『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・想定範囲内のホリエモンの上告棄却

2011年04月27日 19時17分01秒 | ■人物小論

 ホリエモンの有罪確定


 「ライブドア」元社長の堀江貴文氏の「有罪」がほぼ確定した。彼は昨日(4月26日)、「上告棄却の記者会見」において、次のように語っている。【※「産経ニュース:ホリエモン上告棄却」より「原文」のまま。「下線」や「太字」は筆者】。

            ★

 ――ベンチャー企業は、とんでもない若造が考えるから面白い一般企業はヒエラルキーで頭を押さえられ、生まれるのは凡庸凡百。

 しかし、ベンチャーはアグレッシブにどんどんイノベーションする。(中略)ベンチャー企業なんて、はっきりいっていかがわしい。知っている企業で、いかがわしくない方が少ない。例えばたった3人の会社で、法律なんて知らないのは当然でしょう

            ★


 『たった3人の会社で、法律なんて知らないのは当然でしょう』と断言して憚(はばか)らないホリエモン

 自らを『とんでもない若造』と呼び、その企業を『いかがわしい』と言う。彼が「企業」を立ち上げた “時点” で、今日の彼の姿は “予見” することができたといえるのかもしれない。

 ともあれ、「ごく普通の社会」は、『とんでもない若造』も『いかがわしい企業』もある程度 “容認” する。

 だが『法律なんて知らない』という人や企業は “容認” しない。“法” という最低限度のルールすら守れない御仁は、彼特有の言い回しによれば間違いなく “想定の範囲外” だからだ。
 
 確かに「ベンチャー企業」の中に、「眉唾物」が多いのは否定できない。彼らにとって『アグレッシブ』とは、“行き過ぎ” の代名詞であり、『イノベーション』は、えてして “秩序の破壊” を意味する。それを一部の「評論家」が持て囃したのはまずかった。

 問題が起きたとき、これら評論家は「経営者が若い」とか、「既存の価値観に馴染みにくい分野」と言った “免罪符” を与えて来た。堀江氏が登場した頃、そういう評論家が数多く存在していた。無論、彼らを “用いた” のは自己を正当化する「マスコミ」だった。

 ホリエモンは続ける。

            ★
 
 ――若者は、“野蛮、野心、金持ち、いい車、いい家”。それでもいい。

 そうなってから、立派なこと考えてやればいい。金も人脈も地位もなく、立派なことなんてできないでしょう。社会はある程度許容するべきだが、日本にはそれがない。大相撲の不祥事だとか、なんでもそう。ちょっとでもチョンボすると徹底的にたたいて、二度と立ち上がれないようにする。危ない社会です』

            ★

 首都圏を見下ろす超高層ビル。若くして成功した「IT企業」の経営者達。一等地の豪邸に並ぶ何台もの外車。「億ション」クラスの超高層マンション。


 一時期、『IT企業』の若き経営者達が、「サクセス・ストーリー」の代名詞のように持て囃された。堀江氏はその一人として、マスコミにより “時代の寵児” として祭り上げられて行った。
 
 だが “大喝采” ではなかったのは、「ごく普通の社会の大人」達が、この青年を “悪しき市場主義” の “拝金主義者” として眉を顰(ひそ)めたからだ。

 “立派なこと” をしてくれとは、誰も頼まなかった。ただ “” という最低限度のルールを守って欲しかったにすぎない。
 
 ともあれ、「マスコミ」特に「TV業界」は彼を欲した。「お笑い系」とはちょっと違った「バラエティー系のキャラ」として重宝したようだ。創業当時の『とんでもない若造』仲間や「美人秘書」とやらとともに、「旅行」から「グルメ」番組まで実によく起用していたように記憶している。 

            ★
 
 今回の「収監」は、彼自身をそして周りをどのように変えていくだろうか。
 だが簡単には変わりそうにもないようだ。「TV界」は、これからも彼を何らかの形で登場させるだろう。彼に続く『若造』や『企業』を秘かに期待しながら。

 あるいはさりげなく “培養” しながら。「新たなるとんでもない若造」が現れたそのときには、無論、すぐさま切り替えることができるようにと “抜かりなく” 待ちながら……。
 
 そのため、平穏な生活を望む「ごく普通の社会」は、“容認” し得ない“チョンボ”を犯す『若造』や『企業』から身を守るため、これからも膨大な “時間と手間と費用” をかけるだろう。

 2年4か月少々は、はたして長いのか短いのか。だが獄中より「メルマガ」を発信したいとする彼にとっては、“脱メタボ” のためのほどよい時間なのかもしれない。

 ここはひとつ、「ごく普通の社会の普通の大人」の“責任”として、『限りなく不透明に近い、とんでもない哲学』とやらの “帰趨” を見守りたい。

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◆災害危険区域(安全な都市・居住地域・土地を求めて-No.5)

