『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・三十年の時を経た恋の返歌

2011年05月30日 20時51分16秒 | ■俳句・短歌・詩

 ≪恋のことなら短歌にきこう≫(NHKの再放送)という番組を観た。作者自身の自解が中心だが、残念ながら筆者は最初の5分ほどを見損なった。

 いずれも味わい深い「現代の恋歌」であり、中でも特に心を惹かれたのは今野寿美(こんのすみ)さんの歌だった。


 珊瑚樹のとびきり紅き秋なりきほんとうによいかと問われてゐたり  

 “問われてゐた” のは男性からの「プロポーズ」の返事。「OKの返事」を出したのに、「プロポーズ」したその男性は、『ほんとうにいいの? 』と念を押して来たという。

 珊瑚樹(さんごじゅ)の “紅(あか)さ” が、ことのほか印象的のようだが、その独特な色合いはかなりインパクトがあったに違いない。「とびきり」という表現に、“重大な選択” に臨んだ女性の心情が重ねられている。

 その彼女に「プロポーズ」をしたのは、同じ歌人で夫の三枝昂之(さいぐさたかゆき)氏。氏によれば、彼女はなかなか「うん」と言わなかったとのこと。諦めかけたときのOKの返事であったため、逆に心配になって、『ほんとうにいいの? 』と念を押したという。
 
 プロポーズを「する側」と「される側」――。

 互いに “恥じらいと不安” に溢れたプロポーズの瞬間が表現されている。『問われてゐたり』というゆったりとした言い回しに、“愛されている” という実感と、神聖な儀式ともいえるプロポーズの雰囲気が感じられる。


 
              ☆   ☆   ☆

 それから三十年後。三枝氏は、彼女の歌に対する“返歌”を送った。


 
 珊瑚樹がとびきり赤き秋ありきこの世に二人が知る赤さなり    

 “おしどり歌人” と呼ばれる夫婦。

  夫は語る――。

 『珊瑚樹の赤さと彼女の歌が、時間が経っても朽ちることのない風景として僕の中に根付いています。だから三十年経過しても、“返歌” を贈ることができるのでしょう。二人で時間を積み重ねてきたからこそ、心が近づき合うということです』。
 
 一方、今野さんも――、

 『ささやかですが、二人だけの “珊瑚樹” という、共通のそしてシンボリックな “赤さ” を持てることの “幸せ” のようなものが……』。

 
 「返歌」が、「紅い」を「赤い」としたのは、おそらく、「珊瑚樹の植物的な紅さ」だけではない、いろいろな意味を込めた「赤さ」を表現したのだろう。

 ところで、『珊瑚樹とびきり紅き秋なりき』(今野)と、『珊瑚樹とびきり赤き秋ありき』には微妙な違いがあるようだ。
 前者は後者よりも表現が柔らかい。ことに『秋なりき』は、『いま季節は秋になっていることだよ』と、受け身の感じで穏やかといえる。

 しかし、後者の『秋ありき』は、『季節は秋である。今このときこそ……』という、アクティブに何かを成し遂げようという、作者の強い意志が感じられる。

 もちろん女性の『秋なりき』を力強く受け止めたものだ。

             ☆   ☆   ☆

 

 そういう二人の「出会い」は、「源氏物語」の勉強会であったとのこと。三枝氏は語る。
 
 『五反田の駅で待ち合わせしたときでした。待てど暮らせど彼女は来ないんです。駅前を行ったり来たりしていました。私の記憶では“三時間” 待っていたのですが、彼女は“二時間” というのです。……待って待って、今野さんが来てくれた。これで彼女は、“三枝さんはそこまで私を待ってくれるのか” と、かなり点数が上がったと思います』
  
 すぐ横に座っている妻を、恋人時代の想いをこめて「今野さん」と呼ぶ夫。その夫の話を、静かに微笑みながら聞いている妻。

   何とも言えない穏やかさと優しさとに満ちている。その姿はとても自然であり、お互いの心に深い尊敬と愛情とが通い合っていることがよく判る。互いを認め合っている歌人夫婦の “格” のようなものを感じた。
 
 番組の最後に、案内役の濱中博久アナウンサーが、『まいりましたね』と言った。間髪いれずの、実に素晴らしい〝結びのひと言〟だった。

 確かに、本当に “まいった” お二人だった。



             ★   ★   ★   
  
 今野寿美(こんの・すみ) 1952年東京生。歌人。「りとむ」編集人。1979年「午後の章」(五十首)により「角川短歌賞」受賞。『花絆(はなづな)』『星刈り(ほしかり)』『世紀末の桃』(第13回現代短歌女流賞受賞)。※S

 三枝昂之(さいぐさ・たかゆき) 1944年1月生。歌人、文芸評論家。1978年、馬場あき子主宰の結社誌「かりん」に入会。同年、第2歌集『水の覇権』により「第22回現代歌人協会賞」受賞。1992年、三枝浩樹、今野寿美と共に歌誌『りとむ』を創刊、主宰となる。「宮中歌会始」選者。※W

 ※出典のWは「Wikipedia」、Sは「Spysee」より筆者において抜粋編集。

 

 

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◆異常に多い日本の原発(ハザード入門:1)

2011年05月27日 22時01分33秒 | ■ハザード入門 
  お待たせいたしました! 『ハザード入門』のスタートです!


  地球の全陸地面積のわずか「400分の1」の日本に、全世界の稼働原子炉の「8分の1」が存在

 稼働原子炉世界ベスト3:第1位「米国」104基。第2位「フランス」59基。第3位「日本」54基。しかし、米国は日本の国土面積の25.47倍、フランスは1.67倍

 いよいよ『ハザード入門』シリーズのスタートです。名称が、当初予定の『ハザードマップ入門』から「マップ」を除いたことについては、すぐにご理解いただけるでしょう。

 つまりは記述内容を、「ハザードマップ」に限定したものではなく、「災害」「防災」そして「危機管理」等にまで触れたいと思ったからです。その方が当初目的とした「ハザードマップ」のよりよい理解にもなるでしょう。何と言っても「防災」とそれに関する「危機管理」を、真剣に進めなければならないと感じたからです。

 連日の「原発」報道を考えるとき、「ハザードマップ」の理解だけで終わらせてはいけないと思いました。
 結論的に言えば、今わが国はさまざまな面において“深刻な危機”を迎えており、ことにこの「原発問題」は、国内外からの“不信や不安”をもたらせているからです。
 そこで「本シリーズ」のスタートに当たり、第1回目として「原子力発電所」を採りあげてみました。

 まず「次の数字」をごらんください。世界の「原子力発電所(原子炉)」の稼働状況です。データは「IAEA(国際原子力機関)」の「NUCLEAR TECHNOLOGY REVIEW 2010」によるものです。

 それによれば、地球上に存在する世界各国の「原子力発電所(原子炉)」は「29か国」総計「431基」となっています。
 以下はその「国別ランキング」です。いずれもデータ発表時点では「稼働中」でした
 
 稼働中「原子炉」数の保有順位は、「1位:米国・104基」、「2位:フランス・59基」、そして「3位:日本・54基」です。
 以下、「4位:ロシア・31基」「5位:韓国・20基」「6位:英国・19基」「7位:カナダ・18基」「8位:インド・18基」「9位:ドイツ17基」「10位:ウクライナ・15基」「11位:中国・11基」「12位:スウェーデン10基」「13位:スペイン8基」「14位:ベルギー・7基」「15位:チェコ・6基」となっています。
 ※2011年5月現在、日本での「稼働中原子炉」は「37基」のようです。

  
 以上のデータを「別の観点」から見てみましょう。
 地球の「総面積」は「5億0994万9000km2[海:3億6105万9000km2(地球表面の70.8% )、陸地面積:1億4889万0000km2(同29.2%)]となっています。
 377,930km2という「日本」の面積は、地球の「全陸地面積」の「0.25%」。すなわち「400分の1」の広さしかありません。その「わずかな面積」に、「全世界の稼働原子炉431基中54基」があります。その比率は「12.5%」つまり、全世界の「8分の1」の「稼働原子炉」が存在していることになります。

