大学4年の頃、夢中で『ファウスト』(ゲーテ)を読み耽りました。いまも手元にその当時の「岩波文庫」(訳:相良守峯)がありますが、上下2巻で900ページを超える長編です。久しぶりに開いて見ると、赤鉛筆でラインを引いた箇所が結構眼に付きます。
個人的に一番好きな箇所が次の一節です。主人公の「ファウスト」が、悪魔「メフィストフェレス」に語りかける場面です。というより、宣言し、約束するという場面でもあるのですが、最初の部分はいろいろな機会にご覧になったことでしょう。多少アレンジした表現が、歌や化粧品などのCMフレーズに使われたこともあります。確か『時間よ止まれ!』というのではなかったでしょうか……。
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私がある瞬間に対して、留(とど)まれ、
お前はいかにも美しい、といったら、
もう君は私を縛り上げてもよい、
もう私はよろこんで滅びよう。
もう葬(とむら)いの鐘が鳴るがいい、
もう君のしもべの勤めも終わりだ。
時計は止まり、針も落ちるがいい、
私の一生は終りを告げるのだ。
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「太字」は、筆者自身が特に波線で強調した部分です。「訳者」によっては、「瞬間」を「時間」や「とき」としているものもあるのでしょうか。しかし、私は「瞬間」が相応しいように想うのですが……。この「フレーズ」については、別の機会に触れてみたいと思います。
ともあれ今回の舞台において、 “とき” や “時間” そして “瞬間” とはどのようなものなのでしょうか……。もちろん、その答えは私も知りません。いえ、そもそも “その答え” があるのかないのかも……。
さて、いったいどのような “切り口” の舞台となるのでしょうか。楽しみです。
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西南学院大学演劇部 2014夏季定期公演
『鳩とか腹とか振り子とか、きっと君の体内には廻るクロニクル』
・作/大矢場 智之 ・演出/花浦 貴文
[あらすじ]
…1個くらいはまともな時計作りたいんだな…
最高の時計職人と謳われていた父・ルマンドの後を継ぐべく、時計職人になることを決めたコパン。
そんなコパンを様々な試練が待ち受ける!
購入者からのクレーム、起死回生の万国博覧会への出店、国の威信をかけた時計塔建設…
それらを乗り越え、日に日に周りに認められコパンは職人として成長してゆく…
しかし、彼女の作る時計には重大な欠陥があり、それが国を巻き込む大事件へと発展していく!
そんな中で、コパンは時計職人としての生き様を問われるのだった。
[日時] ※「開場」は、各「開演」の30分前からです。
6月13日(金) ・18 : 30開演
6月14日(土) ・13 : 30開演 ・18 : 00開演
[場所]
〒814‐0002 福岡市早良区西新6‐2‐92
西南学院大学内 西南会館3階 大集会場
◆西南学院大学演劇部の会場案内(「アクセス」に詳細があります)
[料金]
・前売り券 200円 ・当日券 300円