2011年04月23日 13時11分51秒 | ■東日本大震災に学ぶ
   ☆本シリーズには『ハザード事典』を参照ください。



 4月19日午前3時の「asahi.com」に、以下のような「見出し」の記事がありました。
 ※以下は筆者において記事を抜粋・再編集しました。

  津波の被災地、建築禁止――岩手県沿岸12市町村

 記事によれば、 岩手県は、このたびの「津波」で浸水した「沿岸12市町村」の約58平方キロ(東京ドーム約1240個分に相当)に渡る区域で、「住宅」などの建築を禁止する方針を決めたようです。具体的には、12市町村に対し、「建築基準法」の「災害危険区域」指定の「条例」を制定するよう求めるとのこと。

 「禁止期間」は「防潮堤」の再建などで、住民の安全が確保されるまでということですが、短くても「年単位」となるそうです。
 県の方針は、原則として「浸水全域」を「災害危険区域」に指定した上、地域の実情に合わせて区域拡大を求める方針。これらの区域では土地所有者の「私権」が厳しく制限されますが、県は「被災者の安全を守り、無秩序な建築を防ぐための措置」と説明しています。

 市街地が壊滅的な被害を受けた同県の「陸前高田市」などでは、「がれき」撤去が進むにつれて「自宅跡地」に「プレハブ住宅」を建てる住民も出始めていたようです。「災害危険区域」に指定されると「住宅」などの「建設」はできなくなり、行政の復旧・復興計画がスムーズに進む利点があります。

同様に宮城県も「建築基準法」を適用し、気仙沼市など3市2町で2カ月限定(5月11日まで)の「建築制限」をかけたとのこと。ただし、「災害危険区域」指定にはいたらない応急的な措置のようです。

 また 岩手県は「2カ月で復興の青写真をつくるのは無理」(若林部長)と判断しました。具体的な禁止期間の判断は各市町村に委ねるものの、防災施設の整備や防潮堤の再建までを念頭に、長期間になると想定しています。

 このような大規模災害後の「災害危険区域」の指定は、1993年の北海道南西沖地震で津波被害に遭った奥尻町や、2004年の新潟県中越地震で被災した同県旧川口町(現長岡市)の例があります。いずれも指定面積は小さく、住民の強制的な集団移転が目的だったようです。

 なお『災害危険区域』とは、3月16日の本ブログ『「地デジ化推進」より「津波対策推進」を(上)』の「津波」のときに説明しましたように、「建築基準法第39条」に出てきます。再掲――、

 第三十九条  地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる。
 2  災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、前項の条例で定める。

 
 「条文」をよく読むとお判りのように、「災害危険区域」の「指定」については、実際に災害の危険という事実が生じなくとも「危険が著しい区域」であれば、「指定」することができると言う点にあります。しかも、都道府県(市町村)単位の「条例」として定めうるのがポイントです。

 簡単に言えば、「いつでも指定できる」のが、この「災害危険区域」というわけです。
 そのため、今後多くの都道府県(実際には市町村)において、「災害危険区域」の指定の拡大が急速になされることでしょう。現在、各自治体において、「災害区域指定」のための「現場検証」などが精力的に行われているはずです。
 そして、実はこれらの「災害危険区域」を知るための具体的なツールが『ハザードマップ』をはじめとするものです。

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・片づけの神様(下):“挙句” のはてに

2011年04月21日 02時58分12秒 | ■男と女のゐる風景

 お気づきのように、「エンジェルC」は≪そのひと≫を指し、仲間内では『姉御(あねご)』と呼ばれている。「アラフォー世代」を代表する “才色兼備” であることは、誰もが認めるところだ。

 しかし、彼女よりグンと年長の筆者は、愛と親しみを込めて『U子さん』と呼ぶ。
 
 さて第三の句はどう返したものだろうか……。

 反射的に、『……もちろん、エンジェルC嬢をお願いします』と浮かんだ。だが “もちろん” はまずい。いかにもC嬢に迎合したという響きだ。

 ここは抑えて、『では……エンジェルC嬢でもお願いしましょうか』と言うのは……。しかし、“変に持って回った” この言い方はさらにまずい。単に “さりげなさを装っている” だけではないか。
 
 さりとて、『貴社お奨めのエンジェルであればどなたでも……』などは “敵前逃亡” とみなされるだろう。こういう「アルコール・ゼロパーセントビール」のようなことを “返そう” ものなら、『姉御』は「下足番」の「佐助」にこう命じるに違いない――。

 

 『ほら、佐助秀理師匠はお帰りだとさ。草履を出しておやり。

 ……なにぐずぐずしてんだよ。さっさとおしよ! 早く帰りたいとおっしゃってるんだから……』

 てな具合に、とっとと “一座” から放り出されるだろう。

 いっそのこと、ここは “沈黙” を保って相手の出方を見ると言うのは……。
 だが……と不安が募った。いきなり『エンジェルC嬢』いや「姉御」が派遣されて来ないとも限らないのだ。