 もう少し現実的に比較しましょう。稼働原子炉の保有数が第1位の「米国」は、日本の2倍近い「104基」を稼働させています。同じく第2位の「フランス」は「59基」です。
 
 しかし、米国、フランスと「日本」の国土面積を比較するとき、日本の54基という数字がいかに多いかが判ります。
 「米国」の面積は9,629,091km2であり、「日本」の「約25.5倍」もの広さです。また632,759km2の「フランス」の面積は、日本の「1.67倍」あります。
 このことを踏まえて考えるとき、日本の原子炉の数が“異常なほど多い”ことがお判りでしょう。
 
 単純にこう考えてみましょう。米国の104基という稼働原子炉数とその国土面積を基準に、米国の「25.5分の1」の広さしかない日本の稼働原子炉数を割り出してみましょう。「104基÷25.5=約4.08」となります。つまりは、「4基」が国土面積に比例した稼働原子炉の数ということになります。

 以上の事実に、全世界の「地震」のほぼ「10%」が、この狭い「日本周辺」で起きていることを考えるとき、この原子炉数の多さがいかに“異常で危険”であるかが判ります。本当に何とかしなければならない数字ではないでしょうか。

 と言えば、専門家諸氏は、そういう単純比較で論じる問題ではないと言うでしょう。しかし、“異常とも言える原子炉数の多さ”は否定できません。
 
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◆自分のためから誰かのために:NHK「ニュースWatch」

2011年05月24日 22時16分10秒 | ■東日本大震災に学ぶ
 
 昨夜のNHKの「ニュースWatch」の「直球勝負」というコーナーに心を動かされた。
 今回の「大震災」が、人々にどのような『意識の変化』をもたらしたかという、東京・大阪(各15人ずつ)での「街頭インタヴュー」の分析レポートだった。

 街頭の人々は語る――。
 『何か自分たちにできることはないかと、毎日考えている』(中年女性)
 『みんな仲間なんだ。同じ日本人なんだと思う』(男性)
 『昨日まで普通に生活して来たことが続けられなくなる……。そういう事が簡単に起きるということを感じた』(研究職・男性34歳)
 『被災地のことを思うだけでなく、自分にできることをコツコツ続けて行かなければと思う』(NPOスタッフ・男性34歳)
 『笑顔で会話をたくさんする』(ドラッグストアでアルバイトをしているという女子大生・21歳)
 『これまであまり考えなかった家族の愛や、人と人とのつながりが大事であることをあらためて感じた』(旅行会社勤務・女性30歳)
 『明日があるということが、当たり前でないと言うことに気付かされた』(女子大生・23歳)

 自ら「街頭インタヴュー」に立った大越キャスターは、「イマドキの若者」がしっかりしていることを感じたと言う。
 街頭における「以上の意見」を凝縮すると、『自分のためから誰かのために』となるようだ。

 それは「節電・原発」に対する“意識の変化”に集約される(街頭回答者30人中21人が認めている)。『自分のため』というより、『誰かのために』という心の表れであり、つまりは「電力」を必要とする被災地の人々や、「原発」近隣に居住する人々のためにという気持が込められている。

 ある主婦が言うように、『原発はダメだ、停止しなければならないという簡単な問題ではない。これまで考えて来なかったわけであり、きちんと考える必要がある』というところだろう。『脱原発』というのは、多くの国民に兆し始めた正直な気持といえるのかもしれない。

 個人的にはこれを一歩進め、「原発はハザード」という危機意識をもっと認識すべきだと思う。この問題については、別の機会に触れてみたい。

 ともあれ、筆者の“節電意識”は格段の進歩を遂げつつある。大震災の3週間後に引越しをしたこともあり、生活パターンの改善には好都合だった。大いに心を入れ替えて取り組み始めた。できるだけ待機電力をなくし、スイッチはこまめに切っている。以前のように、テレビや蛍光灯を付けっ放しで眠り込むことなど“完璧にゼロ”だ。

 おかげで「電気料金」は、昨年の今頃に比べて“半減”した。我ながら驚いたし、自らを誉めてやりたいと思う。わが“節電努力”が、再興される「造船所」の「旋盤」や「溶接」等に貢献するかと思うと、モチベーションもいっそうバージョンアップするというもの。

 ……「造られた漁船」から、豊かな漁獲がもたらされるとしたら何と素敵なことだろう……。そういうイマジネーションがいっそうはっきりし始めている……となると、わが“節電意欲”はさらに向上すること請け合いである。……“自分のためから誰かのために”……。う~ん。これこれ。これに尽きる! やっぱり……誰かのためなんだ……

        ✱ ✱ ✱ ✱ ✱ ✱ ✱

 ――なんだか楽しそうね。……きっとこう言いたいのでしょ? 例の「高塩分加工海産嗜好品」を買い求めるのは、『自分のため』ではなくて『誰かのため』だって。つまりは、「イカの塩辛製造加工企業」の「売上と利益」のためなんだって。だからと言って、一度に5個も6個も買って来るなんて……。それにあなたの“イマジネーション”の「漁船」というのは、どう考えてもイカ釣り船じゃなくて?!
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◆ハザード事典(初版) ※「ハザードマップ事典」を改称

2011年05月21日 14時30分56秒 | ■ハザード入門 
  ハザード事典(初版)記述開始2011.5.21 補筆:5/24
 
 この『ハザード事典』は、まもなくスタートする『ハザード入門』(連載シリーズ)のために編集したものです。 

 選択した「用語・項目」については、『国土交通省ハザードマップポータルサイト』をはじめとする「関連サイト」より、筆者において抜粋・編集しました。
 ただし、[※G]は「原子力防災基礎用語Weblio辞書」、[※K]は「国土交通省の用語集」、[※Y]は「Yahoo(ヤフー)」、[※W]は「Wikipedia(ウィキペディア)」からの引用・編集です。 ※文字強調・下線は筆者。
 この「事典」は、そのつど「加筆・修正」します。ただし大規模の加筆修正でないかぎり「重版」すなわち「二版」以降の表示はいたしません。


<あ行>
 ◆埋土地(うめとち):沼沢地(しょうたくち)、河川敷(かせんじき)、谷などを周囲の土地とほぼ同じ高さにまで埋立てて造成した土地。
 ◆液状化可能性区域(えきじょうかかのうせいくいき):「液状化ゾーニングマニュアル(旧国土庁)」における「判定基準」に、「土地条件図」の「地形分類項目」をあてはめ、液状化可能性を抽出
 ◆液状化現象(えきじょうかげんしょう):「地震」の際に地下水位の高い「砂地盤」が、「振動」により「液体状」になる現象。これにより比重の大きい構造物が埋もれ、倒れたり、地中の比重の軽い構造物(下水管等)が浮き上がったりする。単に「液状化」ともいう。[※W]
 ◆凹陥地(おうかんち):砂利採取跡、溜池跡などの人工的な凹地。
 ◆凹地(おうち)・浅い谷:台地・段丘や扇状地などの表面に形成された浅い流路跡や侵食谷、または隣合う扇状地の境界付近で相対的に低い部分。豪雨時に「地表水」が集中しやすい
 ◆落堀(おっぽり):過去の破堤洪水の際に洪水流による侵食でできた堤内地の凹地。

