祇園祭開催を直前に控えて

2008-07-09 18:51:19 | 歴史と散策

 今年の祇園祭は10日から鉾建てが始まり、巡行の翌日の18日まで四条通周辺において臨時の交通規制が行われる。今回は東京・秋葉原の無差別殺傷事件を受けて、安全対策に工夫を凝らした祭礼になり、新聞報道によると、来年はユネスコの世界無形文化遺産の登録申請を目指しており、運営面・体制面・歴史的背景面など文化遺産としての価値を示す多くの課題を抱えた祭礼になるといわれている。
 本日は、元京都市歴史資料館の館長を務めた山路興造氏の「二つの祇園祭~祇園祭の謎を解く~」という講演会(山科アスニー)に出席する機会を得た。歴史の知識に乏しい私にとって興味深い話を伺ったので、その一部を紹介する。
 祇園祭は執行の目的や日時が同じであるが、始められた時代や主体が異なる2つの行事が同時進行している。
① 八坂神社(祇園社)の行事……天皇・貴族たちの主催により、御霊を慰めるための御霊会が今日に伝えられた行事で、平安時代中期から始まった
② 下京町衆が始めた民族行事……自分たちの生活圏から疫神を集めて追い出すために、鉾や山を巡行させる行事で、南北朝ころから始まった。

平安京時代は梅雨に入ると食物が腐りやすく、疫病が流行し、大雨による鴨川の氾濫で水害を受けることの多い季節であった。この疫神を排除する目的で梅雨の季節に二つの行事が一体化して同時進行するようになった。
 祇園祭の謎としていくつかの話題を伺ったが、その一つを紹介する。7月10日と7月28日に行われる鴨川での「神輿迎え」の行事は神輿を洗って清めるためと伝えられてきたが、最近では鴨川に居られる神を八坂神社にお迎えし、祭が終わった後鴨川にお戻しする行事(私の解釈が間違っているかも?)で、神が留守の間を利用して「鴨川の床」を建てて住民が楽しむようになったという解釈がある。したがって、商売のため床を春の5月から8月まで延長しているのは史実を逸脱しているとの指摘があった。
 また、梅雨の季節を外して祇園祭を開催したほうよいという観光目的の意見を聞くことがあるが、上記説明のように梅雨の季節に開催する必要性があることもわかった。私のように途中から京都に移り住んだ人間にとって京都の歴史は深いものだと痛感した講演であった。今年も祇園祭を楽しみたいと思っている。