 『お客様からのお返事はありませんでしたが、日ごろのご愛顧にお応えし、特別感謝サービスとしてまいりました』 

   ……とか何とか言いながら、ドアの前に立っていたりして……。

 美女の来訪は大歓迎だが、それでは “こちらから首を差し出す” ようなもの。“発句” の作者として、それだけは意地でも避けねばなるまい。

 とはいえ――、
 
 『エンジェルC嬢にお伝えください。ご厚意は心より感謝申し上げます。しかしながら、貴方様のそのお心遣いの愛の魔法により、奇跡的に片付きましたので……』

 などは「最悪コース」となりかねない。下手をしたら『姉御』は、“落胆” と “憐み” を込めながら「下足番」にこう漏らすだろう――。



 『佐助、聞いたかい? 秀理師匠は、“引退” なさるんだと。

 ……もうちょっとやれるかと思ったんだけどねえ……』 

 勝手に引退させられてはかなわない。師匠いや筆者は、強引に脳味噌をかきまわしながら悶々と悩み続けた。だが『第三の句』の何と遠いことか。

 気がつけば、『脇句』をつけられて以来 “小一時間”、こちらからは “一文字” たりとも返信していないことに気付いた。

 これが焦らずにいられようか。もう『第三の句』などと気取っている場合ではなかった。ぐずぐずできない。いつなんどき次の “一撃” が飛んでくるかもしれないのだ。そうなれば、「ハードル」はさらに上がるに決まっている。

 だが焦れば焦るほど、事態はよからぬ方向へと傾く。何と! 携帯電話のバッテリーが切れたのだ! 慌てて充電器を差し込みながらも、その一秒、二秒を惜しまなければならなかった。

 そして、やっと言葉がまとまりかけ、当座の充電が出来たと思ったまさにその時、着信のメロディが元気よく鳴った。

 『本日の業務はすべて終了いたしました。明日の業務は、午前9時より午後5時までとなっております。お急ぎのお客様は……』

 “やられた!” と思っているところへ、絶妙なタイミングで “追加の一撃” を食らった。



 『今後、弊社はどのようなお客様のご要望にもお応えできるエンジェルの採用と教育に努めたいと存じます。ことにひときわニーズの高い “美人でグラマーでタフなエンジェル” につきましては……。今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。 ――エンジェル・ワークス』   

 これは “とどめの一撃” となった。筆者は “ようやく”……というか “かろうじて” 次の一行を打った。

 As time goes by.
 
 そして、その1分後、次の「一節」を『挙句』とする腹を決めた。

 BIG WHITE FLAG! (了)

  

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・片づけの神様(上):エンジェル派遣会社

2011年04月18日 20時46分23秒 | ■男と女のゐる風景

 先月3月の30日と31日の両日、「引越し」を敢行した。今回は、荷物の「仕分け」から「箱詰め」までを一人でやり終えた。初めからそうするつもりであったため、誰にも言わなかった。だがほぼ2週間を要した。

 しかし、引越先での「荷解き」と「片づけ」を “たった一人で” というのは限界に来ていた。単調な作業と蓄積疲労のために何度も「片づけ」を放棄し、いつ果てるともない荷物の山の中で読書に耽った。というより、半ば不貞腐れての “職場放棄” が真相だろう。

 そのため、“退屈しのぎ” に「一通のメール」を “ある女性” に送った。

 『急募!“片づけの神様”。できれば“美人でグラマーでタフな方”。当方、一人黙々と片づけ中!』

 さて、どういう「ボキャブラリー」の “作品” が返ってくるだろうか……。
 

 20分ほど経過し、メール着信音が鳴った。観ると――、

 『弊社へのご依頼ありがとうございます。しかし、残念ながらお客様のご希望に100%お応えできるスタッフはおりません。一応該当者は2名おりますが、一人は “美人でグラマーではあるものの、タフさに欠けるエンジェルA”、もう一人は “美人でもグラマーでもないものの、タフさには定評のあるエンジェルB”。どちらをお望みでしょうか?』

 なるほど……。

 だが、おやっ? と思った。筆者が予想していた “作品の傾向” から離れていたからだ。“お目当ての彼女” であれば、おそらく――、

 『 “片づけの神様” なんかいるわけないでしょ!』とか、
 『トイレの神様にでも頼んでみたら……』といった感じの “作品” のはずだった。機嫌が悪いときなら、
 『暇な年寄りの相手をする暇なんぞねえつうの!』といったところだろうか。
 
 さて、さて。どういう “心境の変化” だろうか? 
 だが次の瞬間、筆者の全身に鳥肌が立つほどの驚愕が走った。

 筆者にはすぐに “作者” が判った。“あのような戯れ” に “かくなる切り返し” で応じうる女性は、他に考えられなかった。

  何と筆者は、事もあろうに一番送ってはいけない≪ひと≫に送ってしまったのだ。つまり「送信先」は、“お目当ての彼女” ではなかった。

 この “落とし前” をどうつけるべきか。問題のメールを受信した≪そのひと≫の表情を想い浮かべながら、見事というほかない『切り返しのメッセージ』に改めて目を通した。“さすが” である。心の中で讃嘆のエールを送りながらも、懸命に “対処法” を模索し始めていた。
 