<か行>
 ◆海岸(湖岸)平野(かいがんへいや)・三角州(さんかくす):海(湖)水面の低下によって陸地となった平坦地や、河口における河川の堆積作用によって形成された平坦地。砂、粘土などからなり地盤は軟弱
 ◆崖錐(がいすい) :斜面の上方から崩落してきた岩屑が堆積して形成された急斜面。傾斜はおおむね15度以上で地盤は不安定
 ◆改変工事中の区域:現在人工的に地形改変が進行中の区域。
 ◆(がけ):自然にできた切り立った斜面。
 ◆崖崩れ(がけくずれ):地中にしみ込んだ水分が土の抵抗力を弱め、雨や地震などの影響によって急激に斜面が崩れ落ちること。突然起きるため、人家の近くで起きると逃げ遅れる人も多く死者の割合も高い。
 ◆【火災被害マップ】:火災が発生した場合の「延焼危険性」の程度を地図上に示したもの。
 ◆火山砂防:日本の国土には、地球のわずか0.3%の面積に世界の「活火山」の約1割の108火山が集中。火山周辺地域は、地質が脆弱で、豪雨や火山活動等に伴う土砂災害が発生しやすく、被害が大規模かつ広範に及ぶおそれが高い。そのため、「砂防えん堤」「導流堤」等を重点的に整備するとともに、社会的影響の大きい「29の活火山」を対象に「ハザードマップ」の作成及び配布の支援、監視・観測機器の整備及び監視情報の提供等による警戒避難体制の整備を実施している。[※K]
 ◆活断層(かつだんそう):最近数十万年間に、おおむね千年から数万年の間隔で繰り返し動いてきた跡が地形に現れ、今後も活動を繰り返すと考えられる断層。「断層運動」の「変位様式」によって「4つの基本タイプ」に整理できる。「変位」が軟らかい地層内で拡散した場合、「地表」には「段差」ではなく、「たわみ」として現れる場合があり、これを「撓曲(とうきょく)」と呼ぶ。
 ◆活撓曲(かつとうきょく):活断層のうち、「変位」が軟らかい地層内で拡散し、「地表」には「段差」ではなく「たわみ」として現れたもの。「たわみ」の範囲及び傾斜方向を示す。
 ◆緩扇状地(かんせんじょうち):「扇状地」に比べて傾斜が緩いものを区別して表示。「扇状地」と周辺の低地の一般面との漸移部や規模の大きい扇状地などがこれに相当。
 ◆干拓地(かんたくち):潮汐平地や内陸水面を排水して造成した「平坦地」。記録から干拓したことが明らかな場所を表示。
 ◆旧河道(きゅうかどう):「低地の一般面」の中で周囲より低い「帯状の凹地」。過去の河川流路の跡であり非常に「浸水」しやすく「水はけ」が悪い
 ◆旧水部(きゅうすいぶ): 過去に海や湖沼、池だったところが「埋土」や「盛土」によって改変され「陸化」したところ。強い地震時には「液状化現象」が生じやすい。
 ◆切土斜面(きりどしゃめん):「切取り」によりつくられた「人工の斜面」。
 ◆切土地(きりとち): 山地・丘陵地、台地縁などの斜面を、主として「切取り」により造成した「平坦地」。
 ◆渓床堆積地(けいしょうたいせきち):河川最上流部の「渓床」に土砂岩塊が堆積した地形。豪雨などに伴う大量の水と一緒に渓流に沿って流下。「土石流災害」の危険性がある。
 ◆洪水(こうずい):大雨・融雪が原因で河川の増水・氾濫により引き起こされる自然 災害(天災)の一種。[※W]
 ◆高水敷(こうすいじき):洪水時にのみ冠水する堤外地(堤防の河川側)、及び高潮時にのみ冠水する「海岸の土地」。
 ◆後背低地(こうはいていち):「自然堤防」や「砂(礫)堆」などの背後に位置し、「河川」の堆積作用が比較的及ばない「低湿地」。非常に「水はけ」が悪く、「地盤」は軟弱である。

<さ行>
 ◆災害時要援護:必要な情報を迅速かつ的確に把握し、「災害」から自らを守るために安全な場所に避難するなどの災害時の一連の行動をとるのに「支援を要する人々」。一般的に高齢者、障害者、外国人、乳幼児、妊婦等があげられる。「要援護者」は新しい環境への適応能力が不十分であるため、「災害」による住環境の変化への対応や、避難行動、避難所での生活に困難を来すが、必要なときに必要な支援が適切に受けられれば「自立」した生活を送ることが可能。
 ◆砂丘(さきゅう):海岸や大河川沿いの土地に、「風で運ばれた砂」が堆積して形成された「小高い丘」。「水はけ」は良好
 ◆砂(礫)州・砂(礫)堆(さす・さたい):沿岸流や波浪により作られた砂礫質の高まり。比較的地盤は良い。
 ◆砂防設備:荒廃山地からの「流出土砂」により、下流での河床の上昇による「洪水氾濫」や「土石流」による災害を防止するために設置する「砂防えん堤」等の施設。山腹からの土砂流出を抑制するための山腹工、土砂の流出を調節し、土石流等を捕捉する「砂防えん堤」、河床の侵食を防止し安定させるための「床固工」などがある。近年では、平常時において、下流へ適切に土砂を供給する「透過型砂防えん堤」の整備も進んでいる。[※K]
 ◆山麓堆積地形(さんろくたいせきちけい):斜面の脚部に上方から移動してきたものが堆積してできた地形。「土地条件図」には、「麓屑面(ろくせつめん)」「崖錐(がいすい)」「渓床堆積地(けいしょうたいせきち)」「土石流堆(どせきりゅうたい)」「土石流段丘(どせきりゅうだんきゅう)」等を表示。
 ◆自然堤防(しぜんていぼう):洪水時に運ばれた「砂やシルト」が、流路沿いまたはその周辺に堆積してできた「高まり」。周辺の「低地の一般面」に比べて「水はけ」は良い
 ◆湿地(しっち):地下水位が高く、「水はけ」が極めて悪い「低湿地」
 ◆人工地形(じんこうちけい):切土地、盛土地、埋土地、干拓地など。
 ◆推定活断層(地表):地形的な特徴により、「活断層」の存在が推定されるが、現時点では明確に特定できないもの。または、今後も活動を繰り返すかどうか不明なもの。
 ◆【震度被害マップ】:「震度」などの「揺れの大きさ」を地図上に示したもの
 ◆水涯線(すいがいせん):自然状態における「水陸の境界線」。
 ◆扇状地(せんじょうち):河川が山地から出た地点に河川が運び出す「土砂」が堆積して形成された扇形の地形。主として「砂礫」からなり、地盤は良いが、出水時には水害をうける可能性がある
 ◆【総合被害マップ】:震度・地盤・建物・火災・避難被害等の「地震」に起因する「危険性」の程度を「点数化」して足し合わせ、総合的な危険性を地図上に示したもの

