りうる新しいアイルランド体操協会GI)」の誕生をひたすら祈っています。(了)

 

✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤

註釈

※註①:本シリーズ❸の謝罪声明と❹の:2022年3月の「GymSTART イベント」に関するGIの声明】【明確化の声明――マイリード・カバナー】を参照してください。

※註②:「SARI (Sport Against Racism Ireland)」や「GAA(Gaelic Athletic Association/ゲーリック体育協会)」などです。

※註③:現地の新聞「アイリッシュ・インディペンデント」は9月24日、少女の母親の話を匿名で報道。それによると、母親は「アイルランド体操協会(GI)」が公式に謝罪しなかったと考えており、スイスの「体操倫理財団」にこの問題を持ち込む意向とのこと。

 ◆【記事】黒人少女にメダル渡さず、「アイルランドの体操協会」大会。協会が謝罪。(BBCnewsJAPAN)(再掲:本シリーズ❶)

※註④:この問題については、前5回シリーズの《スペイン・サッカー連盟会長の母上様へ》をご覧ください。

 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。