 もちろん≪そのひと≫は、筆者からの「メール」が、本来、他へ行くはずであったことなど百も承知だ。

 といって、そのことをストレートに返信するほど “無粋” ではなかった。彼女は明らかに連句のような心得で筆者の発句脇句をつけたのだ。……となれば第三の句を付け返すしかない。
 はてさてどう応じるべきか……と悩みに悩んでいるところへ――、

 『追加候補をご案内いたします。彼女は “美人でもグラマーでもなければ、タフでもありません”。しかし、本人より “お客様宅への派遣を” とのたっての要望が入っております。さきほどご紹介いたしましたAB二人に、このエンジェルCを加えた三者よりお選びください』

 何と破調の脇句パート2だ。これによって第三の句のレベルはグンと上げられたことになる。それは、『今さら “謝罪” や “弁明” なんて野暮なことはなしですよ』と釘を刺されたに等しかった。

 かくしてアラカンの「不貞腐れ親爺」は、膨大な荷物とゴミの山の中で座り直し、この最強の連衆と向き合う覚悟を決めた。(続く)

       ★  ★  ★  ★  ★

 

 ★連句(れんく):俳諧(はいかい)用語。十七音節(五・七・五)の長句と十四音節(七・七)の短句を、一定の規則に従って交互に付け連ねる様式の詩文芸。

 第一句(長句)を発句(ほっく)または立句(たてく)、第二句(短句)を脇句(わきく)、第三句(長句)を第三の句といい、この三句を一括して三つ物(みつもの)とよぶ。第二句以下を発句に対して付句(つけく)、第四句以下を三つ物と区別して平句(ひらく)、最終の句(短句)を挙句(あげく)(揚句)という。[出典:Yahoo百科大辞典(日本大百科全書:小学館)]

 ★連衆(れんじゅ。れんじゅう):連歌・連句の会席に出て詠み合う人々。[Yahoo辞書(大辞泉)]

 ※いずれも「原文」のままとしています(筆者註)。



 

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◆「危険な地形」と地名から知る「要注意地形」(安全な都市・居住地域・土地を求めて-No.4)

2011年04月15日 03時29分36秒 | ■東日本大震災に学ぶ

   ☆本シリーズには『ハザード事典』を参照ください。



 比較的安全な「台地・段丘」 

 今一度【災害と地形との関連】に目を通しましょう。
 大きく5種類の【地形】と、その【受けやすい災害】とが「表」にまとめてあります。  
 台地・段丘」にある「高・上・中・下位面」は、「(災害が)ほとんどなし」。つまり他の地形にある「内水氾濫」も「土石流」も、「河川洪水」「高潮洪水」「地震・地盤災害」などが「ほとんどない」という安定した地形であることがわかります。「台地・段丘」の「低位面」において「まれに内水氾濫」がある程度です。
 ところが、その他の4つの地形には、ほぼ同じような「災害」の可能性があることになります。
 
 しかし、この「基準」はその説明にあるように、『今までの災害調査で得られた災害と地形の関係を整理したもので明確な基準ではありません』としているように、絶対的なものではないのです。
 それは「専門的な分析」を信頼しないというのではなく、「災害」が常に「人間智を遥かに超えたもの」であるという厳粛な事実から来ています。

 後に『ハザード入門』でも触れますが、「人工地形」ことに「埋立地」や「山を切ったり」(切土)、その「土を盛ったり」(盛土)した「造成地」は、「災害の危険性」がかなり高く、最大限の注意を要します。

 なお「表」に出てくる各種「地形」の説明については、【詳しい説明】をクリックすると【土地条件調査】が出てきますので、その「左上」の【各地形分類項目の説明】をクリックしてください。

 それによれば、「台地・段丘」は、【台状または階段状の地形】とあります。「土地条件図」では、高いものから「高位面」「上位面」「中位面」「下位面」「低位面」の「5段階」に分類しています。

 「低地」に比べて、河床からの「比高」が大きいため水害をうけにくく、また「地盤」も良いため震災を受けにくい地形とあります。

 また「後背低地」は「自然堤防」や「砂(礫)堆」などの背後に位置し、河川の堆積作用が比較的及ばない「低湿地」です。非常に「水はけ」が悪く、「地盤」は軟弱となっています。

 さらに「旧河道」とは、「低地」の一般面の中で周囲より低い帯状の凹地で、過去の河川流路の跡。非常に浸水しやすく、水はけが悪いようです。なお「旧河道」を埋土や盛土したところは、それぞれ後述の「埋土地」または「盛土地」と表示されます。


 地名(字名)などにも地形の特徴が……

 また昔からの「地名」ことに「字名」などにも、その土地の「地形」の特徴がよく表現されています。 
 「島、崎、江、津、浦、沖、河、岸」や「海、川、池、湖」等が「」と関係が深いことはお判りでしょう。

 それに「洲・潟・浜・瀬」や「沼、沢、谷、窪、溝」などもそうです。また「田・井・堤・」や、水辺の「植物」を意味する「葦、芦、萩、蓮」、それに水辺に集まる「」の「鴨・鶴・鷺」、さらに「蟹・貝」などの名前からも、「」と関わりの深い「土地」の特徴がうかがえます。

 ◆ハザード事典  

        

           ★★★ 夜のハザード ★★★

 ――確かに昔から「サンズイ(水)」にちなんだ名前の土地は、用心しなくちゃって言われていたのね。それに「脚の長い鳥」の名前が付いた所も。その手の鳥たちが、お水を求めてせっせとやって来た土地ってことでしょ?