<た行>
 ◆耐震強化岸壁(たいしんきょうかがんぺき):大規模な地震が発生した場合に、被災直後の緊急物資及び避難者の海上輸送を確保するため、「特定の港湾」において、通常のものより耐震性を強化して建設される岸壁。[※K]
 ◆台地・段丘(だいち・だんきゅう):「台状」または「階段状」の地形。「台地・段丘」は、「低地」よりも形成時期が古く、また、一般に高い位置にあるものほど形成時期が古い。「低地」に比べて「河床」からの「比高」が大きいために「水害」を受けにくく、また「地盤」も良いため「震災」を受けにくい地形。「土地条件図」では、高いものから「高位面」「上位面」「中位面」「下位面」「低位面」の5段階に分類し、その「平坦面」の範囲を表示。
 ◆高い盛土地:周囲の土地との比高が「約2m以上」の「盛土地」。
 ◆高潮(たかしお):台風や発達した低気圧が海岸部を通過する際に生じる「海面の高まり」。原因は主に「気圧低下」による海面の上昇と向岸風による海水の吹き寄せ。これらを「気象潮」と呼び、「天文潮」すなわち満潮が重なるといっそう潮位が高くなる。これらの効果は湾のように遠浅の海が陸地に入り込んでいる地形で最も顕著に現れるため、東京湾・伊勢湾・大阪湾などでは過去に大きな高潮災害が繰り返されている。これらの湾では、湾内の海水の固有振動が潮位を更に上げているとの説もある。[※W]
 ◆宅地耐震化推進事業:「大地震」が発生した場合に大きな被害が生ずるおそれのある「大規模盛土造成地」の被害を軽減するために行う事業。「宅地ハザードマップ」等の作成を行い、住民への情報提供を図る。「大規模盛土造成地の変動予測」と「宅地の耐震化工事」を行う「大規模盛土造成地滑動崩落防止事業」がある。[※K]
 ◆【建物被害マップ】:倒壊や全壊などの「建物被害」の程度を地図上に示したもの
 ◆縦ずれ:「活断層」の上下方向の「変位」の向き。相対的に低下している側に短線を付す。
 ◆谷底平野・氾濫平野(たにぞこへいや・はんらんへいや):「河川」の堆積作用により形成された「低平な土地」。砂、粘土などからなる部分の地盤は軟弱。
 ◆多目的ダム:「ダム」の有する「洪水調節機能」と、「利水補給、発電」などの目的を持つダム。[※K]
 ◆湛水(たんすい): 「水田」において、地表排水が完全に行われずに、「停滞状態の水」でおおわれること。[※K]
 ◆地下浸透ダム:「透水性」の高い地盤の上に「貯水池」を設け、「河川水」を導水し地下へ浸透させることにより、「洪水時」における河川流量の一部を調節し「洪水被害」を防ぐとともに、平常時における「地下水のかん養」を行うもの。
 ◆地形分類(ちけいぶんるい):生活の舞台である「土地」を、その形態、成り立ち、性質などから分類。「山地」「台地」「低地」「低湿」あるいは「自然の地形」を人工的にどのように改変しているかなどを区分表示。
 ◆治水地形分類図(ちすいちけいぶんるいず):「治水地形分類調査」は、河川堤防立地の「地盤条件」を包括的に把握し、さらに詳細な地点調査を行うための基礎資料を得ること。また氾濫域の土地の性状とその変化の過程や地盤高などを明らかにする。
 ◆地すべリ斜面の一部あるいは全部が「地下水」の影響と重力によってゆっくりと斜面下方に移動する現象。 一般的に移動土塊量が大きいため、甚大な被害を及ぼす。また、一旦動き出すとこれを完全に停止させることは非常に困難。我が国では、地質的にぜい弱であることに加えて梅雨あるいは台風などの「豪雨」により、毎年各地で「地すべり」が発生。「土地条件図」には「地すべり」によって生じた「崖(滑落崖)」と、「すべった土塊の到達範囲(押出しの範囲)」を表示。
 ◆地すべり対策:「地すべり」による災害を防止するため、集水井工や杭工などの「地すべり防止施設」の整備を実施している。「地すべり防止施設」は、大別すると「抑制工」と「抑止工」に分けられる。前者は「地すべりの原因」を除去するもの。集水井工、排水トンネル工、集水ボーリング工、水路工等。後者は「構造物」によって「地すべりの安定化」を図るもの。杭工(深礎工)、アンカー工等。[※K]
 ◆地盤高(ぢばんだか):特に平野部の「地盤の高さ」を詳細に表現。1mごとの「地盤高線」のほか、要所には土地の「標高」を表示。これにより、土地が「どの位の高さ」であるか、「比高」や「傾斜」がどうであるか、あるいは「地盤沈下」などによる「0メートル地帯」がどのように広がっているかなどを読みとる。
 ◆【地盤被害マップ】:「地盤崩落」や「液状化」などの「地盤被害」の程度を地図上に示したもの。砂防関係(地すべり、土石流、急傾斜地崩壊など)を対象としたものは該当しない。
 ◆潮汐平地(ちょうせきへいち):「干潮時」に水面上に現われる平坦な土地。
 ◆津波(つなみ、津浪):地震、地滑り、海底火山の噴火、隕石の落下など気象学的要因以外の要因により発生した大規模な水(通常は海)の移動によって引き起こされる「連続した高波」。元々日本語だが、20世紀後半以降は国際的に「Tsunami」と呼ばれている。[※W]
 ◆低水敷(ていすいじき)・浜:河川の堤外地のうち「高水敷」よりも低く通常の増水で冠水する土地、あるいは、海岸の前浜で「シケ」の際に波をかぶるような低い部分。
 ◆低地の一般面(ていちのいっぱんめん):海岸や河川との比高が小さいため、前述の「低地の微高地」に比べて浸水しやすく、「水はけ」が悪い。一般に細粒の物質からなり、地盤は軟弱である。「谷底平野(たにぞこへいや)・氾濫平野(はんらんへいや)」「海岸(湖岸)平野(かいがん:こがんへいや)・三角州(さんかくす)」「後背低地(こうはいていち)」「旧河道(きゅうかどう)」など。
 ◆低地の微高地(ていちのびこうち):「低地」は「台地」に比べて「浸水」しやすく「水はけ」も悪い。また「地盤」も軟弱。「低地」の中の「微高地」は、「低地」の「一般面」に比べて「河床」からの比高がやや大きい。そのため「水はけ」も良く、また構成物質が相対的に粗粒であり、「地盤」も比較的良い。「扇状地(せんじょうち)」「緩扇状地」「自然堤防(自然堤防)」「砂丘(さきゅう)」「砂(礫)州・砂(礫)堆(さす:れきす・さたい:れきたい)」「天井川沿いの微高地」など。
 ◆天井川(てんじょうがわ):「河床」または水面が周囲の土地よりも高くなっている「河川」。出水すると、周囲の土地は著しい水害をうける可能性がある。
 ◆天井川沿いの微高地:人工的に流路が固定された「河川」では、その後も旺盛な堆積作用の結果、「河床」が周囲の「低地」よりも高くなることがある。このような河川堤防に沿って形成された半人工的な「高まり」。
 ◆禿赭地(とくしゃち):屋根や山頂で「植生(はにゅう)」がなく、地表面が露出している箇所、あるいは斜面や河床、海岸などで岩体が露出している箇所。「露岩」ともいう。
 ◆土石流(どせきりゅう):山腹、川底の石や土砂が「長雨」や「集中豪雨」などによって一気に下流へと押し流されるもの。その流れの速さは規模によって異なるものの、時速20~40kmという速度で一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させる。
 ◆土石流堆(どせきりゅうたい):斜面上方の山崩れによって生じた土石あるいは「渓床」に堆積していた土石などが大量の水と一緒に渓流に沿って流下し(土石流)、山麓に大成して形成された地形。土石流堆の見られるところは、土石流による災害の危険性がある。
 ◆土石流段丘(どせきりゅうだんきゅう):土石流堆が侵食され、段丘化した地形。
 ◆土地条件図(とちじょうけんず):「ハザードマップ」作成の基礎情報。大規模な豪雨災害及び東南海・南海地震などの防災対策推進地域を中心に整備。「 2万5千分1」地形図の上に、「地形分類」(山地、台地、低地など)、「地盤高線」(1m間隔の等高線)、「主な防災関係機関」等を重ねて表示

<な行>
 ◆内水(ないすい):国の領土内にある河川・湖などの内水面のほか、国際法においては、とくに領海を測るための基線の陸地側にある水域をいう。国は、内水を領土の一部とみなして主権のもとに置く。[※Y]
 ◆農耕平坦化地:「農耕」に利用されている「平坦化地」。

