「スペイン・サッカー連盟会長」の母親のハンガーストライキ
女子ワールドカップ(W杯)優勝の「スペイン代表選手へのキス問題」。すなわちスペイン・サッカー連盟(RFEF)の「ルイス・ルビアレス会長」による、「ジェニファー・エルモーソ選手」の「唇へのキス事件」は、思わぬ方向へと走り始めたようです。
「アンヘレス・ベハール」というルビアレス会長の母親が、息子への「非人道的な扱い」に抗議するため、「教会」で「ハンガーストライキ」を開始したとのこと。報道によると、母親は「(息子に対する)非人道的で血なまぐさい狩りの解決策が見つかるまで」続けると語ったようです。別のニュースでは、このハンガーストライキを支持する人々が、母親が籠るスペイン南部の「モトリルの教会」やその周辺において、抗議行動を行う様子も伝えられています。
一時は「辞任濃厚」と見られていたルビアレス会長ですが、8月25日に開かれた緊急会議において、『私は辞職しない。最後まで戦う』と辞任の意向を真っ向から否定したようです。その際、『偽物のフェミニストが(自分を)殺そうとしている』と主張しています。(唇への)キスに関しても、同会長は「軽いものだった」として、事前に「エルモーソ選手の同意」を得ていたとも述べていました。
しかしこの発言に対し、当のエルモソ選手は『自分の言葉が疑われるのは許せないし、言ってもいない言葉が捏造されるのはもっと許せない』と憤りを示しています。同選手はSNSにおいて、『自分が弱者で、攻撃の被害者だと感じた。私はただただ軽視されたのだ』とコメントするとともに、RFEFから「ルビアレス氏の行動を正当化するよう、絶えず圧力をかけられてきた」とも述べています。
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『カルメン』の国スペイン
以上の報道を受けて、筆者の脳裡に直観的に閃いた言葉は、
良きにつけ悪しきにつけ、《この母親にして、この息子あり。》……いや、《この息子にして、この母親あり。》ということでしょうか。
それにしても大変気丈な「お母さん」ですね。ルビアレス会長個人の「家族や家庭のこと」は一切不明ですが、46歳の息子に対する“母のクリスチャン愛”の何と熱情的で頑固であることか。
さすがはオペラ『カルメン』の舞台となった「スペインの女性」だと、筆者は思わず感嘆の声を上げるとともに、その“狂おしいまでにひた向きな想い”に、しばし適切な言葉を見い出すことができませんでした。それでも「カルメン組曲」の「ハバネラ」のメロディが、しばし頭から離れなかったようです。
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その人生を誤らせるまでに「ドン・ホセ」を魅了したと言われる「ロマの美女カルメン」。タバコ工場の仲間を刺したカルメンを連行する途中、その誘惑に負けて彼女を逃がした「竜騎兵ドン・ホセ」。一兵卒に落とされた彼は、上官を傷つけて脱走します。
その後にカルメンと暮らすようになるわけですが、犯罪者となった彼は、カルメンの心をつなぎとめるためには、殺人もいとわないという人間になっていました。だがそのカルメンは、「闘牛士ルカス」にすっかり心を奪われていたのです。その結果、嫉妬に狂ったドン・ホセは……………というのが『カルメン』という物語の世界ですね。
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筆者は今回の「母親のハンガーストライキ行動」に対し、プロテスタント系のクルスチャンとして、何とも理解し難い気持を抱きました。ハンガーストライキという“あのような行動とそれ以前の想い”によって『神に助けを求める』ことを、はたして神は赦されるのだろうか……と。当然それは「聖書の許容範囲」であるか否かということでもあるのでしょう。
そこで次回、「一人のクルスチャン」としての「筆者の個人的な思い」を、「ルビアレス会長」の母親「アンヘレス・ベハール」さんへの「書簡」という形で、綴ってみたいと思います。
◆ビゼー/「カルメン」より(立教大学交響楽団:東京芸術劇場)2021.6.27(20:35) ☚クリック