 ……あら? こんなところに名刺が落ちているわ。

 あれっ? これって「」に深いご縁をお持ちの御仕事の方みたい。 え? もしかしてこの方も、長いおみあしの方 ?❢ 

  ……ってことは、あたくし思うに、こちらのハザード・マップ」も必要でしょ? そう。絶対に必要よ❢

 でも夜のハザードって、暗くて、なぜかとっても密集した所なんでしょ? おまけに、〝この夜のハザード餌場を、特に好んでに寄って来るいろいろなanimal〟も多いとか……。ああ、やだ やだ……ねえ、そうでしょ❢

   ね~え……聞いてる? ねえ? ……あれっ? 眠ちゃったの?❢

 

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・結婚当初の約束―高崎からの手紙

2011年04月12日 07時06分03秒 | ■男と女のゐる風景
 
 十数年ほど前のことになる。私は不動産業のコンサルタントのかたわら、建築関係の資格試験受験生を教えていた。本業の合間のレッスンのため、次第に「マンツーマン」で教えるケースが多くなっていた。

 三十歳前のKさんもそのような一人であり、彼女は離婚したばかりだった。専業主婦のため、離婚が決まったとき『三歳の子を抱えて、どうやって食べて行こうか』という現実に頭が真っ白になったという。相談の結果、「キッチンスペシャリスト」をめざすことになり、三歳の娘を母親に預けてのレッスンとなった。

 三回目か四回目に、私は彼女を「住宅設備機器メーカー」の「ショールーム」に案内した。ここは「システムキッチン」をメインとした九州でも有数のショールームであり、住宅設備機器の勉強には持って来いの教室と言ってよかった。バスユニット、洗面化粧台、便器それに照明器具等があり、床材や屋根材も揃っていた。インテリアコーディネーターや建築士志望の生徒にも、一度は必ず連れて来る所だった。

 ひととおりシステムキッチンを見終えた後、「リビングルーム」を模した照明器具の部屋に来た。ちょうどそこに、夫婦と小さな兄妹の一家が入って来た。照明器具を仰ぎ見る夫婦の横で、二人の幼児がはしゃいでいる。穏やかで優しそうなご主人、麗しく上品な奥さん、いかにもその両親の愛情に育まれたという男の子と女の子。「ホームドラマ」の一場面のような“微笑ましい家庭”が目の前にあった。
 
 夫婦は見るからに仲睦まじく、理想の夫婦ともいえる会話の雰囲気が感じられた。そのため、私はしばらく夫婦と二人の子供に気を取られてしまった。

 はっと気づいてKさんを見た。彼女は“レッスン中の生徒”として熱心に照明器具を眺め、気づいたことをしきりにノートに書き込んでいた。いや、そのことに集中しようとしているかのように私には見えた。


「男の子と女の子の兄妹っていいですね」
 帰りの車の中で、助手席のKさんが呟くように口を開いた。まっすぐ前を向いたまま、どこか吹っ切れたような雰囲気があった。

「わたくしも別れた夫も一人っ子でしたから、結婚したとき、子供は二人以上……って約束したんです」
 私は、自分が四人の兄弟姉妹であること、兄と二人の妹がいること。そして子供は、娘三人と息子が一人いることを、Kさんの反応をうかがいながら少しずつ足して行った。彼女の表情が和らぎ、“まあ”とか“すてき”と言った、これまでの彼女からは聴くことのなかった「感嘆詞」が混じり始めた。

「兄弟姉妹が多いというのは、夫婦のためというより、子供達のためですよね」
 Kさんはそう言いながら、穏やかな表情で運転席の私の方を向いた。

             ☆  ☆  ☆

 それから半月ほどが経過した。いつもの通りレッスンを終えたとき、Kさんが話し始めた。
「実は別れた夫ともう一度話をすることになり、群馬の高崎に行くことにしました。しばらく一緒に住むことになると思います」
 高崎はご主人の実家であり、“別れた理由”は、この“高崎行き”に納得できなかったからという。

「でも三日後、ここでレッスンを受けているかもしれません」
 微笑みながらも、彼女の眼差しは真剣だった。

「ということは、今日が最後のレッスンですね」
「それはまだ何とも……」 
 しかし私には、直観的に今日が最後になるような気がした。またそうなって欲しいという気持が強く湧いてもいた。