<は行>
 ◆ハザードマップ火山噴火や洪水、土砂災害、津波等の自然災害に対して、被害が予測される区域および避難地・避難路等が記載されている地図。 [※K]
 ◆被害想定災害危険性や自然的・社会的環境要因等の諸条件に基づき、想定される災害に対応した人的被害、構造物被害等を算出する作業
 ◆避難港:「暴風雨」に際し小型船舶が非難のために停泊することを主たる目的として、通常貨物の積卸又は乗降の用に供されない港湾。[※K]
 ◆避難被害マップ:各種「地震災害」に対し「避難場所」等までの避難困難性の程度を地図上に示したもの。避難場所や避難路の位置を示しただけのものは該当しない。
 ◆頻水地形(ひんすいちけい):水防上注意すべき地形や完全な陸でない土地。天井川(てんじょうがわ)、高水敷(こうすいじき)、低水敷(ていすいじき)・浜、湿地(しっち)、落堀(おっぽり)、潮汐平地(ちょうえきへいち)等がある。
 ◆分水界(ぶんすいかい):異なる水系の境界線を指す地理用語。山岳においては、「稜線」と「分水界」が一致していることが多く、「分水嶺(ぶんすいれい)」とも言う。※W
 ◆分水嶺(ぶんすいれい):「分水界」に同じ。
 ◆平坦化地(へいたんかち):山地・丘陵地、台地などの斜面を主として「切り取り」により造成した平坦地または緩傾斜地。
 ◆変形地(へんけいち):「変形地」として崖、壁岩、崩壊地、地すべりなどがある。
 ◆壁岩(へきがん):比高の大きな「急傾斜露岩体」。
 ◆崩壊地(ほうかいち):斜面または崖の一部が崩壊した跡地。
 ◆防災アセスメント災害誘因(地震、台風、豪雨等)、災害素因(急傾斜地、軟弱地盤、危険物施設の集中地域等)、災害履歴、土地利用の変遷などを考慮して総合的かつ科学的に地域の災害危険性を把握する作業

<ま行> 
 ◆まるごとまちごとハザードマップ:「河川氾濫」時の浸水深や洪水時の避難所等の地域の「洪水」に関する情報の普及を目的として、これら「水災」にかかる各種情報を生活空間である市街地に「洪水関連標識」として表示するもの。地域住民はもとより、旅行社、外国人等にも情報の意味が容易に分かるよう「洪水」「避難所(建物)」「堤防」の3種類の洪水関連図記号を定めている。 [※K]
 ◆無人化施工(UCS):「有人」での施工では作業員の安全確保が困難な工事現場において実施する「機械の遠隔操作」等を用いた「無人」による施工。「無人化施工」(Unmanned Construction System)は、土砂災害発生現場、火山噴火活動の続いている地域において迅速な災害復旧作業のために用いられる他、近年では災害対応にかかわらず施工中に安全対策としても用いられるようになってきている。[※K]
 ◆メルトダウン:「炉心溶融」に同じ。
 ◆免震レトロフィット>:「既存建物」の「耐震性」を改善するために「免震構造」を用いる「耐震改修方法」。建物に免震層を設け、上部構造の「固有周期」を長周期に移すとともに、「上部構造」に伝達される地震による「入力エネルギー」(水平方向)を低減するための免震材料を設置。「免震層」の上部構造への補強工事を大幅に削減できる可能性が高い改修方法。「既存建物」を使用しながらの改修も可能。[※K]
 ◆面的防護方式:堤防、砂浜、離岸堤等を「面的に配置」し、高潮、侵食等から海岸を防護する整備方式。災害に対して粘り強く、耐久性に優れ、かつ海辺へのアクセスや景観等に優れている。堤防や消波工のみで海岸線を防護する「線的防護方式」に比して使われる。[※K]
 ◆盛土斜面(もりどしゃめん):土を盛ってつくられた「人工の斜面」。
 ◆盛土地(もりとち):主として「低地」に土を盛って造成した平坦地。

<や行>
 ◆横ずれ:「活断層」の相対的な「水平方向の変位」の向き。

<ら行> 
 ◆レッドページ:家庭内で防災に関する情報がすぐに取り出せるよう、地域の実情にあわせた「災害情報」(ハザードマップ)や地震時の心得、土砂災害に関する前兆現象等防災・危険情報を「電話帳(ハローページ)」の「冒頭部分」に掲載した「赤枠のページ」。[※K]
 ◆麓屑面(ろくせつめん):斜面脚部に上方から徐々に移動してきた岩屑や風化土が堆積して形成された「緩斜面」。
 ◆炉心溶融(ろしんようゆう):「原子炉冷却材」の「冷却能力」の異常な減少、あるいは「炉心」の異常な出力上昇により、燃料体が過熱し、かなりの部分の「燃料集合体」または「炉心構造物」が「溶融」すること。または「炉心損傷」により生じた破片状の燃料が、原子炉冷却材の冷却能力の喪失により溶融すること。「メルトダウン」と同義。 [※G]

<わ行>


 ◎関連用語事典・辞典(ハザード、防災、危機管理関連)

  【原子力防災基礎用語 Weblio工学】
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・知的ダンディズム(追悼:児玉清氏)

2011年05月18日 20時30分50秒 | ■人物小論

 映画俳優、テレビタレント、司会者そして書評家としての児玉清氏――。高い知性と本物の品位を保った児玉さんのような人は、芸能界では本当に少なくなった。

 筆者にとって、児玉さんは映画俳優やテレビタレントというイメージはあまりない。ことにテレビドラマは、ほとんど観ないからだろうか。やはり『アタック25』をはじめとする「司会者」であり、多読の「書評家」ということになるだろう。
 前者の軽妙な司会ぶりには、「武人」のストイシズムに通じる静けさと、真摯な人間性に支えられた「知識人」の落ち着きが感じられる。“その姿”に少しでも近づきたいと思ったものだ。だが遥かに及び得ないのであり、児玉さんに対する憧れはこれからも少しも変わることはない。

 それにしても、1975年に始まった『アタック25』が、36年も続いているというのは凄い。多少のアレンジはあったにしても、その司会の「スタイル」は一貫していた。“自然体”であり、“分を弁えた”司会だからこそ、一般人が答えるだけの“地味な進行”でありながらも、少しも飽きさせない。そこに番組の息の長さの秘訣があるのだろう。
 
 とにかく昨今、「お笑い系」や「独特キャラ」中心の「バラエティ番組」が花盛りだ。層の厚い「おバカキャラ」に、最近は元代議士まで登場している。それに加えて、「尼僧」まで登場する「おねえキャラ」は、実にタイプが豊富なようだ。

 それらの「出演者」は、期待された自分の“キャラ”を発揮しながら、「司会役」とその“饒舌”を盛り上げなければならない。懸命に「司会役」に“おもね”、コケにされながらも、“すべらない”ように注意し、そして“笑い”をとりながら自らも“笑わ”なければならない。“すべったり”“笑いがぎこちない”となれば、たちまち“オファー”を喪うのであり、それは「タレント」としての“死”を意味する。

 しかし、「放送作家」や「ディレクター」がどんなに「台本」や「トーク」で“もっともらしい笑い”を繕い、「キャラ」を“強要”しようとも、“人間”としての“キャラ”は実に正直だ。「眼や声」は、素直に真実を反映している。だがそれでも、生き残っていくために必死で“人間”を捨て、求められるままに“キャラ”を演じているのだ。
 もちろん、「お笑いタレント」はそれで食っているのだからと言う人々もいる。だがそこには“真の笑い”も“本音トーク”もない、低俗な“あざとさ”しか残らない。

 そういう「番組」から遠ざかってほぼ十年。筆者には関西系のノリが、年ごとに体質に合わなくなって来た。はっきり言って喋りすぎであり、うるさいばかりで落ち着かない。明石家さんまや島田紳助の両氏、ダウンタウン、そしてナインティナイン等は特に合わない。だからこそ、児玉さんのような“本物の司会者の本物の司会芸”が光を放つのであり、また安らぎをもたらすのだろう。

 十年以上前になるだろうか。「司会者」のあり方について、児玉さんは次のように語っていた。

 ――「司会者」とは、いかに自分以外の出席者やゲストを活かすかにあると思います。そのためには“語りすぎない”ということでしょう。どのような「問い」がその人らしい興味深い「答え」を引き出せるか。その工夫のプロセスが司会冥利ということではないでしょうか。「司会者」は「オーケストラ」の「指揮者」と同じだと思います。楽器つまり演奏者の良さを引き出すことが使命です。

