いよいよ本当に最後です。
餘部鉄橋を見て昼食、勿論ここも食べログで調べてきましたよ。最後ですからやっぱり日本海の幸を食べて帰ろうと…、
海鮮丼を注文しました。もう1時過ぎ、この香美町で是非見ておきたいところがあるんです。
そう、「大乗寺」という、高野山真言宗のお寺です。
みんなはもう寺はいいよ…という顔をしていましたが、私の涙ぐましいお世話を知っていますから、誰も反対する人はいません。聞けばここから5分ぐらいのところだそうですので、すぐ出発。
立派な山門…でも階段が見えます。奥の方にも駐車場が見えましたので、そちらまで車で上りました。
「ここは他所の駐車場かも…」と言いながら、お堂の裏から入っていく。草を取っていた作務衣のおばさん(?)から
「今度はあちらから入って下さいね」と言われ、すみませんと言いながら、
「お寺拝観できますか?」と聞くと、あちらへどうぞと言う。庭には樹齢1200年の楠のご神木も。
本堂らしき玄関には裃姿の銅像が据えてありました。「誰かしら?」とみな不思議がりながらも拝む。
普通は弘法大師像などを据えるはずなのにね~…などと言いつつ庫裡へ。
何と立派な梁に大きな竈、更に黒光りのする上り框…江戸時代を感じさせるには十分な造作でした。
さあ入ろうとした時…拝観料800円! みんなの足がピタッと止まりました。
実はこの寺は「応挙寺」と言って、円山応挙とその門弟12名の筆になる障壁画、165面があり、そのすべてが国の重要文化財に指定されているのです。そんな寺だから高いのです。
「どうする?」「ウ~ン、せっかくここまで来たんだから見ようよ。」と、全員一致。
すると誰かがシルバー割引ないの?と聞く。途端に嫌な顔をされてしまいました。
1時間ほどかかりますがいいですかと、先程の作務衣のおばさんが尋ねながら、案内してくれました。
寺の中はとても冷えるので良かったら毛糸のカバーも履いて下さいと、意外と親切。
先ずは「孔雀の間」。三方の襖に松と孔雀が三羽描かれていて、ホント見事な絵です。(これはパンフより)
これが応挙の亡くなる数ヶ月前に描かれたものだと…その力強い線には並々ならぬものを感じました。金地に墨だけで描かれているのに光線の具合によって松が緑に見えるなど…とにかくスゴイ!
西欧の遠近法等の手法を取り入れ、絵の人物の視線が動くように見えたり、犬が付いてきたりと、まるで魔法のよう…。 だまし絵と言う言葉がぴったり、特に「芭蕉の間」の「郭子儀図」は、その色の鮮やかさに唸りました。(これもパンフ)
ここでは、その素晴らしさを比較して貰うために複製画と原画を並べて見せているのだと…。(シゲシゲと見比べる) ホントに金箔の色が少しくすんでいるだけで、緑青や丹は全く変わりません。保存が格別なんだろうね。
ところで、この寺の絵はなべて立体的曼荼羅を構成して描かれているそうで、今はそれを学術的に研究中だとか。
他にももう沢山ありすぎて、とてもとても書き切れません。ゴメンナサイ!
また、それを説明するおばさん(?)の口の滑らかなこと!〝立て板に水〟とはまさにこれ。
ちゃんと約束の1時間で全てを終えてくれました。感謝!感謝!
ではなぜこの寺に、こんなに沢山の絵が残されているのかというと、それは応挙が修行中の貧しい頃、当時の住職密蔵上人が応挙の才能を見込み、学資を援助したことが縁で、客殿の建築の際に恩返しとして、弟子とともに来て描いたそうです。それも8年間を費やして。やっぱりスゴイですね。
見終えたあと…しばらくは放心状態で、「これなら800円高くないわねえェ~」と、口々に言いながら庫裡を出る。
最初のあの像はやっぱり円山応挙だと…もう一度しっかり拝んで帰りました。
あとでパンフを見ると、志賀直哉の『暗夜行路』にも出てくるし、与謝野鉄幹、晶子夫妻も来て、次の歌を詠んでいます。
羨まし香住の寺の筆の跡作者みずから楽しめるかな 鉄幹
いみじけれみろくの世までほろぶなき古き巨匠の丹青のあと 晶子
ここから豊岡駅まで30分、5時にはまだ時間があるので、途中またコウノトリを見て帰ろうと言うことになりました。
今日は晴れていたので、コウノトリが空を舞う姿もバッチリ…と思いきや、真ん中の黒い点がそうですが…
コウノトリの郷(真ん中の塔が抱卵中の巣) コウノトリの巣の模型
桜はもう少し…(大乗寺) 辛夷もまだ固い(コウノトリの郷)
コウノトリの郷に泣く泣く別れを告げて、レンタカーを返し、豊岡5時28分発、特急〝はまかぜ6号〟に乗車。
しばらく経って、最後の締めはやっぱり句会だねということになり、コウノトリに敬意を表した句、その他を1句、
合せて10句の句会をしました。みんな即吟にしてはなかなかいい句ができましたよ。
ふと外を見ると、空の羊雲が別れを惜しむかのように車窓に美しく見えました。終り!
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