 私は、次回以降に予定していたレッスンの「資料」をすべて彼女に渡し、「問題集」をプレゼントした。それに、急遽作成したA4判の「卒業証書」を加えた。
「では今日が卒業式ということにします。……万一、再入校という場合は、いつでもお迎えしますから」
 Kさんは、少しおどけた表情でうやうやしく「卒業証書」受け取った。だがすぐに彼女の目から涙が溢れ、しばらく俯いたままだった。 
 

 それから一週間、二週間と経過したものの、Kさんからは何の音沙汰もなかった。そして一か月、二か月と経過し、ほぼ三か月が過ぎた頃、Kさんからの手紙を受け取った。

 連絡の遅れを詫びる文面のあとに、高崎の街やそこでの慌ただしい生活の様子が描かれていた。慣れない土地のため、自分も娘もしばらく調子を崩したものの、今はすっかり元気を取り戻したこと。だが「キッチンスペシャリスト」の勉強は、なかなかはかどらないという。そして「追伸」の欄に、たった一行こう書いてあった。

 『結婚当初に、夫と交わした“約束”を果たすことができそうです』

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◆安全な都市・居住地域・土地を求めて-No.3(小・中学校用地選定に学ぶ:下)

2011年04月10日 00時43分34秒 | ■東日本大震災に学ぶ
   ☆本シリーズには『ハザード事典』を参照ください。


 
 「洪水・地震」等の災害は「地形」と深く関わっている


◆考えられる敷地用件

 ◇自然条件
地 形……平坦地、傾斜地、平地、高台等
・地盤の特性……地層の特性(地質・地耐力)
・敷地の状況……方位、景観、排水
・既存物の状況……文化財、墓地、埋蔵物等
気象の状況……日照、風向、風速等、災害に強い地域であるかどうか

 ◇社会条件
・位置……中心地、住宅地、産業地区、文教地区、人口集中地区
・利便性……利用しやすいところか(交通網の状況・道路の状況・他の公共施設との関連位置等
・安全性……交通量、騒音・悪臭、管理適地かどうか、官公署との位置関係等
・規模……付帯施設を含めて、統合幼稚園・小学校の建設面積として十分かどうか 2.5~2.8ha以上(有効面積)

 ◇建設・造成条件
  建設を行うにあたり、敷地の位置、敷地の形状や地質等が考えられる。

                    ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

 「各論編」は以上ですが、みなさんにとって「重要なポイント」は、≪自然条件≫の「地形」と「気象の状況」中の災害に強い地域であるかどうか」です。そしてこの地形」と「災害」とは、切っても切り離せない密接な関係を持っています。 ことに「地形」については、まもなく連載予定の『ハザード入門』の「最重要キーワード」となります。その際に詳しくお話しますが、とりあえず【ハザードマップ】と「検索」してみましょう。

 国土交通省ハザードマップポータルサイト

 と出てきます。その【土地条件図を見る】をクリックしてください。

 文章説明として、次の「3項目」があります。 ※「abc」は筆者において仮に付けました。
 a.【土地条件図の内容】
 b.【災害と地形との関連】
 c.【地形から災害の危険性を知る】


 まず「abc」の3つの「説明文」総てに目を通してみましょう。途中にある「図解」や「リスト」を軽く眺めながら読み進めても5、6分程度で終わるはずです。この段階では「他の所をクリック」しないで、まずは「abc」をきちんと読んでください。とても判りやすい説明となっています

 ことに「」が重要です。その説明にもありますように、「地形と災害との関連」を一覧表としてまとめているからです。あまり難しく考えずに、現在お住まいの「地形がどれに当てはまるか、あるいはこれから検討しようとしている地域・土地がどのような「地形なのか、そして「その地形が受けやすい災害をしっかり把握しましょう。

 
 この『安全な都市・居住地域・土地を求めて』や、今後の『ハザード入門』の「連載記事」につきましては、できるだけ多くの方々に目を通していただきたいと思います。身近な方に勧めていただければ幸いです。
 ご意見等につきましては、 e-mail sumai-souboh@mopera.net へどうぞ。
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◆安全な都市・居住地域・土地を求めて-No.2(小・中学校用地選定に学ぶ:上)

2011年04月08日 00時18分28秒 | ■東日本大震災に学ぶ
   ☆本シリーズには『ハザード事典』(「ハザードマップ事典」から名称変更)を参照ください。


  なぜ小・中学校は「災害時の避難所」となるのでしょうか?