 簡単なようでいて、なかなか言えない言葉だ。“寡黙”であっても、出席者やゲストを活かすからこそ、“司会者としての一瞬の煌めき”がいつまでも印象深く残るのだろう。司会者が“喋ってなんぼ”ではないことを証明してくれた最高の人だと言える。

 一方、“喋ってなんぼ”の「司会役」諸氏――。どれだけ心を打つ言葉を視聴者の心に残せるのだろうか。“喋り続けないかぎりその存在感”が見出し得ない彼らが、何とも痛ましく見える。「東日本大震災」以降、特にそのことを感じるようになった。
 
 それにしても、『お笑いで(日本に)元気を与える』と言う彼らの言葉が気になった。いま人々が真に求めている「笑い」とは、そう言う貧しい“想像力”による“作為的な”ものではないはずだ。 

          ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆
 
 女優で脚本家の中江有里さんは、『週刊ブックレビュー』で児玉さんのアシスタントを務めていた。1年ほど前になるだろうか。彼女が児玉さんの印象について語った言葉を、とても印象深く記憶している。

 ――取材ロケのため新幹線で移動するときでした。荷物を抱えた私の手と児玉さんの手がほんのちょっと触れたのです。そのとき、児玉さんが少年のように微笑みながら、『いま手が触れましたね』とおっしゃったのです。 

 そう言う彼女の笑顔は、とても爽やかでまた魅力的だった。このエピソードは、ひっとしたらもっとも“児玉さんらしい”ものかもしれない。と同時に、本当の紳士の“知的ダンディズム”を象徴していたのではないだろうか。……と、そんな気がしてならなかった。 合掌

  


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・『ディープピープル(DEEP PEOPLE)』――TV文化小論

2011年05月15日 10時28分28秒 | ■文化小論

 NHKのトーク番組『ディープピープル』(月曜夜10時~)――。その道の一流の「プロフェッショナル三人」が、「司会者」を交えずに自由に語り合う。

 私はまだ3本しか観ていないが、一流のプロ同士にしかわからないような“その道に関するテーマ”を縦横無尽に語るもの。タイトル通りの“DEEP”な内容であり、台本も何もない気ままな展開が新鮮だ。

 初めてこの番組を観たのは、2月11日の『フォークボール』だった。佐々木主浩村田兆治牛島和彦という、かつてのフォークボールの名手が、それぞれのフォークボールについて語っていた。
 ただひたすら「フォークボール」だけに論点を絞ったトークであり、必然、“奥の深い話”となっていく。あらためてフォークボール独特の奥の深さと、野球そのものの面白さや醍醐味を再認識することができた。

 2本目は『女性写真』、3本目は『女性演歌歌手』だった。前者は篠山紀信氏にホンマタカシ梅佳代の両氏。後者は小林幸子坂本冬実長山洋子の三氏だった。いずれも、素人の認識や想像を超えた領域の話であり、自らの仕事の深化にかけるプロの執念と創意を垣間見ることができた。

            ★

 ただひとつ残念なことは、トークに対する「解説」を関根勤氏が担当していることだろうか。面白い人なのだが、このような「番組」の「解説」というのはちょっと……。NHKによれば、“あまりにも深すぎるため、芸能界きっての博覧強記ぶりを誇る奇才”の関根氏にお願いしたとのこと番組紹介のメッセージ)。

 しかし、めったに聞けない「一流プロ」の「一流の話」は、やはり「その道の一流のプロ」に解説して欲しい。実証映像などを交えながらの「特別ゲスト解説者」の話となれば、いっそうその「DEEP」さは増すに違いない。NHKらしい優れた企画を活かすためにも、ここは“世俗におもねることのない”番組作りに徹してもらいたい。関根氏の博覧強記は、民放等のバラエティ番組で充分だ。

      ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 ついでに言わせてもらうなら、近年、NHKは“民放式”の人気タレント頼りの番組作りが目立つように思う。その手の番組は例の「大河ドラマ」だけに留めて欲しい。

 ともかく日本の「TV番組」は、「お笑いタレント」や“独特のキャラクター集合式”のものが多い。いや、異常なほど多い。幅広い層の視聴者に合わせるための工夫だろうが、内容の“低俗化傾向”が進んでいるように思う。「子供や若い世代」が、それらの番組に浸かっているのかと思うと気がかりだ。

 ことに現在、多くの直接被災者や、被災関連の農林・漁業、商・工関連産業等で苦慮されている方々を思うとき、その配慮のなさに胸が痛む。これでもかと思える品性を欠いたグルメ番組やお笑い芸人同士のドタバタ番組など、あの“無神経さ”は何とかならないものだろうか。無論、「テレビ局」だけの責任ではない。いやむしろ「スポンサー」側に、より大きな責任があるのかもしれないが……。

 未だに「仮設住宅」暮らしや「原発避難」の方々。住宅放棄どころか街全体が放棄という地域すら出始めている。それに加え、食料品や飲物、日用雑貨品の不足が解消されていないのというのに。

 震災から2か月が経過したことで、“無傷の人々”は、多少“ほとぼりがさめた”でも思っているのかもしれない。だが上記の方々は、時間の経過によっていっそう肉体・精神両面の疲弊は募っている。そのことを忘れてはならないと思う。まだまだ生計・仕事(職場)・学校(教育)・医療・衛生面での不自由さと、先の見えない不安を抱えて苦慮されている現状であり、もっと配慮すべきではないだろうか。

           ★

 以下は、被災地の方々の声――。
 
 『首都圏の人々は優雅だ』(被災自治体の幹部)

 『喪ったものですか? ……これから喪うものの方が多いと思います』(避難所の主婦)

 『原子力発電所が安全と言うなら、どうして東京に作らないのかなって思っていました……』(原発計画避難地の女子中学生)

 その首都圏や東京において、今日も“軽佻浮薄な番組”が作られ、そして流されていく――。

 “DEEP”とまではいかなくとも、ごく普通の感性と常識と品性を持った“PEOPLE”でありたい。

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・極上の “Less”

2011年05月10日 17時18分10秒 | ■世事抄論

 つい最近、行きつけの喫茶店で「料理人」という「M氏」と知り合いになった。数日後、筆者のブログに対して「メール」が来た。最初から遡って観ていただいたようだ(※抜粋。下線・強調は筆者)。
 

 『……"Less is more(少ないほど豊か)"(※註1)という話題がありましたね。私の修行中にもよく言われた言葉です。3年から5年の経験を積むと、料理人として必要な技術はほぼ習得します。そこでこの期間に勉強した知識から、やりたいことが山ほど出てきます。

 これくらいの経験の料理人に、たとえば「ホタテ」を使った一皿を作らせると渾身の逸品を作り上げます。「持てる技術」を総動員するのはいいとしても、たった「ひと皿」のために、10種類以上もの「食材」を使うようなものが出てきます。「主素材」が何であるのか判らないようなお皿です。このような例は、自分の「技術」に本当の自信が無いことの表れでしょう。

 経験値が上がってくると、「ひと皿」に“のる”素材の数は減り、よりシンプルに、しかし、食材同士の組合せは『絶にして妙』となり、素晴らしい「ひと皿」となります。

 私はフレンチの経験が長いのですが、「ひと皿」を構成する要素は、「主素材」、「付け合せ2品」、そして「ソースと言ったところでしょうか。「構成素材」が少ないとごまかしがききませんから、本当の意味での「技術」や「センス」の差が出ます。

 どの業界も"Less is more(少ないほど豊か)"が大切ですね。極上のLess”を得るためにも、「基本」が大切ということを改めて考えさせられるところです』

     ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 『極上のless』とは、何と洒落た表現だろうか。筆者はすっかり気に入り、さっそくこのコラムのタイトルに拝借した。
 それにしても、『“極上のLess”を得るためにも基本が大切』というのは、総ての分野に共通しているように思う。
 建築や料理にしても。またビジネスや芸術においても。つまりは文学や美術、そして音楽においても、どこかにそのエキスが潜んでいるような気がしてならない。

