数日前の報道で、伏見「寺田屋」が幕末期の建物か否かの再調査を実施すると市当局が発表した。地元では、当時の寺田屋の建物は焼失したとの説があるからである。
JR稲荷駅構内にあるランプ小屋は、旧東海道線の建物として残ったただ一つのランプ小屋で、同時に国鉄最古の建物として、旧国鉄は「準鉄道記念物」に指定している。この建物は鉄道マニアのシンボル的存在で、日本赤煉瓦建築番付(赤煉瓦ネットワーク版)では西の大関にランクされている。
現存するJR稲荷駅のランプ小屋 同説明板の拡大写真(08-09-05写す)
この稲荷駅は明治12年(1879)に建造されており、ランプ小屋も駅の開業と同時に完成したことが、準鉄道記念物に指定の根拠となっていた。ところが、寺田屋と同じようにこの根拠に異説がでてきたが、鉄道構造物の権威・小野田滋(工博)が公文書などの細部考察を行い、その結果を下記冊子に報告した。
土木史研究 講演集Vol‐26 2006年 稲荷駅ランプ小屋の建設年代について
小野田氏は、明治期における全国のランプ小屋の調査を実施し、東海道線には79ヶ所にランプ小屋があったと発表し、そのうち27ヶ所が転用も含めて現存することを確認した。
小野田氏の論文の結論部分を引用すると
……現存する稲荷駅のランプ小屋は、駅の開業時からしばらくあとの明治13年(1880)に建設された木造平屋建のランプ小屋を撤去し、駅の改良工事に併せて明治33年(1900)に建設したもので、その後、昭和10年(1935)の駅本屋の改築に伴って京都方の半分(物置部分)を撤去して現在に至っている。……
この結論は裏付け資料が整っており、説明板記載の表現は間違っている。JR東海は、この事実を知っていると思うが、論文発表から時間も経過したので、説明板の部分修正の要否を含めて検討していただきたいと思う。
小野田氏の調査によると、日本最古のランプ小屋は「敦賀港駅のランプ小屋」と推定しておられるが、ネット検索によると、このランプ小屋は一般公開されており、大きい説明板も写真で存在している。
小野田氏によると、稲荷駅のランプ小屋は建設年が公文書により特定できること、建設時の図面・仕様書も残っていることなど貴重な構造物であるので、今後の適切な形で保存されることを願いたい…と述べている。