「アイルランド体操協会(GI)」に対する不信感と失望
さらなる世界的な拡がりを見せつつある、《黒人少女体操選手に対する表彰メダルの授与スルー事件》――。SNSを通じて全世界に拡散された「82秒間の動画」を観るたびに、そしてその世界的な反響の大きさを実感するたびに、この事件が抱える“2つの事”に気付かされました。
1つは、〈人種差別〉という次元を遥かに超えた〈人間の尊厳〉についての問いかけであるという事。
2つは、問題解決の“最終的な当事者”は、おそらく「アイルランド体操協会(Gymnastics Ireland:GI)」ではなく、「アイルランド(Ireland)」国にあるという事。というより、是非そうあって欲しいと思います。
以上はあくまでも私見にすぎないわけですが、「アイルランド国民全体」の「緊急課題」として、政府主導の取組みを切に願うばかりです。またそうでなければ、容易に収拾が付かないような気がします。
私見ついでに申し上げれば、筆者は以前より「アイルランド」に関心があり、首都「ダブリン」は「個人的に行ってみたい世界の都市:Best20」の一つです。その理由の一つは、好きな作家のオスカーワイルやジェイムズ・ジョイスの出身地ということでしょうか。学生時代に手に入れたジョイスの短編集『ダブリン市民(Dubliners)』(新潮文庫:安藤一郎訳)は、愛読書の一つです。
文学等については最終回に少し触れるつもりでが、ここで筆者が言いたいことは、個人的に好きなダブリンそしてアイルランドであればこそ、“世界の人々が共感できる解決”を図って欲しいという、ただそれだけです。
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そこで思いきって苦言を呈したいと思います。『アイルランド体操協会(以下「GI」と略記)』による「黒人少女選手とその家族」に対するこれまでの“不誠実な対応”には、強い不信感を抱いています。
それに加え、先月9月25日に出された《GIの謝罪声明全文【記事D】》と、それに関連する《2つの声明(GIのホームページ)※註①》に目を通したとき、“言わずもがなの事”を並べただけの“実行力の無さ”に大変失望しました。
だが以上のような不信感と失望こそが、筆者に「この問題」に取り組まなければならないとの強い意志をもたらしたのは確かです。
この記事の真意は少しずつ明らかになると思いますが、決して非難を目的とするものではありません。
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読者各位には、最後に◆【動画A】(下段)を観ていただくわけですが、この【動画】をご覧になった方は、かなりの数に上ると思います。しかも「82秒」と短いため、最低でも5、6回、いや10回以上と言う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
かく言う筆者も“公平な立場を保ち、執筆意欲を高揚させる”ために、10回以上……どころか、この時点ですでに20回は“全体を通して”観ています。“部分的な繰り返し”だけでも、数十回となるはずです。本シリーズは一応3回連載の予定ですから、真実の再検証のために、少なくともあと10回……いえ20回は「82秒」をフルに観ることでしょう。
しかしフルに「10回」観たとしても、「82秒×10回=820秒=13分40秒」にすぎず、倍の20回にしても「27分20秒」と、「30分」から“おつり”が来ると言う訳です。
余談はさておき、まずは以下の《【動画】の視聴にあたって》をお読みください。
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《【動画】の視聴にあたって》
以下は【動画】に登場する〈メダルの授与を受ける少女12人〉と〈大人5人〉についての記述であり、赤字は注目すべき「少女」と「大人」です。
(1)メダルの授与を受ける少女たち
画面左より「①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫」の少女12人が並び、「黒人の少女」は左から5番目の「⑤」としています。なお「③④⑤」の少女3人は、「体操クラブ」が同じのようです。3人とも「一部に薄い青緑色が入った黒地のレオタード」を身に付けています。その「両肩から袖」にかけて「白のダブルV字」が入っています(※註:④の少女は、レオタードの上に黒いタイツを履いていますね)。
(※註:動画がスタートした時、画面の左端には既にメダルを掛けてもらった一人の少女が映っていますが、0:20前後で画面から消えたようです。)
少女①:一番左端の少女。赤いウェアに、下は黒のタイツでしょうか。
少女②:長い髪で濃紺のレオタードの子。
少女③:既述のように少女④⑤と同じ「体操クラブ」のようです。
少女④:【動画】がスタートした時、ちょうどメダルを掛けてもらう瞬間でした。この少女に注目してください。特に「0:30」以降の動きには、心を打たれるものがあります。
少女⑤に何やら語りかけています。そのあとの少女⑤の行動からして、おそらく少女④は『ちゃんとメダルをくださいって言った方がいいわよ』と言ったのかもしれません。その言葉に勇気づけられた少女⑤は、とにかく「メダルの授与をお願いしよう」と言いたそうな表情で、Ⓐ女の方に視線を送っているようです。