 高校生の頃、「エレキバンド」を組み、ドラムを担当していた。このとき「ドラム演奏」に関して言われていた言葉に『おかずが多い』というのがあった(今でも通用しているように思う)。どうやらこの言葉も、“極上のLess”に通じるものがあるようだ。

 「エレキバンド」において、ドラムは本来、「テンポ」と「リズム」の「指標」といえる。「リード」「サイド」「ベース」という「三つのギター」を導きながらも、目立ちすぎてはいけない。この“目立ちすぎる”ような「ドラミング」すなわちドラム演奏を『おかずが多い』と言う。「主素材」はあくまでも「ギター」ことに「リードギター」にあるからだ。

 「エレキギター」は、通常の「アコースティックギター」と異なり、かなりボリューム(音量)が出る。そのため、ドラムはそのボリュームに負けないよう、いきおい「ビート」を効かせることとなる。ただでさえ大きな音のドラムが、やたら本来のリズムを超えた「ドラミング」に走ってはうるさいばかりだ。

 しかし、アドリブが当たり前のジャズの場合、ドラムは一定のリズムをさりげなく刻みながらも巧みな「ドラミング」により、ピアノなどのメロディ楽器を引き立たせる。さらに楽器同士のいわば“緩衝帯”として、楽器相互の「強弱」のバランスを取り、またときには魅力的な「メロディの変調」を導いていく。「ディブ・ブルーベック・カルテット」の5/4拍子という『TAKE FIVE(テイクファイブ)』のドラミングは、その典型と言えるかもしれない。

 ともあれジャズの場合、「スネヤドラム」が「ホタテ」となり、「バスドラム」と「ハイハット(シンバル)」がその「付け合わせ」といえるのかもしれない。そして「トップシンバル」は、無論「ソース」ということになるのだろう。……そんなことを考えながら、久しぶりに聴いた『TAKE FIVE』のドラムソロに軽い興奮を覚えた。

 

     ★★★★★★★ 付け合わせ ★★★★★★★
 
 ――“極上のless”……味わい深い言葉だわ。“Less is more”って「少ないほど豊か」って意味でしょ? 何であれ、“種類” も “量” も控えるってことなのでしょうね。“かぎられたごく少量のもの” をじっくり味わうためにも、という意味が込められてて……まあ、何てステキ。

 ……え? それで今晩のメニュー、もう決めたとおっしゃるの? Less is more menu” ? 

 ……ええ。ええ。限りなくシンプルな「主素材」に、ぎりぎりまで抑えた「付け合わせ」……というわけ? なんだかよくわからないわ。……で、その「メニューの正体」は? 

 「豚キムチ」に「辛子めんたい」と「イカの塩辛」の「付け合わせ」

 ……Oh  my  god!



◆「Less is more」(2009.5.17) ※本ブログです。


 

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・建築家は光の奉仕者(安藤忠雄ガールズ:下)

2011年05月07日 03時54分56秒 | ■芸術・建築の巨匠たち

 それは“建築物を前提に緑が存在する”のではなく、“既存の緑の中に建築物が造られた”という考えに集約される。“主役”はあくまでも“緑”すなわち“自然”であり、後から来た“建築物”という“非自然”は目立つべきではない。
 つまり“非自然”は“自然”の中にとけこまなければならず、樹木が豊かに繁り、草花がその華やぎを見せるとき、建築物ははじめてそれらの間に隠れるように存在する……というのが安藤さんの「建築学」いや「調和論」なのだろう。

 独断的に言いかえれば、「大地」という“母性”が“建築物を宿し”、ゆったりとした“自然”という“愛情”の中で“育(はぐく)んで行く”ということだろうか。そう思うと「建築」の“始まり”が、何やら“受胎告知”のように思えて来た。

 ともすれば、「無機質な孤体」としての「打ち放しコンクリート」。だが安藤さんの手にかかると、「有機的で柔らかな調和体」へと変貌する。『安藤忠雄ガールズ』が惹きつけられるのは、そのような“受胎感覚”に通じるものがあるのでは……と勝手に想像してみた。そう考える方が無理がなく、事実「建築物」としてもいっそう映えるような気がする。
  
      ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆
 
 4月下旬、M嬢から『私の履歴書』の切り抜き記事が送られて来た。大きな茶封筒に筆ペンの文字が優しく躍っている。封筒裏には「印判の住所氏名」の押印があり、「黒雲と鈴」のデザインが何とも愛らしい。

 「新聞の切り抜き」は何回分か抜けてはいるものの、1回から31回分があった。その束が粗漉きの和紙に赤い紐で留めてあり、別の和紙に手紙が書かれていた。いずれも身近な物をさりげなく利用したものだ。送られて来た「切り抜き」もさることながら、そういう心遣いが嬉しい。
 今回の「記事」によって初めて知り得たこともあり、また詳細を知ることもできた。

 「記事」によれば、生まれてすぐに祖父母の養子となった安藤さんは、小学校に上がって間もなく祖父を亡くしている。そのため祖母と二人きりの生活を長く経験することとなる。
 安藤さんが中学二年生のとき、「平屋」の自宅を「二階建て」に改築することになった。そのときのことを安藤少年は――、

 『屋根を解体し、天井にぽっかり大きな穴があいたとき、狭い長屋の薄暗い洞窟のような空間に、光が突然差し込んだ。私は思わず、その光の美しさ、力強さに心を奪われたのである』

 他の著作にも見られるこの“くだり”こそ、おそらく“安藤建築”の“原点”であり、“光”に対する“オマージュ”とも言える。私はこの“くだり”に接するたびに、優れた「建築家」にとって、光がいかに神聖なものであるかを感じる。ル・コルビジェルイス・バラガン、そしてルイス・カーンしかり[※註]。さらに彼らと志を同じくするその他の建築家達もまたしかり。
 まさしく――、

 “建築は光である”  そして――、
 “建築家は光の奉仕者である”

 ということを確信することができた。

 再びM嬢の手紙に目を転じた。
 『また お茶でもご一緒できますように』との言葉に、「コーヒーカップ」のイラストが添えられている。それを見つめているうちに、無性に彼女と一緒にコーヒーが飲みたくなった。と同時に今度会った時、“建築が光である”ことをどのように伝えたらよいのだろう……。

 ……そう考えながらも、M嬢以外の『安藤忠雄ガールズ』を想い浮かべてもいた。実は、これまでに登場したA嬢もN嬢も、そしてU子さんもそうなのだ。のみならず、いつしか登場するであろうその他の女性たち……。「建築塾」の教え子達とはいえ、『安藤忠雄ガールズ』は何と多いのだろうか……。(了)

 
 ※[註] ●ル・コルビジェ(Le Corbusier)[1887-1965):フランスで主に活躍したスイス生まれの建築家・画家。本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリ(Charles-Edouard Jeanneret-Gris)。「フランク・ロイド・ライト」「ミース・ファン・デル・ローエ」と共に「近代建築の三大巨匠」と呼ばれる(「ヴァルター・グロピウス」を加えて「四大巨匠」と言うことも)。「近代建築の5原則」(ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面)」を提唱し具現化した。
 ●ルイス・バラガン(Luis Barragan Morfin)[1902-1988]:メキシコ人の建築家・都市計画家。光や水面を採り入れ、幾何学模様のモダニズム建築を得意とした。
 ●ルイス・カーン(Louis Isadore Kahn)[1901-1974]:エストニア系アメリカ人。建築家・都市計画家。独特の神学的・哲学的色彩の濃い建築論を持ち、ソーク研究所、バングラデシュ国会議事堂、キンベル美術館などを手掛ける。ルイス・バラガンは友人。

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・光と風と水と緑と(安藤忠雄ガールズ:上)