 昔からいつも「災害時の避難所」として真っ先に挙げられるのが「公立」の「小学校」や「中学校」です。言うまでもなく、各種災害時の「避難先」として「指定」されているわけですが、日本人である私たちはそのことを当たり前のように思っています。それほど≪災害時の避難所=小・中学校≫という図式は完璧に浸透しているような気がします。

 では、なぜそうなのでしょうか。
 言うまでもなくその最大の理由は、「たくさんの子供たちが学んだり、遊んだりする所」であるため、他の施設よりもいっそう「安全性」に配慮した「立地」の選択がなされているということでしょう。また建築基準法上の「特殊建築物」として、通常の「建築物」よりも厳しい諸基準に基づいているからでしょうか。
 何と言っても「敷地」も広く、「校舎」が大きいために「目立ちやすく」、また「収容人数」がかなり見込まれることもその大きな理由でしょう。「体育館」はその最たるものです。


 小・中学校の「敷地」は「安全・快適な住宅用地」の参考 

 では「小・中学校」などの「用地の選定」に当たって、どのような留意点があるのでしょうか。そこで「文部科学省」の「ホームページ」を当たってみたのですが、特にこれと言ったものは見当たりませんでした。「学校教育法」によって「小・中・高」の「設置基準」が定められているにすぎず、「学校用地の選定基準」といった明確なものはないようです。
 とはいえ、何とか「幼稚園や小学校に関する計画条件」という記事を見つけました。
 
 これから紹介する事例は、「ある幼稚園と小学校」に関する「計画全体の総論的な記述」であり、「学校用地」に限定した「土地の選定条件」ではありません。記述の一部にそれと思われる「表現」があるにすぎません。
 その「内容」は常識的なものですが、「一般の建設用地」ことに「住宅用地」を考える上で参考になるのは確かです。  ※「原文」のままですが、「ゴシック」や「アンダーライン」「色文字」部分は筆者によるものです。


 ◎ある幼稚園・小学校の計画条件

(1)敷地候補地の選定 
 幼稚園・小学校用地の選定にあたって、国道・県道から遠く離れず、町中心部から1.5km以内で、園児・児童の安全確保のために災害の危険性がなく、日照時間・風通し・排水などが良好で、騒音がなく、四季の変化が肌で感じられるような場所が望ましい。また、規模については、必要諸室、付帯施設及び運動場等を考慮すると小学校用地としては、2.2~2.5ha以上、幼稚園用地では0.3ha以上、あわせて2.5~2.8ha以上が必要である。
  ※1ha(ヘクタール)=10,000㎡=100a(アール)
 
 アンダーラインの「園児・児童」を「居住者」に読み替えると、そのまま「一般住宅」にも適した「用地」となります。
 次回は、この『ある幼稚園・小学校』の【考えられる敷地条件】として、「自然条件」(地形、地盤等)、「社会条件」「建設・造成条件」を紹介します。いわば「各論編」です。

 
 ★この『安全な都市・居住地域・土地を求めて』や、まもなくスタートする『ハザード入門』の「連載記事」につきましては、できるだけ多くの方々に目を通していただきたいと思います。身近な方に勧めていただければ幸いです。
 ★ご意見等につきましては、 e-mail sumai-souboh@mopera.net へどうぞ。
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◆安全な都市・居住地域・土地を求めて-No.1

2011年04月06日 13時28分41秒 | ■東日本大震災に学ぶ
 
  私の人生観と建築・不動産観を変えた大震災

 以前よりこの「花雅美秀理のブログ」をご覧の方はお気づきでしょう。記事左手の『自己紹介』の「文言」が変わったことを。実はこの「文言」の修正は、昨日4月5日の早暁でした。

 そこにありますように、このたびの「東日本大震災」は私の「人生観」を変えたと言えるでしょう。それとともに、私の本業分野の「不動産取引」や「建築そのもの」についての「考え方」や「観方」も変えようとしています。
 それは私だけでなく、都市計画や建築・不動産、そして関連産業や防災関係に携わる多くの人々がそうではないでしょうか。というより、総ての国民が多少の考え方の違いはあっても、同じように感じているはずです。

 今回の「教訓」として、私たちは【従来の経験や実績を一度リセットし、新たな発想のもとに創りなおす】くらいの覚悟が必要なのかもしれません。
 1995年1月の「阪神・淡路大震災」。あの大震災から日本は、そして私たちはいったい何を学び、何を「教訓」として将来の地震等の災害に備えていたでしょうか。今一度“喉元過ぎれば熱さを忘れる”ことのないよう願うばかりです。
 
 これを機に、今後の「災害予知」や「危機管理」、さらにはそれらに対する事前の「周知徹底」や「教育訓練」について、国民的運動として取り組まなければならないと思います。また必ずそうなっていくことでしょう。


  地デジ化問題はしばらく凍結を

 そう言いながらも私の頭の中には、耳にこびり着いて離れないあの……『電話して! 地デジ!』のフレーズが、『地デジ化のイメージキャラクターの鹿』とともに甦って来ます。3月11日の大震災以来、ピタリとそのCMがストップしたというのに。

 いかにこの「アナウンス効果」が大きかったかという見事な証左といえるでしょう。まだお読みでない方は、本ブログの『地デジ化推進より津波対策推進を』(3月16日・18日)をぜひご覧ください。
 私見ですが、この「地デジ化問題」はしばらく凍結すべきではないでしょうか。「大震災」に関連する未解決の問題があまりにも多く残されているからです。