しかし残念ながらこのとき、Ⓐ女は「足りなくなったメダル」を取りに行ったため、画面右端から消えていたのです。
少女⑤:「黒人の少女」:画質の鮮明度が低いため、少女の顔全体ことに目や口元の表情がぼんやりとしています。そのため少女の“微妙な心の動きや感情”を的確につかむことはできません。それでも……。
少女⑥:長袖部分がグリーンのウェアを着ているのでしょうか。メダルを掛けてもらった後も少しも“はしゃぐこと”なく、右隣の少女⑤に気を遣っているのは明らかです。
少女⑦:お下げ髪の小柄な子。この子も少女⑥同様、少女⑤に気を遣っています。なお1:04頃、画面左手の誰かに向かって手を振ったようです。『ここよ!』と自分の存在をアピールしたのでしょう。まもなく背中に「COACH」のロゴが入ったⓒ女が現れ、スマホでこの少女を撮影します。すぐそこに同じクラブと思われるⒹ男が現れ、同じようにスマホで撮影をしています。
少女⑧:薄紫色のレオタードを着た長身のお下げ髪の子。メダルを掛けてもらった喜びをほんのちょっと全身で表現しています。それでも少女⑤を想い、どこか抑えたような感じも伝わって来ます。
少女⑨:赤いウェアの子。
少女⑩:お下げ髪をしたライトブルーのレオタードの子。Ⓐ女はこの少女にメダルを渡し終えたあと、「足りなくなったメダル」を取りに行くために一旦画面から消えています。
少女⑪:髪をポニーテールにしたブルーの上着に黒いパンツの子。他の少女たちより一歩前に出ています。
少女⑫:黒いレオタードの子。画面右端のため、ほとんど右半身だけが映っています。
(2)5人の大人たち(登場順にⒶⒷⓒⒹⒺとしています)
Ⓐ女:メダルを授与する「GI」の女性。誰もが感じると思いますが、彼女は“人種差別”などどこ吹く風とでも言うように“Going my way”であり、実に堂々とした態度で「少女⑤」をスル―しています。
ほとんど後ろ向きのために顔の表情や口元の動きは見えませんが、おそらく「メダルを掛ける少女達」には、それなりの笑みを見せながら声を掛けているのでしょう。
Ⓑ男:カメラマン。彼の背中に注目してください。「MEDIA」のロゴが入ったベストを着ています。すなわち彼は「メダル表彰を受ける少女たち」について、何らかの「報道」を前提としているものと思われます。ベストはもちろん主催者(GI)より提供されたものでしょう。
ⓒ女:動画開始から1分過ぎ(1:04頃)、画面手前左より「靴紐を結び直すかのような仕草」で登場するポニーテールの長い黒髪の女性。画面が不鮮明なために、ジャケットの背中のロゴを読み取ることはできませんが、おそらく主催者GIのスタッフではないでしょうか。
Ⓓ女:表彰を受けた「少女⑦」の「所属クラブ」の「コーチ」です。背中に「COACH」のロゴがはっきりと見えます。
Ⓔ男:おそらく彼も「Ⓓ女」と同じクラブの「コーチ」でしょうか。背中のロゴは「Ⓓ女」と同じ「COACH」のような気がするのですが(✦正面でないために、正確に読み取ることができません)。「少女⑦」を撮影しています。
お待たせいたしました。
それでは下記を☟クリックの上、【動画】をご覧ください。
◆【動画A】黒人少女だけにメダルを渡さない女性。それを指摘しようともしないメディア・カメラマンやコーチ等(1:22=82秒)※註②/※註③。
なお次回は「82秒間」を「数秒~10数秒間」に区切りながら、《真実の瞬間》を具体的に再検証してみたいと思います。
(続く)
〔参考〕☟クリック
◆【記事A】黒人少女にメダル渡さず、アイルランドの体操協会大会。協会が謝罪。(BBCnewsJAPAN)
◆【記事B】黒人少女だけ表彰せず。過去の動画拡散。体操協会謝罪-アイルランド(朝日新聞9月26日5:41配信)
◆【記事C】黒人少女スルー表彰式に体操女王が苦言。少女へ送ったメッセージに反響。「あなたこそ真のヒーロー」「すばらしいロールモデル」
◆【記事D:謝罪声明全文】黒人少女だけメダル付与せず:アイルランド体操協会が発表。SNSは「人種差別」批判II相次ぐ(2023年9月27日午前11:20プライムオンライン編集部)
〔註釈〕
※註①:次回に掲載予定です。「アイルランド体操協会(Gymnastics Ireland:GI)」の「ホームページ」のもの。
※註②:この【動画】は「モハマド・サファ氏」による「X(旧ツイッタ―※註③)」のものです。同氏は「ECOSOC」の主要代表とのこと。
◆【公式サイト(日本語)】「経済社会理事会(ECOSOC)」ー国際連合広報センターより
「ECOSOC(イコソック)=Economic and Social Council=経済社会理事会」は、主として経済、社会、文化および保健の問題、ならびに人権と基本的自由の問題を取り扱い、また国連と専門機関の作業を調整する役割も果たす。理事国は54カ国。うち18カ国は毎年「総会」により任期3年で選出される。
※註③:「ツイッター」は今年7月24日、ブランド名を「X(エックス)」に変更。 それに伴い「青い鳥のロゴ」も廃止。 ツイッターを所有するイーロン・マスク氏は、投稿を表す「ツイート」という言葉も変更すると発表。 今後は「x's(エクスズ)」と呼ぶとのこと。