2011年05月04日 14時55分01秒 | ■芸術・建築の巨匠たち

 『今日から日経新聞の【私の履歴書】安藤さんの連載ですね。毎日が楽しみになります』

 3月1日、その「メール」をもらった。相手は、これまで登場したA嬢、N嬢そしてU子さん同様「わがアラフォー美女団」の一人、M嬢だ。しかしそのとき、拙宅の新聞は「日経」ではなかった。もちろんその旨返信した。

 翌日、「連載記事」についての彼女のメールが入った。

 『設計、建築の方もいろいろなご苦労があるんだなあ~と、安藤さんを少し身近に感じることができました。この週末、淡路島に行ってきます。遊びではないので、ゆっくり安藤さんの建物を楽しむ余裕がなく残念です』

 その後もM嬢からのメールは何回も続いた。『……今日の記事は「光の教会」を作られた時のお話です。新聞がもらえたらとっておきます』、『……安藤さんの新聞記事、何回分か貰ってきています。残りも貰えたらと、新聞がたまるのを待っています。楽しみにしててくださいね』。

 M嬢は、建築とは無関係の医療関係の事務の仕事をしている。実は彼女は、不動産会社時代の私のお客様だった。仲介マンションの購入者であり、レトロな感じが好きだというのがその動機だった。
 『緩やかな曲線の道路に沿った九階の角部屋から、市井(しせい)の夜景が何とも魅力的に映える……』というセールスポイントに共感できるお客様でもあった。

 それ以来の交友だが、彼女と会うといつも“建築”の話が中心となり、無垢材から木造住宅ことに「古民家」などの話へと発展していく。散策を兼ねて一緒に「街並み」や「建物」に見入ることもあった。そして「建築家」となれば自然に「安藤忠雄」氏となる。
 
 つまり「安藤さん」のファンであるM嬢――。
 それにしても「安藤ファン」はなぜか女性が多い。しかも“建築関係者ではない”というのが特徴だ。“安藤氏以外”の建築家の「講演会」(開催自体きわめてまれ)は、圧倒的に関係者それも男性が多い。
 ところが「安藤さん」となると講演会場の雰囲気が一変する。まず女性、それも結構若い世代が目立つ。

 なぜ『安藤忠雄ガールズ』は多いのだろうか? おそらくその理由は、

 第一に、テレビ・雑誌などに登場する建築家といえば、圧倒的に安藤さんが多いということが挙げられる。
 第二に、建築家としての安藤さんの考えが、“一般の人にも判り易くまたシンプルである”ということに尽きる。
 気取らない風貌や話し方も、「気さくなおじさん」のイメージづくりに貢献したようだ。私にしても、いつしか『安藤さん』という呼びかけが当たり前のようになっている。

 ところで、私が安藤忠雄という建築家に興味を持ったきっかけは、自然体とも言えるその「建築観」いや「自然観」にあった。もう二十年以上前になるだろうか――。

 その日、新聞記事の整理をしながら、漫然とテレビを観ていた。番組の最後にインタビュアが尋ねた。
 『安藤さんにとって建築のテーマとは何でしょうか』。ひと呼吸おいた後、建築家は答えた――。

 ――光と風と、水と緑でしょうか

 私はTV画面の中の建築家を食い入るように見つめた。何と言う答えだろうか。ありふれた用語をシンプルに表現したその口元を見つめながら、何度も“その言葉”を呟いていた。法学部出身の私が、独学で建築を学び始める大きなきっかけとなった言葉だ。

 思えば「安藤建築」には『緑の教会』以外、『光の教会』も『風の教会』も、そして『水の教会』という名称の「教会」が存在する[※註1]。
 しかし、『緑の教会』はなくとも、「建築物」に対する安藤哲学の“”すなわち“自然”に対する基本姿勢は“ブレる”ことなく一貫している。<続く>


 [※註1]:それぞれ「光の教会」、「風の教会」、「水の教会」で「検索」すると関連記事をはじめ「写真・動画」等が出てきます。
 
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◆安全な都市・居住地域・土地を求めて(まとめ)-No.6

2011年05月01日 16時09分57秒 | ■東日本大震災に学ぶ
   ☆本シリーズには『ハザード事典』を参照ください。


 カギとなる「防災対策」の充実度や「関連サイト」の公開度
 
 これまでのものを少し「まとめ」てみましょう。結論として「特定の都市(市町村)の選択」(※註:1)はともかく、以下のような「地域」が『安全な居住地域』そして『安全な土地(敷地)』として考えられると思います。

 1.幼稚園、保育園、小学校、中学校の近接地
 2.公共建物ことに病院医療・介護福祉関係等施設の近接地
 3.「海岸線」「河川流域」「急傾斜地」から離れた「自然丘陵地
 4.「宅地造成」等の「人口整形地」でない所(ことに「盛土地」ではない所)
 5.指摘されている「断層」から離れた地域
 6.「原子力発電所」等の「危険施設」から離れた所
 7.「防災対策」が充実している「市町村・地域地区」。また「防災対策関連サイト」が「公開」されている「市町村・地域地区」
  
 「1、2」についてはコメントの必要はないと思います。
 いずれも地域社会全体が、「より安全であって欲しいと願う建物・施設」だからです。当該建物・施設の「前面道路」は広く、「幹線道路」とのつながりも留意されています。「緊急車両」などのアクセスも良く、「ヘリポート」としての機能も整っています。
 これは大きな利点であり、安全性を一段と高めています。「病院関連施設」に近い「小・中学校」の近接地などは理想的な居住地域と言えるかもしれません。 

 「」の「自然丘陵地」は、「地形」として見た場合総合的にはもっとも安全で安定した地域といえましょう。それが「津波」や「高潮」そして「洪水」等の危険から離れた「地域」であればなおさらです。

 「」についても、その安全性の高さを理解できると思います。「盛土」に比べて「切土」の方が安全性が高いと言われています。しかし、通常これらの「造成地」は「切土」と「盛土」とが「セット」になっているケースが多いようです。そのため「盛土」部分に問題が生じた場合、それは同時に「切土」部分の問題発生を意味することになりがちです。

 「」は、今回さらにその「重要性」を感じられた方が多いのではないでしょうか。「ハザード入門」シリーズで採りあげるつもりですが、『揺れやすさマップ』などによってその様子を確認することができます。 

 「」は今後、真剣に考えなければならないと思います。人間の業・技には「絶対」と言えるものはないという前提が基準となるでしょう。
 「安全性の神話」が崩壊した今、「原子力発電所」に対する見方・考え方はいっそう厳しくなるでしょう。「危険施設」という認識が不可欠であり、それを前提とした論議は避けられないでしょう。徹底した“秘密主義”によって、“安全性”を演出したという一面も否定できません。
 
 「7.防災」に対する各「自治体」の「対応の違い」にはかなりの格差があるように思います。「首都圏」「近畿圏」「中部圏」の三大都市圏や「政令指定都市」等の人口密集度が高い都市や地域ほど整っているように思います。

 
 ※註1:どの「都市(市町村)が安全かそうでないか」と言う問題は、「一個人レベル」の判断に馴染まないものであり、その「最終的な判断」は、今後さまざまな研究機関において「総合的な分析」の結果得られるでしょう。今後の推移を見守りたいと思います。

 ※本シリーズの「No.4」で述べた「地名と地形との関係」に関して、みなさんに以下のサイトをお勧めします。「一条工務店」という住宅メーカーのものですが、とても判り易くまた詳細な説明がなされています。

その説明文中にある次の一節はとても「重要なメッセージ」ではないでしょうか(※原文のまま。下線や文字の強調は筆者)。

 『地名は、その地域特有の地形や土質、また災害の履歴などを後世に伝える大切な「証拠」であり、「文化財」でもあります。(中略)……その地名に隠された先人たちの様々な思いや知恵に触れることでもあります』

 同感です。ぜひ一度ごらんください。

   地名・地形と地盤の関係
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