 
  安全な都市・市町村・居住地域なくして、安全な土地(敷地)なし

 ともあれ今後は、≪安全な都市・市町村≫や≪安全な居住地域≫がいっそう強調され、その結果はじめて、具体的な「個々の区画」の≪安全な土地(敷地)≫が意味を持つことでしょう。
 
 そこで私は、この「ブログ」において、以下のことを中心にお話したいと思います。といって、そのときどきの状況によって、緊急課題のテーマを挟むことがあるかもしれません。予定としては、当面「週に1~2回」程度のペースで綴ることができればと思います。

 (1)≪安全な都市・居住地域・土地(敷地)≫とは?
   現在お住まいの建物敷地の検証方法の解説です。これから「土地(建築敷地)」をお探しの方もぜひ参考にしてください。 
 (2)『ハザード入門』 ☆「ハザードマップ入門」を名称変更しました。
   判りにくいと言われている各種「ハザードマップ」を、できるだけ「わかりやすく解説」したいと思います。
 (3)各種「災害・防災・危機管理等用語」のわかりやすい解説 
 
 
 ★この『安全な都市・居住地域・土地を求めて』や、いずれスタートする『ハザード入門』の「連載記事」につきましては、できるだけ多くの方々に目を通していただきたいと思います。身近な方に勧めていただければ幸いです。
 ★ご意見等につきましては、 e-mail sumai-souboh@mopera.net へどうぞ。

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・ジャックダニエルと蝋燭とバロックと(試聴)

2011年04月03日 19時45分52秒 | ○MUSIC
 
 
 3月14日朝、大学時代の親友S君から、去年の5月以来久しぶりにメールが来た。『小生、この3月15日で現職を退任します。帰京する前に3月21日から九州に旅行しますが、22日に博多で会えればと思っています。都合はいかがですか。その日に神戸に帰る予定です』とある。

 彼が会いたいと言うその日22日は、翌日に控えた母の「三回忌」のため、神奈川と東京在住の実妹二人が来福する予定。いつもは筆者が迎えに行くのだが、今回は運がよいことに実兄の担当となっていた。

 彼との再会は3年振りだろうか。筆者は拙宅に泊まるよう促し、一杯やりながらゆっくり話をしよう。と返信した。

 数年前に細君に先立たれたS君。サラリーマンとしての後半は、ほとんどあちこち単身赴任を繰り返しており、最後は神戸に赴任していた。そしてバツイチで一人暮らしの筆者。
 ……誰に気兼ねすることなく飲み明かすことができる……と互いにそう思ったはずだ。そして現実もまさにその通りになった。

 22日昼過ぎ、筆者は博多駅まで迎えに行った。その後、いつものように彼が好きな『因幡うどん』を食べ、筆者同様海が好きな彼のために百道(もも)浜まで案内し、二人して人工の海岸を歩いた。ほとんど人気がないだけに風が一段と冷たく感じられた。

 夕食を簡単に済ませ、晩酌用にと互いの好物の「辛子めんたい」を調達した。和室に座卓を出し、いつでも布団に潜り込める態勢でささやかな宴が始まった。メインはこれまた共に大好きな「ジャックダニエル」。筆者はその「お湯割り」を勧めた。彼は「お湯割り」は初めてという。飲みすぎることなく心地よく酔えると筆者が言うと、彼はひどく感心していた。 

 舞台が整えば後はもうこれしかないと、筆者は22日午前0時にアップしたばかりの『三つのアヴェ・マリア』に目を通してもらった。そして、“三大アヴェ・マリア”それぞれに耳を傾け始めた彼は、いたく気に入った様子で目を瞑り、心地よさそうに俄か指揮者を演じ始めた。

 『電気を消して聴くのも悪くないな』と呟く彼のため、筆者は法事用の大きな蝋燭を灯して電気を消した。
 シューベルト、カッチーニ、そしてグノー(バッハとのコラボ)の三つの「アヴェ・マリア」が何度も繰り返された。

 彼はいっそう興にのってきた。クラッシック好きの彼のためにと、筆者はスペシャルメニューの楽曲を用意した。それはJ.S.バッハによるカンタータだった。彼の満足度が一段とアップした。

 「バロックみたいだ」と呟くS君。後で調べたところ、バロックとはまさにこのJ.S.バッハを最後とするようだ。
 有名な『主よ。人の望みの喜びよ』のタイトルで知られるこのカンタータ。読者もぜひお試しあれ……。

 下のリンク先に3つの「You Tube」の画面が出てきます。その一番目三番目がそうです。それぞれに味のあるバロック調のカンタータです。

  試聴:『主よ、人の望みの喜びよ』


★バロック:1600年頃からJ.S.バッハが死去する1750年頃までの西洋音楽
★カンタータ:バロック時代の重要な声楽形式の一つ
※出典はいずれも「ブリタニカ国際大百科事典」より抜粋。
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